優先権証明書はコピーじゃダメよ

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<平成21年(行ウ)第540号手続却下処分等取消請求事件>(判決文はこちら)←勝手に「第1事件」
<平成21年(行ウ)第597号却下処分取消請求事件>(判決文はこちら)←勝手に「第2事件」

 本日は、
  意匠登録出願につきパリ条約上の優先権を主張したものの、優先権証明書のコピー(書誌事項だけで図面なし)だけしか提出してなかった…あう…orz
  というハナシです。

  まずは時候のご挨拶から。

 晩秋の候、向寒のおりから深秋追々寒さに向かいますが、知財系の皆さまにおかれましては、意匠登録出願につきパリ条約上の優先権を主張する場合、特43条(1)~(4)が準用されることはご存知のこととお喜び申し上げます(意15条(1))。
 また、平素は、特許出願において、特43条(5)により、優先権書類データを交換できる国にした出願に基づく優先権主張の手続では優先権書類の提出を省略可能なご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
  http://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/tetuzuki/t_tokkyo/shutsugan/yuusennkenn_syouryaku.htm

 それでは、2つの事件のご紹介です。

○概要

 原告は、本件出願と同時に本件共同体意匠出願を基礎とするパリ条約による優先権の主張をした。
 ただし、優先権証明書提出期間内に提出した本件提出書の添付書類は、OHIMが発行した優先権証明書の原本ではなく、その一部(表紙を含む2枚)を複写したもの(登録共同体意匠を記載した図面なし)及びその訳文だった。
 ↓
 特許庁長官から準特18条の2(2)による却下通知が来て弁明の機会が与えられた。
 ↓
 原告は、弁明書とともにOHIM発行の優先権証明書の写し全部(4枚)の写し(カラーコピー)を提出。
 ↓
 特許庁長官は準特18条の2(1)により、本件提出書の却下処分をした(却下処分1)。
 ↓
 却下処分1を受け、原告は、特許庁長官に対し、行政不服審査法に基づく異議申立てをした(異議申立て1)。
 また、原告は、特許庁長官に対し、本件提出書に係る手続の補正として、OHIM発行の優先権証明書の原本とその訳文を提出。
 ↓
 当該補正の手続につき、特許庁長官は、準特18条の2(2)による却下通知を出し弁明の機会を与えた。
 ↓
 原告は弁明書を提出したが、特許庁長官は準特18条の2(1)により却下処分をした(却下処分2)。
 また、異議申立て1を棄却する決定が出された(異議決定1)。
 ↓
 却下処分2を受け、原告は、特許庁長官に対し、行政不服審査法に基づく異議申立てをしたが(異議申立て2)、当該異議申立て2を棄却する決定が出された(異議決定2)。
  ↓
 原告は、却下処分1及び異議決定1の取消しを求める訴訟を提起(第1事件)。
 また、却下処分2の取消しを求める訴訟を提起(第2事件)。

■第1事件

○裁判所の判断

(1)却下処分1の適法性
  裁判所は却下処分1の適法性を認めました。
 『匠法15条1項が準用する特許法43条2項は,パリ条約4条D(3)の規定を受けて,優先権証明書について「最初に出願をし……たパリ条約の同盟国の認証がある出願の年月日を記載した書面,……及び図面に相当するものの謄本又はこれらと同様な内容を有する……証明書であってその同盟国の政府が発行したもの」の提出を要求しており,「写し」等の提出で足りるものとはしていないから,パリ条約による優先権主張の手続において提出することが要求される優先権証明書は,同盟国の政府が発行した優先権証明書の原本そのものであり,その写しは含まれないものと解される。したがって,優先権証明書の原本を複写したものは,法令の規定による優先権証明書とは認められないから,本件提出書に係る手続は,意匠法15条1項,特許法43条2項の規定に反する不適法な手続であり,原告は,その後,優先権証明書提出期間(平成20年6月12日まで)内に優先権証明書の原本を提出しなかったのであるから,本件出願についてのパリ条約による優先権の主張は,その効力を失ったものと解さざるを得ない。
 そして,このように優先権証明書を提出しないまま優先権証明書提出期間が経過してしまった優先権主張について,同期間経過後,優先権証明書の原本の提出による手続補正を認めるとすれば,優先権証明書提出期間を定め,その期間内に優先権証明書の提出がないときは当該優先権の主張がその効力を失う旨規定する特許法43条2項,4項の規定の趣旨を没却することになるから,本件提出書に係る手続の瑕疵は,優先権主張の手続における重大な要件の瑕疵であり,もはや補正することはできないというべきである。
』(判決文17~18頁、下線は私が付しました)

 なお、原告さんは、次のような主張をしておりましたが、裁判所は認めませんでした(判決文18~23頁)。
 “誤って「複写」を提出してしまったことが明らかで準特18条の2(1)に該当しない”、“提出したコピーの情報でDB検索すれば内容が確認できる”、“EPO等とは優先権書類データを交換でき優先権書類の提出を省略可能であり、手続簡素化の観点から特許出願と意匠登録出願に差異がない”、“優先権主張自体が適法に行われていれば第三者に不測の不利益を及ぼすことはない”、“パリ条約による優先権主張の手続における優先権書類提出については、OHIM規則等でも出願人に過度に負担にならない扱いが規定されており、この趣旨を日本法の解釈でも十分考慮されるべき”

(2)異議決定1の適法性
  裁判所は、上記却下処分1の違法と異なる裁決(異議決定1)固有の違法事由を主張するとは認められない等として、異議決定1の適法性を認めました(判決文23~24頁)。

■第2事件

○裁判所の判断

(1)本訴訴えの利益
 裁判所は、上記第1事件との関係から、却下処分本訴訴えの利益を認めませんでした(判決文17~18頁)。

 
判決のご紹介は以上です。
 …うーん同業者としてコメントし辛いですが、他山の石として…

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この記事を読んでひろた興味を持たれた方は…

【執筆記事】
  
「知財管理」誌 VOL.60  NO.6
  (並行輸入と商標権侵害 -並行輸入の抗弁における「同一人性の要件」及び「品質管理性の要件」-)

  「知財産管理」誌 VOL.58 NO.5
  (「腸能力」審決取消請求事件(平成19年(行ケ)第10042号 審決取消請求事件)
     内容は
こちらからどうぞ

【関係事件】
 代理人になった事件です。負けたのでご紹介するのをためらっておりましたが、思い切って…。
 
平成18年(行ケ)第10367号審決取消請求事件
 なお、牛木理一先生のHPで紹介いただいているので(「特許ニュース」2007年6月29日号の記事です)、そちらも併せてご覧ください~(こちらのB-27の項です)。

【ZIP FM Z-TIME BIZ】
 ここのフォトギャラリーになぜかわたくしが。
  見付からないよ~?→2008/07/23のところ…

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