BRIDEはふつーはブライド

 昨日の続きです。
 まずは事実のおさらいを簡単に。
 
 ・「BRIDE(ブリッド)」標章は、S58頃には審判請求人(被告)の標章として機能していた。審判請求人(被告)の「BRIDE(ブリッド)」標章が付された自動車シートは、自動車関連の新聞・雑誌等で盛んに紹介され、S63には審判請求人(被告)の製品を表すものとして周知性を確保していた。そして、売り上げのピークをH6に迎えた後、その後(少なくともH15まで)自動車シートの商標として周知性を維持していた。

 ・商標権者(原告1)は、S63に本件商標1を出願し、H7に本件商標2を出願した。

  ・通常使用権者ないし専用使用権者である(株)ハトプラ(原告2)は、H3に審判請求人(被告)と事業提携の契約を結んだ。しかし、H15になってその提携が解消され、(株)ハトプラは別ルートで『BRIDE』シートを販売することとし、請求人(被告)も独自に『BRIDE』シートの製造・販売を始めた。
 また、H15に、原告(商標権者)は(株)ハトプラに、本件商標1と本件商標2についての使用権を設定した。

 ・(株)ハトプラの問題となった使用行為は、(株)ハトプラのパンフレットの表示だった。
 具体的には、大きく書された「BRIDE」の文字の左上に、「ブリッド、ネクストステージ/NEWBORN」の文字が表示されており、「BRIDE」を「ブリッド」の称呼をもって使用していたことだった。

 …といった経緯でありました。

 さて。
 商標法53条の取消審判って、結構きっつい規定でしたよね。
 取消しが問われる使用権者の行為は、登録商標の「禁止権範囲(類似の範囲)」での使用だけではありません。「専用権範囲(同一の範囲)」での使用さえも含まれます。登録商標どんぴしゃで使用していたとしても、品質等誤認を生じる使用や、他人の業務に係る商品等と混同を生じる使用をすると、取消しの対象になったのでした。
 しかも、「故意」性も必要ないのでした(もちろん「過失」であっても適用されます)。
 商標権者としては、うかうかしとると自分の商標登録が取消されてまうので、しっかり監督しとかんといけません。「監督義務」を免れることができるのは、例えば定期的に監査していたのに隠匿されていた…とか?(警告を発したという程度では足らないとされています。)
 おまけに、取消しにされるのは、問題行為となった指定商品だけ…といった生易しいものではなく、全部(登録自体)なのでした。また、何人も請求人になれるのでした。

 それでは、今回の(株)ハトプラの使用行為についてはどうだったかというと、
 ・原告は「社会通念上同一」の使用だと主張したが、裁判所は「類似範囲」での使用と認定した。
  (→この点については、「専用権範囲」での使用であっても適用があるので…)
 ・原告は「正当使用」だと主張したが、裁判所はその主張を認めなかった。
  (→この点については、過失でも適用があるので、やや微妙ではあります…)
 ・原告は「監督義務」はないと主張したが、裁判所はその主張を認めなかった。
  (→原告は、被告が原告商標の権利侵害をしてること等を理由に挙げていたのですが…)
 
 そして、最も肝心なトコロは、(株)ハトプラの使用行為が「混同を生じる使用」なのかどうかです。
 53条はきっつい規定ということもあり、この「混同」は具体的混同でなければなりません。つまり、他人の商標が少なくとも使用されていないとハナシにならんわけですが、審判請求人(被告)の「BRIDE(ブリッジ)」商標はS63に周知性を獲得していたので、この点はクリアしています。
 その事実を前提として、裁判所は、
 『自動
車用スポーツシート等の販売において、原告ハトプラによる本件使用商標の使用行為により。同原告の商品と被告の商品との間に混同が生ずることは明らかというべきである。
 と言っております。

 以上より、裁判でも、商標登録を取消すとした審決が支持されたのでありました。

 改めて見てみても53条って要注意規定ですね。
 商標権取得した後もうかうかしておられんのでした。と思われた方、ぷちっと押していただけると嬉しいです。
 ↓↓↓
 

※ちなみに、原告(商標権者、(株)ハトプラ)や、被告(審判請求人)が絡んだ事件は、過去にもございます。
 50条の取消審決の取消請求事件(H17年(行ケ)第10470号
 商標権侵害行為等差止請求事件、侵害差止請求事件(H18(ワ)第1587号、第3143号)→詳しくはこちら:駒沢公園行政書士事務所日記

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