湯~トピアかんなみ を別の観点から

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<平成25年(ワ)第12646号 商標権侵害行為差止等請求事件>(判決文はこちら

3か月余りに及ぶ激忙期をようやく抜け出し、通常の繁忙期に戻りつつあります。余裕があると、心穏やかに、仕事ができたり、色んなことに取り組もうという気になります、いまさらながら、ココロの余裕は大事ですな。

で、今日は、前から気にはなっていたが激忙のため手を付けられなかった判例を取り上げたいと思います。

その一つが、「湯~トピアかんなみ」の事件。
商標権侵害事件で、函南町が被告で、差止めが認められて約1200万円(!)の支払いを命じられた事件です。

ところが、ううう、この事件、既に「特許ニュース」で牛木先生が取り上げてらっしゃるんです。「特許ニュースよりも早い!」がこのブログの唯一の売りだったのに(涙)。

でも、自分がこの事件で気になっていた点は、牛木先生は触れられていらっしゃらないので、これ幸いと(?)、このブログで触れてみたいと思います。

■事案の概要

山梨県甲斐市の温泉ホテルを経営している原告さんが、静岡県函南町(温泉施設を経営)を被告として、商標権侵害で訴えた事件です。

わたしも、年に数回は、山梨県富士山周辺や静岡県伊豆地方の岩や山に行くのですが、名古屋からすると、この両地域一体で「東京の西側にある岩や山にアクセスのよい地域」との認識です。つまり、名古屋のようなちょっと遠方の者から見ると、観光という観点からは同じ商圏(?)に思えます。

全国に「湯とぴあ」「湯~とぴあ」系施設はたくさんあるものの、このような事情によって、原告さんは被告さんを訴えたのでしょうか…?(あくまで推測。)

原告さんんの登録商標(原告商標)は、これです。サービスマーク登録制度が始まったときに出願されたものですね。

被告さん(函南町)は、H14から、「湯~トピアかんなみ」という施設で、下記の被告標章を使用して、入浴施設の提供を行っています。

ちなみに、この標章は、去年4月1日に出願されて(おそらくごたごたが始まった後?)、去年8月8日に一発登録されています(登録第5692791号)。
これに対し、原告さんは、今年1月に無効審判を請求し、現在審判係属中でございます。

■裁判の争点

裁判での争点は三つ。

(1)原告商標と被告標章の類否
(2)原告の損害の有無及びその額
(3)消滅時効の成否

■裁判所の判断

上記争点のうち、王道的に(1)を取り上げようと思ったら、冒頭にも書いたように、既に牛木先生が「特許ニュース」で論じていらっしゃいます。

なので、ごくごくざっくりと、概要だけ。

裁判所は、原告商標の要部を「湯~とぴあ」の部分と認定し、被告標章の要部を「湯~トピア」の部分と認定し、両者は類似すると判断しました。

被告標章の認定については、
・「湯~トピアかんなみ」の部分が、黒と緑になっているので、「湯~トピア」と「かんなみ」を分離して観察することが取引上不自然と思われるほど不可分に結合しているとはいえない、
・「かんなみ」は「函南」という地名を指していることが明らかなので、出所識別標識としての称呼・観念を生じない、
などといったことを理由として、
「湯~トピア」の部分が強く支配的な印象を与える部分である、としています(詳しくは判決文18-20頁をご覧ください)。

ちなみに、「湯~とぴあ」系の商標は、サービスマークのいわゆる特例期間後に出願されたものも、重複登録されているようです(「ユートピア赤城」「湯とぴあ雁の里温泉」「さくらんぼ湯ートピア」)。
また、全国にも「湯~とぴあ」系施設が10件程度あるようです。
だけど、裁判所は、それら事実をもってしても、原告商標と被告標章が誤認混同を生じるという判断は変わらない、としています(詳しくは判決文23-26頁)をご覧ください。

…などなどの理由により、裁判所は、原告商標と被告標章は類似するものであり、被告の使用行為は原告商標権を侵害するとみなされる、としました。

■コメント

さて、牛木先生によれば、
まずは、被告標章の「湯~トピアかんなみ」の部分は一体として捉えるべきで、「湯~トピア」と「かんなみ」に分離するのはおかしいし、
他の登録商標や、現状、全国に「湯とぴあ」系施設がたくさんあることを考慮すると、原告商標はその指定役務の範囲では、識別機能の発揮という点で、その表示どおりの限界があると解すべきである、
と仰っております。

牛木先生のご指摘はごもっともで、そう、そんなことを書こうとしとったのよ、先を越された…的な(涙)。

自分としては、類否の問題とは別に、こんな疑問もあります。

「あれ? 被告標章は登録になっとるんだね。原告さんは、被告標章「だけ」をターゲットにしとるんだ。つまり、被告さんの登録商標の専用権ってことだね…。」
ということ。

ぶっちゃけ、被告さんが、被告標章だけを使っているかどうかは知りませんが(というか、商売してれば、類似の商標(禁止権範囲)で使うことも多いとと思うけど)、原告さんは被告標章「だけ」をターゲットにしとるんですね。

そーかー。

ここで、小野昌延先生・三山峻司先生の「新・商標法概説」を見てみます。
商標権者は、その登録商標が他人の登録商標の類似範囲に属している場合であっても、商標登録が無効とされるまで(他人の権利と抵触し、又は、権利濫用にわたる場合を除き)、他人による禁止権の行使を受けることなく、商標の同一性の範囲内で登録商標の使用を継続することができる。商標権者は、使用権の範囲の商標使用行為については、他人の権利と抵触し、又は、権利濫用でない限り、差止請求権の行使を受けることができない。』(p.197)

うーん。

被告さんの登録商標(被告標章)は、無効審判にかかっているものの、まだ無効になってないな。
(自分が思うに、無効にできるんかなぁと疑問に思っています。)

さて…。

次は知財高裁の判断ですね。

ちなみに、こんな新聞記事がありました。
「湯〜トピア」の商標権訴訟、控訴へ専決処分承認 函南町議会

今日はこれでおしまい!

次回も見ていただけるならぽちっと押してくださいな(。-_-。)/
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