同日に同様の出願が複数なされた場合(その2)

 『同日に同様の出願がなされていたのに、協議命令もなかった・協議もしなかった・届出もしなかった・くじも実施しなかった→複数の同様な出願が全部登録されてしまった、という場合、どうなるか?』についてです。

 同様の商標が重複登録されていると、お客さんはどの商品が誰のものか混乱する等の問題があるので、まずいですよね。
 そこで、商標法では、誤って登録されてしまった商標登録を無効にする審判制度(無効審判)を設けています。原告は重複登録されたものを無効にするよう審判請求したのですが、請求が認められなかったので、裁判に訴えました。

 これに対して裁判所は、「登録されてから一定期間経過していれば、複数の登録が併存することも可能である」と判断しました。
 
  その理由をざっくりいえば、次のようになります。

 無効審判は、登録日から5年を経過した後は、一定の公益性の強い理由でない限り、請求することができません.。これは、それまで平穏に経過したのであれば、キズ(無効理由)が治癒したものとして、既存の法律状態を尊重し維持するため、とされています。
 原告は、登録日から5年経過する前に無効審判を請求したようですが、裁判所はこの趣旨を考慮したようです。はしょっていえば、『確かに重複登録はお客さんを混乱させるので、公益的にまずいといえる。だけど、5年経過したら無効審判請求できなくなるんだし、重複登録は絶対にNOという程の公益性はないと思われる』といったところです。つまり、既存の法律状態を維持する方を重視すべき、ということでしょうか。
 また、重複登録されたものを無効にしちゃうと、その後に出願した他人が登録を得ることが可能で、漁夫の利になってしまってまずい、ということもあると判断しました。

 ということで、重複登録をそのまま維持させる判決が出たわけです

 う~ん…。それにしても、同様の出願が同日になされたことが、審査で気付かれなかったとは…。そういうこともあるのですね…

 本日はこの辺で。
 
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