大須二丁目の独占適応性

先週の金曜日に東海フォーラムが開催されました。
最後の質問時間に、ある年配の先生が“地名”と4条1項16号に関して質問され、どなたも回答されなさそうな雰囲気だったので、敢えて答えたところ「そんなことは聞いとらん」的なことを言われました。そのときは早とちりだったのかなと素直に思ったのですが、しばらく経って顧みると、そのように自分が回答した理由と、自分の回答の後にその方がおっしゃっていたことを併せて考えてみて、なんだか腑に落ちん気がしてきた…。
この件はまだほとぼりが冷めないタイミングなので、もうしばらくしてから、このブログで取り挙げてみます。

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さて、今日は、3月始めにmendozaさんにネタをいただいていながら、ずーっと取り挙げる機会を逃してきた事件をご紹介いたします。
3条1項3号に該当するとして拒査を受けた商標出願に関する拒査不服審判です。

■不服2009-15163
むむ?代理人はお友達(弁理士さん)が何人かいる事務所じゃないですかー。

本願商標はこちら。指定役務は「飲食物の提供」です。

(まさに“地名”関連の商標でございます。このネタをいただいてたことも、上記“地名”の質問に反応したきっかけではありました。)
この商標は3条1項3号に該当するという理由で拒絶査定が出されました(ただし4条1項16号適用なし)。
そして、拒査不服審判の審決でも3条1項3号に該当すると判断され、拒絶査定は取消されませんでした。

審決理由は以下のとおり。

まず、商標の構成について。
 『上記「大須」及び「酒場」の各文字は、大きく横書きしてなり、これらの文字の間に小さく縦書きした「二丁目」の文字を配してなる態様よりなるところ、これら各文字は、ややデザイン化されてはいるものの、近時のレタリングの技法の進展により、店舗名(商標)、広告等を表す文字を図案化する手法は、決して珍しいことではなく、一般的に行われていることからすれば、本願商標は、格別、特徴のある特殊なレタリング、態様で表されているものでなく、普通に用いられる態様で表されているものと言わざるを得ないものである。
 なお、店舗名(商標)を表す際に、横書きと縦書きの文字を組み合わせる手法は、飲食物の提供に係る分野において、一般的に、採択、使用されているのが実情であることは、別掲2のインターネット情報の記載からも十分に裏付けられるところである。
うーん、この程度でも「普通に用いられる態様」ですか…

ちなみに、別掲されたインターネット情報はこちらです。







ま、確かに縦書きの文字が入っておりますが、本願商標の場合、地名の一部を示す文字が構成中の中央で縦書きなのに対し、地名でない文字だったり、位置が違ったり、他の文字と書体が違っていたり、四角で囲っていたり…。本件とびみょーに事案が違うぽくないすか…

請求人が過去の登録例を挙げて本願商標も登録されるべきだと主張したことについては、このように述べています。仰るとおりではありますが…
本願商標が、商標法第3条第1項第3号に当たるものであるかどうかの判断は、その判断時である審決(査定)時において、当該商標の構成態様と指定役務を考慮し、個別具体的に判断されるものであって、請求人があげる過去の審決例及び登録例が存在することによって、本願商標が同号に該当することを否定することはできず、また、同号該当性の判断がかかる過去の登録例に拘束されるものでもないから、請求人の主張は採用の限りでない。

ううむ、それでは、独占適応性の観点からも考えてみるとどうでしょう。
仮に自他商品識別の機能を有することがあるとしても,そのような品質等の表示は商品取引の過程において必要なものであり,取引業者は皆その使用を欲するものであるから,特定の人にのみその使用を独占させることは公益に反することによる』(東京高裁S56.5.28EARL GREYS)という趣旨に照らし合わせるならば、「大須二丁目」ってかなり狭い地域で、かつ、酒場ってことも併せて考えると、かなりピンポイントな気がしないでもないですが、公益は公益ってことでしょうか…

なお、上記したように、本願商標に4条1項16号は適用されとりません。
ちら見したところ「大須二丁目酒場」さんは、東海地方で名駅店を含む4店舗を展開されてるようです(「大須」でない地域です(笑))。
しかも、最近、東京に池袋店を出店されたようです。次は、3条2項を狙っていくのでしょうか…?

色々と考えドコロのある事案です…
本日は以上です!来週も見ていただけるのならぷちっと押してくださいね…
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※左上の画像データは名古屋市さんのご好意により提供していただきました。

この記事を読んでひろた興味を持たれた方は…

【執筆記事】
  
「知財管理」誌 VOL.60  NO.6
  (並行輸入と商標権侵害 -並行輸入の抗弁における「同一人性の要件」及び「品質管理性の要件」-)

  「知財産管理」誌 VOL.58 NO.5
  (「腸能力」審決取消請求事件(平成19年(行ケ)第10042号 審決取消請求事件)
 
 
  「パテント」誌  2011.2 Vol.64
   (部分意匠に関する判例研究 -類否判断を中心に- 包装用容器事件)
  
字数制限が厳しかったので尻切れトンボ気味ですが…

【関係事件】
 代理人になった事件です。負けたのでご紹介するのをためらっておりましたが、思い切って…。
 
平成18年(行ケ)第10367号審決取消請求事件
 なお、牛木理一先生のHPで紹介いただいているので(「特許ニュース」2007年6月29日号の記事です)、そちらも併せてご覧ください~(こちらのB-27の項です)。

【ZIP FM Z-TIME BIZ】
 ここのフォトギャラリーになぜかわたくしが。
  見付からないよ~?→2008/07/23のところ…

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