「東京維新の会」からの後発的無効理由

<平成26年(行ケ)第10092号 審決取消請求事件>(判決文はこちら

連日の御嶽山のニュースは胸が痛いです。

わたくしはこれまで御嶽山におそらく15回程度は登っていると思いますが、雪のあるときか沢登りでしたので、当日1,000人もの方が登っていらっしゃったとは驚きました。
事故でお亡くなりになった方のご冥福をお祈りいたします。まだ救助活動が続いていますが、救助に携わっている方のご無事もお祈りいたします。

あの日の翌日、恵那のあたりで岩登りをしていたのですが、どういうわけか腕にけがをしてしまいました。
岩登りでけがをしたのは初めてで、かなりショックです。
おまけに、明日はトレランレース(山の中を22km走る)に出る予定だったのに、けがのせいで出れなくなってしまったので、仕方なく今日は仕事をしています。

というわけで、今日は事務所にいるので、ちょっと前に出た判決をご紹介いたします。

とはいえ、この判決が出てから時間が経っていて全然 up-to-date でないし、既にいろんな方が言及されているので、この判決を題材にした(ような、しないような)マイナーマターについて考えてみました。

まずは、判決の内容を簡単におさらい。

ドクター中松が本願商標「東京維新の会」を出願したところ、拒絶査定がなされ、さらに拒絶審決がなされたので、これを不服として取消訴訟を請求したのが、今回の事案です。

■経緯

H23.12.16 本願出願
H24. 8.16 拒絶査定(4(1)7)
H24. 9.25 拒絶査定不服審判請求
H24. 9.27 「東京維新の会」設立届出
H25.12. 2 「東京維新の会」解散
H26. 2.25 拒絶審決(4(1)6)
H26. 3.17 「東京維新の会」解散の旨東京都公報に掲載
H26. 4.14 知財高裁出訴
H16. 9.11  判決言渡

■判決

 結論としては、本願商標は4(1)6に該当するとされ、原告さんの請求は棄却されました。

■争点・裁判所の判断

(1)4(1)6の該当性判断基準時
 
 審査段階では4(1)7(公序良俗違反)で拒絶査定がなされました。そして、不服審判で新たな理由として4(1)6の拒絶理由通知が出されたのですが、
 
本件訴訟では、この4(1)6の該当性の判断基準時が争われました。
 原告さんは、主位的主張で「拒絶査定時とすべき」、予備的主張で「本件訴訟の口頭弁論時」と主張したのに対し、裁判所は「審決時」としました。

 この争点については、こちらで詳細に触れられています(企業法務戦士の雑感:「維新の会」商標をめぐる紛争と商標法4条1項6号該当性の判断基準時をめぐる論争)。
 
(2)4(1)6の該当性
 ・「著名性」
  原告は「東京維新の会」が実質的に1年3か月しか存在しなかったことをもって著名性がないと主張したのに対し、
  裁判所は、少なくとも東京都で著名性があったとしました。
 
 ・上記のように4(1)6の該当性判断基準時は「審決時」と認めたところ、この件について審決が出たのは「東京維新の会」が解散した後でしたが、
  裁判所は、日本維新の会との関係を考えると、当面は、出所混同防止のため同一又は類似商標の登録を妨げるべき事由となるとしました。


■なぜか「後発的無効理由」について

この事案では、審査段階で4(1)7で拒絶査定が出て、審判段階で4(1)6の拒絶審決が出たということでしたが、4(1)7も6もいわゆる「公益的事由」です。

仮に、今回の本願商標が「東京維新の会」の発足よりえらい前に既に登録されとって、その後に「東京維新の会」が設立されたとします。
もし「東京維新の会」がその商標登録をつぶそうと思っても、4(1)6は後発的無効理由じゃないので、4(1)7でなんとか頑張るしかないってことになりますでしょうか(それでつぶせるかどうかはおいといて)。

そんなことを妄想しながら、本事案とは全然関係ないけど、(はるか昔の)弁理士受験時代に気になっていた
「後発的無効理由問題」
を思い出しました。

4(1)7も4(1)6も「公益的事由」(除斥期間適用なし)のくくりなのに、4(1)7は後発的無効理由で、4(1)6は後発的無効理由でない、という関係にあります。

受験時代において商標法の勉強といえば、4条辺りの条文を、ムリやりなゴロ合わせで短期メモリに格納したもんですが、
「除斥期間を適用しない条文は公益的事由で統一された感あるのに、なんで後発的無効理由はそれと一致しないんだ?くそーややこやしー」と毒づいた方が多いのではないでしょうか(自分だけ?)

現制度の後発的無効理由は、昔の更新登録無効審判制度での無効理由をそのまま引き継いでいるようですが、そもそもなぜ4(1)6(4,9も)が抜けているのか?

「後発的に無効にする」というのは、査定/審決時には瑕疵なく成立した権利を後から没収するに等しいわけで、かなり強烈な公益性(国際問題になりかねんとか)がないといかんだろうなぁという程度の理解はできるのですが。

“4(1)4(赤十字関係),6(著名な公益団体名称等),9(博覧会賞関係)は他の公益的事由に比べて公益性レベルが低い”とか“こんな歴史的経緯がある”とか、そういったような理由がどっかに明確に書いてないかと商標大家の先生の本を3冊ほど見たのですが、書いてない…

どなたか明確に理由が書いてある書籍等ご存知でしょうか?

ちなみに、「後発的無効理由」について受験勉強的なまとめをすると、こんな感じでしょうか。

○後発的無効理由ができたなれそめ
 更新登録出願拒絶制度・更新登録無効審判制度を廃止したことの代替措置(by逐条解説)

○後発的無効理由(46(1)5)
  後発的無効理由は4(1)1~3,5,7,16です。
 
・除斥期間不適用の規定との関係(47(1))
 除斥期間が適用されない4条1項の公益的不登録事由の規定(4(1)1~7,9,16)のうち、
 4(1)4(赤十字関係),6(著名な公益団体名称等),9(博覧会賞関係)は後発的無効理由には該当しません。
 (昔の更新登録無効審判制度の無効理由も同じようです。)

○請求人適格(利害関係人(来年施行の改正法から明記予定))
 典型的なのは、商標権者から商標権侵害の警告を受けた者だと思いますが、逐条解説は(なぜか後発的なときに限って)以下の例を挙げています。
  4-1-1~3,5: 外国の大使館や国際機関等
 4-1-7: 市民団体等
 4-1-16: 商標権者の同業者等

○後発的無効理由の該当時期
 46(1)5「該当するものとなっているとき」→過去に該当するだけでなく審判請求時においても継続して該当することが必要(by逐条解説)。

○無効審決の効果(46の2(1)但書、(2))
 無効審決による遡及効は無効理由が生じた時点まで及ぶに過ぎず、また、その時点を特定できないときは審判請求の予告登録日となります。

後発的無効理由で無効になった商標登録に係る商標権者に対する損失補填
 後発的といえどもそもそも商標自体に本質的に商標権として認められない瑕疵を有している場合なので、国による損失補填の補償の対象たりうる余地はないと考えられる(by逐条解説)。
 ↑↑↑
 商標権者の立場になって考えると、自分側に全く非がなく完全不可抗力で運悪く後発的無効理由に該当した場合、なんともいえない理不尽感満載…

本日はこれでおしまい!

次回も見ていただけるならぽちっと押してくださいな(。-_-。)/
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コメント

  1. がんがれー
    日々お仕事ご苦労様です。本日7日12:00時点でランキング10位です。トップ10から落ちないように日々更新に勤めてくださいw。
    次の記事も期待しています。
    (^_^)/

  2. Unknown
    アマサイさん

    ちょー亀レスすみません(汗
    アホブログをお読みいただきありがとうございます。
    更新(なるべく)頑張ります(汗

  3. Unknown
    いつも楽しく拝見しています。
    経緯の日付が順番にはなっていない?
    1と2はタイプミスと思うのですが、
    25と27が前後しているのは、、?
    いつか先生にお会いしたいです☆

  4. はっ
    れもんさん。

    コメントありがとうございました。単純ミスです、ご指摘ありがとうございました。さっそく訂正させていただきました。

    機会がございましたら是非お会いいたしましょう!

    今後とも宜しくお願いいたします<(_ _)>

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