エルメス 好きのおしゃれ女子にはちょっと気になる判例?

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<平成25年(ワ)第31446号 商標権侵害行為差止等請求事件 >(判決文はこちら

ジャージを履いても驚かれないが、スカートを履くと驚かれる ジャージ弁理士 ひろたです。最近は山の中を走ってます。

そんなわたくしが今日ご紹介するのは、立体商標に係る商標権侵害と、不正競争防止法の不正競争(2条1項1号・2号)が認められた、エルメス バーキンバッグ事件(←勝手に命名)の判決です(東京地裁判決)。

お洒落に関心の高い女子の皆さんなら、争いなった事情がよくわかるのではないでしょうか。
わたくしは…… 残念ながら… 「女子」でなく… 山を駆けるジャージ弁理士なので…

■商標権について

このブログでは、主に商標権について触れていきたいと思います。

今回の本件商標(以下、「原告商標」といいます)は、原告エルメスさんの「バーキン」を立体商標として登録したものです。3条2項で登録が認められています(指定商品「ハンドバッグ」)。

一方、被告さんの被告商品1~4(「GINGERBAG」)は、残念ながら判決文に写真が載っていないので、どういったものかわかりません展。
ただ、プリントで立体的な形状を表している風だったことは伺えます。これは、被告さんのHPの(被告商品以外の?)写真を見るとよくわかります(特に、女性が肩にかけているバッグのタグのぶら下がり方向が不自然です)。
http://ginger-japan.com/patterns/index.html

なお、被告さんの「GINGERBAG」商品は韓国で有名になっていたようです。お洒落に関心の高い女子っぽいブログで、“エルメスのフェイクバッグ”とか言い切っちゃっているのもあります(激汗)。

さて、今回は、上記のように3条2項で登録された商標(しかも立体商標)に係る商標権の侵害が認められた事案でした。

3条2項で登録されたってことは、そもそも生来的な識別力がなかったってことだから、商標権の権利範囲の広さ(狭さ?)が気になるところですが、3条2項に基づく登録商標に係る商標権の範囲については、過去のパテント誌(弁理士会発行)でも議論が載っていました。
http://www.jpaa.or.jp/activity/publication/patent/patent-library/patent-lib/201108/jpaapatent201108_010-042.pdf
31頁の「(4)まとめ」の部分を転載させていただきます。
商標法は,3条2項に基づき登録された商標に係る商標権の効力と本来的に自他商品・役務識別力を有すると認められて登録された商標に係る商標権の効力とを区別する規定を有してはいない。したがって,3条2項に基づく商標権によって,他人の商標の登録及び使用を排除できるか否かは,本来的な識別力を認められて登録された商標の場合と同様に,各事案の判断基準時における当該登録商標の識別力の有無あるいは強さ,当該登録商標の周知性,当該登録商標と他人の商標との構成,当該商品・役務についての取引事情等が考慮されて判断されることになるといえる。このことは,本小委員会で検討した審判決例から伺えるところである。

なるほど。

今回の事案でも、裁判所は、(通常の)商標の類否判断についてよく引用される最高裁判の判断を引用しています(判決文16頁、「氷山事件」最高裁昭和39年(行ツ)第110号,「小僧寿し事件」最高裁平成6年(オ)第1102号)。

そして、今回は、立体商標に係る事案(ただし、被告商品はプリントで立体的な形状を表している風)ですので、裁判所は、さらにこんなことを述べています。
原告商標は立体商標であるところ,上記類否の判断基準は立体商標においても同様にあてはまるものと解すべきであるが,被告標章は一部に平面標章を含むため,主にその立体的形状に自他商品役務識別機能を有するという立体商標の特殊性に鑑み,その外観の類否判断の方法につき検討する。
 立体商標は,立体的形状又は立体的形状と平面標章との結合により構成されるものであり,見る方向によって視覚に映る姿が異なるという特殊性を有し,実際に使用される場合において,一時にその全体の形状を視認することができないものであるから,これを考案するに際しては,看者がこれを観察する場合に主として視認するであろう一又は二以上の特定の方向(所定方向)を想定し,所定方向からこれを見たときに看者の視覚に映る姿の特徴によって商品又は役務の出所を識別することができるものとすることが通常であると考えられる。そうであれば,立体商標においては,その全体の形状のみならず,所定方向から見たときの看者の視覚に映る外観(印象)が自他商品又は自他役務の識別標識としての機能を果たすことになるから,当該所定方向から見たときに視覚に映る姿が特定の平面商標と同一又は近似する場合には,原則として,当該立体商標と当該平面商標との間に外観類似の関係があるというべきであり,また,そのような所定方向が二方向以上ある場合には,いずれの所定方向から見たときの看者の視覚に映る姿にも,それぞれ独立に商品又は役務の出所識別機能が付与されていることになるから,いずれか一方向の所定方向から見たときに視覚に映る姿が特定の平面商標と同一又は近似していればこのような外観類似の関係があるというべきであるが,およそ所定方向には当たらない方向から立体商標を見た場合に看者の視覚に映る姿は,このような外観類似に係る類否判断の要素とはならないものと解するのが相当である。
 そして,いずれの方向が所定方向であるかは,当該立体商標の構成態様に基づき,個別的,客観的に判断されるべき事柄であるというべきである。』(判決文16-17頁、下線は私が付しました)

それから続いて裁判所は、本件については、正面部が「所定方向」の一つと認められ、原告商標と被告標章は、所定方向たる正面から見たときに視覚に映る姿が、少なくとも近似しているので、両者は外観類似の関係にある…等と判断しています(判決文17-18頁)。

ちなみに、被告標章のプリントした部分については…
被告標章は,原告標章では立体的構成とされている蓋部,左右一対のベルトとこれを固定する左右一対の補助固定具,先端にリング状を形成した固定具,ハンドルの下部(正面部と重なりベルト付近まで至る部分)について,これらの質感を立体的に表現した写真を印刷して表面に貼付した平面上の構成とされているところ,これを正面から見た場合に上記共通点に係る視覚的特徴を看取できるものというべきである。
 一方,上部及び側面方向から被告標章を観察した場合には,原告標章では立体的に表現された上記蓋部等が立体的でないことは看て取れるものの,上部及び側面は,いずれも所定方向には該当せず,上記所定方向から観察した場合の外観の類否に影響するものではない。』(判決文18-19頁)

以上のように、原告商標と被告標章は類似と判断され、被告さんによる被告商品の輸入等は、原告商標に係る商標権侵害と認められました。

なお、冒頭に述べたように、不正競争防止法の2条1項1号・2号(!)の不正競争も認められています。

■コメント

この事案について、宮脇正晴先生はこんなtweetをしていらっしゃいます。
https://twitter.com/m_miyawaki/status/470737244387438592

被告さんは代理人を立てずに答弁書を提出しているんですね…。ほぼ主張内容がないよう(←OYAJIギャグのつもり。判決文13頁)。

GINGERBAGというのを今回の判決で初めて知りましたが、エルメスに比べてのチープさ(失礼!)は、まさに上部及び側面を見るとすぐバレちゃう(失礼!)んじゃないかな?と思ったり。そこを逆にうまいこと主張できたら… とか。

本日はこれでおしまい!

次回も見ていただけるならぽちっと押してくださいな(。-_-。)/
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