結合商標の実際の使用態様が

<平成24年(行ケ)第10336号 審決取消請求事件>(判決文はこちら

みそ県出身のひろたです、皆さまいかがお過ごしでしょうか。

え?「みそ県」では識別力がない?「他県を敵に回すのか」って?
すみません、赤みそに胡坐をかいておりました。白みそ・合せみそ地方の方、誠に申し訳ございません、謹んでお詫びいたします。

では「シャチホコ県」で。

え?シャチホコは名古屋市だけじゃないかって?
そ、そうですね、金ぴかに光っているので、つい、県の象徴だと勘違いいたしました、誠に申し訳ございません。

では「えびふりりゃ~県」で。

え?愛知県民は言うほどえびふりゃ~を食べないって?
確かに、あれは東京の芸人タモリさんが○十年前に面白おかしく取り上げただけで、それまで愛知県名物だったわけでないですし。

では…

これ以上思い付かん…orz

愛知県の何かよい愛称がございましたら是非ご応募ください(どこに?)。

さて。
米国出張の後のバタバタした状態が少し落ち着いてきたので、久し振りに商標のハナシを書いてみます。とうにアップデートではない話題ですがどうぞご容赦くださいませ。

下記本件商標の登録に対し、無効審判が請求されたところ、請求を認めない審決が出たので、審判請求人さんが原告となって提起した審決取消訴訟の判決でございます。ちなみに、原告さんは、下記引用商標たる著名商標の商標権者さんです。

■本件商標


指定商品:第3類「香料類及び香水類」など

「NINA」は「NINA RICCI」の「NINA」です。
この本件商標の登録につき、原告さんは下記登録商標を引用して、4条1項11号・15号該当を理由として無効審判を請求したのですが、JPOは請求を認めない審決を出したのでした。

■引用商標

引用商標1
ELIXIR」(標準文字)
指定商品:第3類「化粧品,香料類」など

引用商標2

指定商品:第3類「化粧品,香料類」など

引用商標3

指定商品:第3類「化粧品,香料類」など

ご存知、資生堂さんのELIXIRの商標です。

■本件商標の実際の使用態様

まずはNINA RICCIさんのサイトを見てみましょう。→http://www.ninaricci.com/#/parfums/elixir_perfume
いまいちよくわからんです(汗

別のサイトによくわかる画像が載っていました→http://www.rbbtoday.com/article/img/2011/10/25/82347/161635.html

■裁判所の判断

結論からいうと、裁判所は、本件商標は4条1項11号にも15号にも該当しないと判断しました。

ざっくり言うと、本件商標は全体としてまとまりよく一体的に表されており、「ELIXIR」の部分だけが独立して見る者の注意をひくような構成ではない、
なので、本件商標は引用商標とは類似せず4条1項11号に該当しないし、また、引用商標が需要者間で周知ないし著名であったとしても両者を十分に識別できるため4条1項15号にも該当しない、とのことです。

さて。
本件商標の文字構成をプレーンに見れば、「ELIXIR」を含んでいますので、その他の「L’」とか「NINA」の部分を分離可能と判断できれば、本件商標は引用商標と類似するという結論になります。

ではまず「L’」について、裁判所はどう判断したのでしょうか。その関連部分を一部抜粋いたします。
「L’」は,フランス語の表記により,冠詞「Le」の母音字「e」を省略して代わりに「’」(アポストロフ)を表示し,後ろに来る語と結びつけて1つの単語として称呼するもので,エリズィヨンと呼ばれるものである(乙7・55頁,乙8・42~43頁)から,フランス語の文法を認識している者であれば,「L’ELIXIR」から「L’」を分離して「ELIXIR」のみを1つの単語として認識するということはない。また,フランス語の文法について知識のない者であっても,本件商標の「L’ELIXIR」の文字部分を視覚的に捉えると,「L」と「’」,と「’」と「E」との間隔は,その後に続く「E」と「L」,「L」と「I」との間隔と同じであるから,「L’ELIXIR」を一体のものとして捉えるのが通常であると考えられる。』(判決文12-13頁)
…上記基準が「類似する例」として挙げているのは,テープレコーダについて「SONYLINE」,「SONY LINE」又は「SONY/LINE」と「SONY」,化粧品にて「ラブロレアル」と「L’OREAL」「ロレアル」,かばん類について「PAOLOGUCCI」と「GUCCI」等であり,これらは,例えば「SONYLINE」であれば「SONY」の部分は全体から独立して看取することができ,「ラブロレアル」であれば「ロレアル」の部分は全体から独立して看取することができるように,いずれも,「他人の登録商標」 部分が独立して看取することができるものである。これに対して,本件商標は,「NINA L’ELIXIR」の構成から成るものであり,「他人の登録商標」である引用商標の部分(「ELIXIR」の文字部分)が独立して看取することができるものではない。』(判決文17頁)
「L’」は分離できないというのが裁判所の判断です。

では「NINA」についてはどうでしょうか。4条1項11号の判断部分でして、実際の使用態様が考慮されています。
香水のボトルやパッケージに付された本件商標(甲5,49~53)は,りんごに1枚の葉が付いた形を模した図形の中に,筆記体で「Nina」と「L’Elixir」の文字部分を2段書きにしたものから構成されているが,「Nina」を構成する文字の大きさ(縦横の長さ)は,「L’Elixir」を構成する文字の大きさのほぼ2倍(面積にして約4倍)であり,「Nina」の部分が占める割合が「L’Elixir」の部分が占める割合と比べてはるかに大きく(面積にしてほぼ4倍),中でも「Nina」の「N」がひときわ大きく表されている。このような態様は,「Nina」の部分が見る者の注意をひくものであるから,仮に,本件商標の構成部分を分離して他の商標との類否観察をするとすれば,「Nina」の文字部分を取り出して観察することは正当化され得るとしても「L’Elixir」の文字部分を取り出して観察することが正当化されるものではなく,まして,「Elixirの文字部分を取り出して観察することが正当化されるものではない。』(判決文15-16頁)
「仮に…」との前提があるものの、「NINA」を取り出して観察することは正当化され得るが、「L’Elixir」を取り出して観察することは正当化されないと判断しています。

ちなみに、15号の判断部分では、
“実際の使用態様でボトルやパッケージに「NINA RICCI」との表示が併記されており、ネットでもニナリッチの商品であることが明らかな記載がされているので、「NINA」の部分はNINA RICCI」社の社名から採ったものであることが容易に理解でき、また「NINA」が前半部分に配置されて印象に残りやすいから、本件商標が出所混同を生ずるおそれがあるといえるだけの事実は認められない”
旨判断しています(判決文18頁)。

以上のように、本件商標は4条1項11号にも15号にも該当しないとされ、原告さんの請求は棄却されました。

■コメント

わたくしがこの判決で目をひかれたのは、4条1項11号の判断のところで、「仮に…」との前提があるものの、かなり大胆に実際の使用態様を考慮して、「NINA」を取り出して観察することが正当化され得るとした点でした。
ちなみに、本件商標は“全体としてまとまりよく一体的”な商標とか“構成全体として造語と解される”と認定されてますが、上記の使用商標については同一性認められるんかな?

本日は以上です!次回も見ていただけるならぽちっと押してくださいな(。-_-。)/
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