責めに帰したい

<平成20年(行ケ)第10344号審決取消請求事件>(判決文はこちら

 ELLEGARDENの事件やインディアンモーターサイクルの事件がおもしろそうだったんですが、1回読み切りで終わらなさそう(週をまたいでしまいそう)だったので、本日はこちらの事件を簡潔にご紹介いたします。

 ○事件の概要
 本件登録商標は次のとおり。
 「OOTAKANOMORI」の文字と「おおたかの森」の文字を二段に横書きしてなるもの。
 指定商品:第33類「日本酒,洋酒,果実酒」など。
 
 本件登録商標については、不使用取消審判(商標法50条)で取消審決が出されました。
 
 ちなみに、審判の請求人(本件の被告)が登録を取り消したかった理由は、こんな感じ。
 『被告は、酒小売業を営んでおり、純米吟醸酒等を製造販売しています。平成17年8月のつくばエクスプレス開業時に、市の要請で、ふるさと産品を作ることとして、「自然が美しい流山おおたかの森」という名称の純米吟醸酒、薬味酒等の製造販売を始めました。これらは「流山市ふるさと産品」として認定されたのでした。なので、町の活性化を図るためにも、本件商標の登録を取り消して「おおたかの森」の商標登録を得たいと思ったのです。』

 ○争点
 商標権者(本件の原告)は、審判段階から一貫して「不使用について正当な理由がある」と主張しています。
 ということで、争点は、「正当な理由」があるか否か、です。

 ○原告の主張(簡単に)
 ・本件商標登録後は国外であるアメリカ合衆国(ハワイ等)に居住し、ハワイ大学における農業資源経済学の研究で多忙であった。原告の研究は優れたものであって、学問、社会へ貢献するものである。

 ○裁判所の判断
 
『(1) 商標法50条2項ただし書は,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者が指定商品に登録商標を使用していないとしても,「登録商標の使用をしていないことについて正当な理由」があることを被請求人(商標権者)が明らかにしたときには,登録商標は取り消されない旨を規定する。
 ここでいう「正当な理由」とは,法的な規制によって商品を製造販売することができなかったとか,天災によって商品を製造販売することができなかったなど,商標権者の責めに帰することができない事情によって審判請求の予告登録前3年以内に登録商標を使用することができなかった場合をいうものと解される。

 『(2) しかるに,本件における原告の主張は,本件商標登録後は国外であるアメリカ合衆国(ハワイ等)に居住し,ハワイ大学における農業資源経済学の研究で多忙であったから,本件商標を使用することができなかったことにつき正当な理由があったというものであるが,原告提出の証拠(甲1-1,2)及び弁論の全趣旨によっても,毎年,年末年始,春季及び夏季の休業の間は帰国して登録原簿上の住所等に数日間は一時帰国しているのであって,これらを含めた上記事情は,ここでいう「正当な理由」に当たるということはできない。原告は,原告の研究が優れたものであって,学問,社会へ貢献するものであると主張するが,そのような事情は,これを肯認する余地があるとしても,上記「正当な理由」の存在を認める根拠となるものではない。

 「それは商標法50条2項の「正当な理由」に該当しないですけど、…なにか?」
 …とでもいいたげな判断でありました。

 ちなみに、「注解 商標法(新版)」(小野昌延先生編)によると、過去に「正当な理由」ありとされた例として、
 ・駐留軍(!)の指示により、納入品に商標を付すことができなかった事情、
 ・法人解散による清算中で商標の使用を中止していたという事情、
 が掲載されています。

 ということで、本日はこの辺で。
 また来週も見ていただける方、ぷちっと押していただけると嬉しいです。
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