関西の節分

<平成19年(ワ)第7660号商標権侵害差止等請求事件>(判決文はこちら

 昔、大阪の友人が「節分には太巻きを食べる」というのを聞いて「へえ~」と思った覚えがあります。
 最近は、スーパーやコンビニの戦略で、中部地方でも“節分に「恵方巻」を食べよう”という摺り込みがなされるようになりました。

 今日ご紹介するのは、そんな太巻きの商標権侵害事件です。
 まず、事件の概要を。

 原告の商標権者は大阪のすし屋さんで、こんな登録商標を持っています。
 商標「招福巻」、指定商品第32類「加工食料品、その他本類に属する商品」

 一方、被告はイオンです。スーパー「ジャスコ」で、節分用の巻き寿しに「十二単の招福巻」との標章を付して販売等していました。

 で、商標権者がイオンに対して「十二単の招福巻」の使用差止めと損害賠償の支払いを求めたのがこの事件です。

 なお、被告のイオン側の言い分のうち、今回取り上げようと思うのは以下の点です。
 (1)「招福巻」は節分用の巻き寿しの普通名称、若しくは慣用名称なので、商標権効力が及ばない(商標法26条)、
 (2)「十二単の招福巻」は、原告の登録商標「招福巻」と似ていない。

 う~ん、(1)については、中部地方在住のわたくしにはピンと来ないというのが正直なところ。
 「招福巻」…あんまし聞いたことない…

 なので、被告のイオンが主張した「招福巻」の使用例を見てみると…(判決文p.11ア~p.23ネ)
 どうやら、節分用の巻きずしを指す一般的な名称として「招福巻」を用いていると見る余地のあるものもあるようです。
 でも、その大半がH17年以降のもので、それ以前の使用例は3例だけだったみたいですね(判決文p.23~24)。

 一方、節分用の巻きずしを指す名称として「招福巻」以外の名称を用いている例も少なくありません。
 加えて、広辞苑では、「恵方巻」は第6版に収録されたのに「招福巻」は収録されてません。
 また、原告の商標権者は、これまでに、本件商標権を守るために一定の対応をしてきたようです(判決文p.25)。

 といった事情から、裁判所は、『「招福巻」が、節分用の巻きずしの普通名称・慣用商標になったものとは認めることはできない』と判断しました(判決文p.25~26)。

 さて、それでは、(2)について。「十二単の招福巻」は、原告の登録商標「招福巻」と似ているか。
 
 裁判所は、こんなことを述べました。
 『「十二単」というのは、巻きずしに12種類の具材が入っていることを示しているに過ぎず、使用態様からしても、「十二単」の部分に自他識別力があるものとは認められない』、
 『被告標章の要部、すなわち被告標章において自他識別力があるのは、「招福巻」の部分であって、…』
 なので、被告標章の要部「招福巻」と本件商標「招福巻」は、称呼・観念が同一なので類似する、と結論付けました。

 「十二単」…そういう意味にもフツーに使われるんだ…(レイヤードルックの意味でしかフツーに使われないと思ってた…)
 たしかに、お菓子なんかで「なんたら単(ひとえ)」なんていうネーミング、ありますよね…

 節分に「恵方巻」食べますよ、という方も、マメまくだけだがね、という方も、ぷちっと押していただけると嬉しいです
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