非類似になって、類似になって、非類似になって、…さらに類似になった商標のお話

<平成24年(ネ)第10010号 不当利得返還,損害賠償等請求控訴事件 平成24年(ネ)第10017号 附帯控訴事件>(判決文はこちら

ようやく3月の余波も落ち着いてきて、5月の次の波が来る前のひとときをブログに投入しているひろたです、皆さまいかがお過ごしでしょうか。

昨日は、韓国代理人のK先生ご一行がいらっしゃって、お昼にひつまぶしを食べに行きました。
このK先生は、以前、「ひつまぶしは世界一おいしい」的な絶賛をいただいた方です(韓国出張のエントリに詳細を記載しております)。名古屋にいらっしゃるとのご連絡をいただいたので、絶対にひつまぶしをご馳走しなければなるまいと気合を入れていたのでした。
さて、同行していた方はミニサイズを頼まれたのですが、K先生は小柄なお体にも似合わず普通サイズを頼まれました。普通サイズなら4回楽しめるけど、ミニサイズは3回しか楽しめません(No.1:プレーン、No.2:薬味かけ、No.3:だしかけ、No.4:お好みで)。K先生は、普通サイズをペロリと堪能した後、「ミニにしなくてよかったですねー」と灌漑深げに仰っていました。「ひつまぶしのために、朝はパン1枚しか食べませんでした」と万全を期しておられましたので、当然かもしれません。
K先生のおかげで、わたくしも久し振りにひつまぶしを堪能することができましたw

それはそうと、今日も真面目に商標のお話を。以前取り上げた事件の控訴審判決が出ましたので、それをご紹介いたします。
ちなみに、原審判決(地裁判決)のときのエントリはこちらです→「非類似になって、類似になって、非類似になった変幻?商標のお話

地裁判決では本件商標と被告標章が非類似と判断されて商標権侵害が認められませんでしたが、控訴審(本件)ではどう判断されたのでしょうか。

おさらいもかねて、まずは概要から。

■本件商標

登録第4894059号「ナーナニーナ」(標準文字)
第3類「つけまつ毛用接着剤,つけづめ用接着剤,せっけん類,歯磨き,化粧品,つけづめ,つけまつ毛」等

■被控訴人(被告)さん側経緯

2008.11 被告商品1~4販売開始
    二重まぶた形成用テープ(「ストレッチファイバー」。被告商品1,2。)
    二重まぶた形成用テープの補助下地剤(「フィッター」。被告商品3。)
    二重まぶた形成用のり(「ミルキーダブラー」。被告商品4。)
    被告標章 

2009.6. 被告商標出願

2011.1  不服-2010-11503 本件商標を引用されて4-1-11で拒絶査定→不服審判で登録審決(つまり、本件商標と被告標章とは非類似との判断)
2011.11 無効-2011-890029 本件商標を引用されて4-1-11で無効審決(つまり、本件商標と被告標章とは類似との判断)


このような状況下で、商標権者(原告)さんが被控訴人(被告)さんに対し訴訟を提起しました。
そして、20
11.12に、原審(東京地裁)の判決言渡がありました。

以下、商標権侵害の可否の争点のみ取り上げて、原審での判断と、本事件(控訴審)での判断を、ご紹介いたします。

■原審での判断(商標権侵害の可否について)

被告標章の認定
…本件棒状図形は,その左右に配された「n」の縦のラインと同様の書体,太さで表現されていることから,需要者において,アルファベットの一部を表したものと理解されるものと認められる。また,本件図形2は本件棒状図形の上部から右方向へ流れるように配されており,本件棒状図形がアルファベットの一部を表したものと理解されることに鑑みると,需要者は,本件図形2につき,アルファベットの一部をハート形の図形をもって表現したものと理解するものと認めるのが相当であり,需要者は,本件棒状図形と本件図形2を併せて,小文字のアルファベットの「i」をデザイン化して表したものと認識するものといえる。
 したがって,被告標章は,「na」,本件図形1,「nani」,本件図形3,「na」を左から右へ表したものということができる。そして,「na」「nani」「na」をローマ字読みすれば,「ナ」「ナニ」「ナ」,すなわち「ナナニナ」の称呼を生じるが,ローマ字において長音記号「ー」は用いられないこと,本件図形1及び本件図形3は,多少変形したものではあるがいずれもハート形の図形であることからすると,需要者は,装飾的なものとしてハート形の図形が用いられているものと認識し,原告が主張するように,これらの図形を需要者が長音記号「ー」として認識すると認めることはできず,被告標章から「ナーナニーナ」の称呼を生じると認めることはできない。
 そうすると,被告標章の称呼は「ナナニナ」であり,アルファベットと図形を組み合わせて作成された造語であって特定の観念は生じないものといえる。』
『原告は,被告標章は被告のみならず需要者からも広く「ナーナニーナ」と称呼されてきたと主張するが,以下のように,被告又は需要者が被告標章を「ナーナニーナ」と称呼することを認めるに足りる証拠はない。…

本件商標と被告標章の類否
以上によれば,本件商標と被告標章は,①外観においては全く異なり,②どちらも特定の観念を生じないから観念において類似するということはできず,③称呼においては,本件商標の称呼は「ナーナニーナ」であり,被告標章の称呼は「ナナニナ」であり,前者が2つの長音を含む点において相違するものの,類似する印象を与えること自体は否定し難いものと認められる。
 そうすると,本件商標と被告標章は,称呼において類似する印象を与えること自体は否定し難いものの,長音の有無において相違しており,外観においては全く異なり,観念においても類似するということはできないから,上記2(1)で認定した取引の実情を考慮しても,両者が全体として類似するとまでは認められない。

このように、原審では、本件商標と被告標章は非類似と判断されておりました。

■本事件での判断(商標権侵害の可否について)
 
被告標章の認定
本件縦棒図形は,その左右に配された「n」とほぼ同一の太さにより,同様の特徴を有する書体で表記されていることから,需要者において,アルファベットの一部を表したものと理解されるものと認められる。また,本件図形2は本件縦棒図形の上部から右方向へ流れるように配されており,本件縦棒図形がアルファベットの一部を表したものと理解されることに鑑みると,需要者は,本件図形2につき,アルファベットの一部をハート形の図形をもって表現したものと理解するものと認めるのが相当であり,需要者は,本件縦棒図形と本件図形2を併せて,小文字のアルファベットの「i」をデザイン化して表したものと認識するものといえる。
 したがって,被告標章は,「na」,本件図形1,「nani」,本件図形3,「na」を左から右へ表したものということができる。
 そして,本件図形1及び本件図形3は,それぞれ横長の形状であることからすると,看者をして長音記号「ー」を模したものとの印象を与えるものであるから,被告標章は,全体として「naーnaniーna」
との表記との印象を与えるものと認められる。

 このような被告標章の外観に加えて,①被控訴人が被告標章の使用を始めたのは,従前「na~na?ni~na」あるいは「na~na ni~na」との標章が付されていた「MEZAIKストレッチファイバー48」(商品コード:MENN941)及び「MEZAIKミルキーダブラー」(商品コード:MENN851)の後継商品においてであり(前記(1)ウ),被告標章は,従前使用されていた標章と同一の称呼を生じると解するのが自然であること,②被控訴人が被告標章の使用を始めた時点では,被控訴人は控訴人を通じてメザイク商品を販売しており(前記(1)ウ),被告標章に従前使用してきた標準的なブランド名と異なる称呼を与える合理的な理由は見出せないこと,③被控訴人が被告標章の作成をデザイン会社に依頼した際には「ナーナニーナロゴタイプ作成」を発注していること(前記(1)ウ),被控訴人のウェブサイトを印刷すると,そのヘッダー部分に「ナーナニーナ」が表示されること(前記(1)オ),被告商品は「ナーナ」という女の子が使用する商品とのコンセプトであることからすると(前記(1)オ),被控訴人の社内においては,被告標章が「ナーナニーナ」と称呼されることは当然の前提とされていたと認められること,④被控訴人は,取引先に対する通知文書でも「ナーナニーナ」との語を用いている(前記(1)オ)など,被控訴人社内での被告標章の称呼は取引先にも当然知られており,需要者においても同様の認識を持つに至ると認められること,⑤インターネット上の各種サイトでも被告標章を指して「ナーナニーナ」と称呼していると認められること(前記(1)オ),これらの事情からすると,被告標章には「ナーナニーナ」との称呼が生じると認められる。
 被告標章は,アルファベットと図形を組み合わせた造語であり,特定の観念は生じないものといえる。

本件商標と被告標章の類否
本件商標と被告標章は,「ナーナニーナ」との称呼を生じ,称呼において同一である。本件商標は片仮名表記であるのに対し,被告標章は,ローマ字及び長音記号「ー」との組合せであり,外観において相違はあるものの,文字商標等において,片仮名表記の一部をローマ字表記にすることは一般に行われることであるから,上記の点は,本件における類否を判断するに当たり,重視されるべき要素ではない。そして,被控訴人は,平成20年2月以降,同年11月までの間,被告標章を付した上で,控訴人を販売者としてメザイク商品を販売していたところ,同月以降,被告標章を付したままメザイク商品を直接に販売したとの取引の実情等を総合すると,本件商標と被告標章は類似すると認めるのが相当である。

被控訴人(被告)の主張について
…,被控訴人は,被告標章から「ナナニナ」の称呼のみが生じ,「ナーナニーナ」の称呼は生じないと主張する。しかし,被控訴人が被告標章の使用を始めた時点では,被控訴人は控訴人を通じてメザイク商品を販売していたこと,被告標章において,従前使用を続けていた標準的なブランド名である「ナーナニーナ」を「ナナニナ」に変更する合理的な理由はないことに照らすならば,被告標章から,「ナーナニーナ」の称呼が生じないと解することはできない。Aの陳述書(乙59)には「ナーナニーナのロゴのデザインは」(7頁)と,Cの陳述書(乙60)でも「ナーナニーナの使用を止めようと考えたことはありませんでした」(16頁)と記載されており,AやCにおいても被告標章から「ナーナニーナ」の称呼が生じることを自認しているとも見られるのであって,この点に関する被控訴人の主張は採用できない。

以上のように、本事件では、本件商標と被告標章は類似と判断されたのでした。

■コメント

 判決文にも記載されていますが、本事件の控訴人(本件商標の商標権者)さんと被控訴人(被告)さんとの間には色んな事情があったようです。
 本事件では、被告標章の構成そのものよりも、この事件を取り巻く種々事情が効いた結果、類似との判断に至ったように思います。

 しかし、一連の経緯の中で、類似/非類似の判断が目まぐるしく変わったのは何とも… でした

本日は以上です!次回も見ていただけるならぽちっと押してくださいな(。-_-。)/
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