意匠

【中国意匠】模倣品対策シリーズ(1) -中国では取敢えず意匠出願しておくべき理由-

2012.10.03
 

 中国に進出してビジネスを行う場合だけでなく、日本国内で製品の販売等を行っている場合も、中国での模倣品には注意すべきです。そして、年々、製品デザインの模倣が深刻化している状況下では、模倣品対策として、意匠権を取得しておくことが、日本以上に重要なカギとなります。また、中国では、冒認出願*が後を絶たず、自ら意匠出願しておく以外に対策がありません。
 以下では、中国での意匠出願の重要性を裏付ける事項を、簡単にご紹介いたします。

*意匠登録を受ける権利を有しない者による出願を「冒認出願」といいます。


デッドコピーが依然として多い

中国では、年々、模倣品表示が巧妙化しているものの、オリジナル製品の形態をそのまま模倣したデッドコピーによる被害が依然として多く見られます。評価の高いブランド品やヒット商品ならデッドコピーでないと意味がないこと、形態を変更する知恵と手間をかけるより簡単に利益が得られること等といった理由によるものと考えられます(中には、オリジナル製品に欠陥があった部分までそっくりそのままデッドコピーされたという笑い話にもならないケースがあるくらいです)。

 見た目(外観)をそのままそっくりコピーした模倣品の抑止には、外観を保護する意匠権が有効であることは言を俟ちません。


反不正当競争法には日本不競法類似の商品形態模倣(デッドコピー)禁止の規定がない

中国には日本の不正競争防止法に相当する反不正当競争法がありますが、この反不正当競争法で保護されるのは「識別性」「特有性」「一定の周知性」がある商品形態だけです。日本の不正競争防止法2条1項3号に該当する商品形態模倣(デッドコピー)を禁止する規定はありません。つまり、中国で少なくとも相当程度有名になっている商品形態でなければ、反不正当競争法による保護は受けられないことになります。

 したがって、これから流通する商品形態のデッドコピーを抑止するには、意匠権を取得しておく以外に方法はありません。


実体審査が採用されていない(無審査制度)

中国の意匠制度では実体審査が行われません。したがって、新規性等の実体的要件を満たさない意匠でも登録されてしまいます。例えば、日本国内向けのネット・TV等で売れそうな商品の情報を得て、中国で第三者が勝手に出願して登録されるケースが多数報告されています。
 このような冒認出願で登録された意匠は、本来、新規性がないはずなので、新規性欠如を理由に無効審判請求により無効にすることが可能です。しかしながら、無効資料を揃えるのは大変ですし(例えば、公正証書作成・中国大使館の認証が必要…など)、パンフレット等への掲載だけでは証拠として認められない可能性もあります。また、無審査制度ゆえ、冒認出願された意匠が複数登録される可能性もありますが、そうなると、事態はさらに深刻かつ複雑になります。
 また、仮に、冒認出願で意匠権を得た第三者に侵害訴訟で訴えられ、その対抗手段として無効審判を請求する場合、答弁書提出期間内(外国人の場合、訴状送達日から30日以内)に請求しないと、その権利が有効だという前提で訴訟が続行されてしまいます。しかも、その後、1か月という短期間内で無効資料を補充する必要があります。

 このように、一旦、冒認出願で登録されてしまうと、それを無効にするには企業にとって大きな負担となります。したがって、まずは自ら意匠出願しておくことが非常に重要です。


取敢えず意匠出願を!

 以上のように、中国では依然として見た目(外観)をそっくりそのままコピーした模倣品が多く、何らの権利もないまま自社商品を中国市場に出すのは、その商品が丸裸で放り出されている状態と言っても過言でありません。このような模倣品に対しては、意匠権を取得しておくことが最も有効な手段ですが、比較的短期間(出願から3~6ヶ月)で権利が得られるので実効性も高いです。
 加えて、中国では、冒認出願で登録されてしまうリスクが非常に大きいのも実情です。したがって、自ら出願して意匠権を得ておくことが、非常に重要となります。



模倣品対策シリーズ:次回は、中国意匠制度の活用法と留意点についてご紹介いたします。


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