再利用品につき差止め・損害賠償が認められたケース

<成24年(ワ)第8071号 特許権侵害差止等請求事件>(判決文はこちら

今年一発目のピークを越えて、ようやく正月が来た気分のひろたです。個人的に今年は旧正月でいこうと思います。皆さま、明けましておめでとうございます(旧正月にはちと早いけど気にしない)。

さて、昨日、知財界は、大合議に付されたサムスンvs.アップル訴訟の話題一色でしたね。
http://www.ip.courts.go.jp/hanrei/g_panel/index.html

サムスンのFRAND宣言特許による差止請求権と損害賠償権の行使に何らかの制限があるかどうかにつき、一般から意見募集されることが公募されたとのことでした。こういった一般の意見募集は、知財事件というより民事訴訟として初めてだとのこと。

この情報のソースはどこどこ?と探ってみると、どうやら両者の代理人さんの事務所HPに掲載されているようです(同じ内容ですが両方ともリンクを貼らせていただきます)。
・サムスン側代理人さんの事務所HPに掲載されている意見募集

・アップル側代理人さんの事務所HPに掲載されいている意見募集


特許のハナシで始めましたが、今日ご紹介する冒頭事件番号の判決も特許のです。んが、商標権でも争われたので、このブログで取り上げさしてもらいます。

まずは事案の概要から。

■事案の概要

原告さんは、原告商品(薬剤分包用ロールペーパー。おそらくここに掲載されているものと思われます。)を製造販売しています。芯管(中央芯管)の一端にはプラスチック製リングが嵌めてあって、その外表面には、本件登録商標1・2が、型抜きで立体的に浮き上がるようにしてあるようです。

なお、本件登録商標1・2は、判決文後の別紙に掲載されています。
(本件登録商標1の指定商品は「紙類,文房具類」、本件登録商標2の指定商品は「紙類,薬剤分包機用分包紙,包装用プラスチックフィルム」。)

一方、被告さんの被告製品は、原告製品の分包紙が消費された後に残った使用済み芯管を回収し、それに分包紙(グラシン紙又はセロポリ紙からなる薬剤分包用シート)を芯管の円筒部外周に巻き直すことによって製品化したものです(「リユース芯管のジェネリック分包紙」として販売されていた模様です)。
原告製品の芯管をそのまま使用しているため、被告製品の芯管にも、本件各登録商標が付されたままとなっています。

そして、この被告製品を製造販売等する行為が、原告さんの特許権・商標権侵害となるかどうかが争われました。

■裁判所の判断

○特許について

ここは「商標亭」なので特許については深入りしません、ご容赦を…。だので簡単に。

裁判所は、

・争点1(被告製品は本件特許発明の技術的範囲に属するか)につき、被告製品は原告特許発明の構成要件A~D全てを充足すると判断し(判決文14-16頁)、

・争点2-1(原告製品の芯管に関する譲渡の有無等)につき、“被告製品は原告製品のいわゆる再利用品であり、被告製品につき本件特許権は消尽している”との被告さんの主張については理由がないと判断し(判決文16-18頁)、

争点2-2(被告製品と原告製品の同一性:リサイクルカートリッジ事件的争点)につき、“被告製品の製造は、原告製品の主要部材を交換し新たに製品化する行為であって、そのような被告製品は原告製品と同一性を有するともいいがたく、本件特許発明の実施に当たる”との原告さんの主張は理由があると判断しました(判決文18-19頁)。

○商標について

裁判所は、商標に関する争点3(原告が被告製品につき本件各商標権を行使することの可否)につき、以下のように判断しました。
前記3のとおり,原告製品及び被告製品は,いずれも病院や薬局等で医薬品の分包に用いられることから高度の品質が要求されるものであり,厳重な品質管理の下で,芯管に分包紙を巻き付けて製造されるものである。顧客にとって,上記製品に占める分包紙の部分の品質は最大の関心事であることが窺える(なお,前記3 2のとおり,需要者である病院や薬局等が使用済みの芯管に分包紙を自ら巻き直すなどして再利用することもできない。)。
 そうすると,分包紙及びその加工の主体が異なる場合には,品質において同一性のある商品であるとはいいがたいから,このような原告製品との同一性を欠く被告製品について本件各登録商標を付して販売する被告の行為は,原告の本件各商標権(専用使用権)を侵害するものというべきである。
 実質的にみても,購入者の認識にかかわらず,被告製品の出所が原告ではない以上,これに本件各登録商標を付したまま販売する行為は,その出所表示機能を害するものである。また,被告製品については原告が責任を負うことができないにもかかわらず,これに本件登録商標が付されていると,その品質表示機能をも害することになる。
 これらのことからすると,原告は被告製品につき本件各商標権を行使することができるものと解するのが相当である。』(判決文20頁)

品質保証理論な判断により、商標権行使が認められるとの判示です。

結論として、裁判所は、被告製品の製造販売等の差止め・損害賠償請求等を認めました。
(なお、本判決は大阪地裁判決です。)

おお、今日はいちおー便利師…もとい、弁理士らしいブログ記事になったな…

では皆さま、今年も宜しくお願いいたします!(旧正月的に)

次回も見ていただけるならぽちっと押してくださいな(。-_-。)/
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