「湯~トピアかんなみ」商標で考える「自分の権利使ってたのに侵害!?」問題

<平成27年(ネ)第10037号 商標権侵害行為差止等請求控訴事件>(判決文はこちら
今日は、函南町の商標権侵害訴訟の控訴審判決(知財高裁判決)を取り上げます。(うわーい久しぶりの判例紹介だーい。)
(ニュースにもなってたね! 函南町が逆転勝訴 温泉施設、商標侵害当たらず
いよいよ図形の検索システムを斬る!(商標、意匠、著作権)No.1」の第2弾を書く書くサギの様相を呈してきましたが、色んな商標ネタがありすぎて…。
なぜに函南町の判決を取りあげるかというと、『「自分の権利使ってたのに侵害!?」問題』で注目しとったからです。
地裁の判決のご紹介は、こちらでどうぞ
もういっかい、事件の概要を見ときます(地裁判決ご紹介で書いた文章をアレンジしました)。
■事案の概要
山梨県甲斐市の温泉ホテルを経営している原告さんが、静岡県函南町(温泉施設を経営)を被告として、商標権侵害で訴えた事件です。
原告さんんの登録商標(原告商標)は、これです。サービスマーク登録制度が始まったときに出願されたものですね。
(ちなみに、被告さんはこの商標の登録に対し、カウンター無効審判かけているようでして、現時点で審理中です。)

被告さん(函南町)は、H14から、「湯~トピアかんなみ」という施設で、下記の被告標章を使用して、入浴施設の提供を行っています。
973d8c1bedf91e7a97928b2b81163187[1]
ちなみに、この標章は、去年4月1日に出願されて(おそらくごたごたが始まった後?)、去年8月8日に一発登録されています(登録第5692791号)。
これに対し、原告さんは、今年1月に無効審判を請求したのですが、たぶんこの裁判との関係で、審理中止の通知が出されております。
■東京地裁の判断
東京地裁の判断の詳細については、さっきご紹介した過去記事をご覧いただくとして。
要は、『被告標章は、原告商標と類似するので、侵害だ!』と判断したのでした。
この類否の判断は、自分的に、わりに「ほぇ?」という感じでした。
かの牛木先生も、「特許ニュース」で、類否判断に疑問を呈されておられたところ。
そして、自分がさらに疑問に思ったのは、こんなこと。
そもそも“非類似だから両商標が重複登録された”ってことが前提なので、登録が無効にされん限り、
『自分の登録商標の専用権範囲で使っている限り侵害にならん』
って思っとるじゃん。

だのに、いきなり東京地裁が(「無効にされるべきもの」とも言わずに)
「類似だから侵害!」
と言ってまった。
ままままじ? そんなんじゃあ全然安心して使えんがねー!
(商売の実情として、専用権範囲“だけでしか使わない”ってことがあるかどうかは置いといて…)
こういった東京地裁の判決を受けまして、被告さんが控訴していたところ、このたび、知財高裁が判決を出したものであります。
では、知財高裁の判断は…?
■知財高裁の判断
結論からいうと、知財高裁の判断は、「ほぇ?」と思った地裁の類否定判断を覆すものでありました。
判断の詳細は判決文の13頁~23頁をご覧いただくとして。
めちゃんこざっくり言うと、
入浴施設で「ゆうとぴあ」って読む系の屋号とか登録商標とかって、結構~あるよね。だから、原告商標の「湯~とぴあ」の部分も、被告標章の「湯~トピア」の部分も識別力が弱いよね。
ってことは、原告商標は上段「ラドン健康パレス」と下段「湯~とぴあ」を一体不可分のものとして、被告商標は「湯~トピア」と「かんなみ」で一体的なものとして観察して類否を判断すべきで、そうすると、えらい違うよね。
また、原告の施設と被告の施設の所在地や利用者層も違うといった事情を考えると、出所混同することもないよね。

ってことは、非侵害だよね!
というものです。 (↑↑ざっくり過ぎだろー(汗)。なんだか心配になった方は、判決文をご覧ください…)
自分の感想としては、この知財高裁の判断は妥当に思いました。
■コメント
今回は、結果的に、知財高裁が「非類似」と判断したようなものでしたので、地裁判決に対して思った心配点(「専用権範囲で使ってた(というか、禁止権は対象とならんかった)のに侵害!?問題」)が解消されたような形になりました。
だが、これはしかし、「登録が無効にならん限り」という制限付きでございます。
じゃあ、登録できたから安心して使えると思って使ってたのに、登録が無効にされてしまったら…?
実際に、登録が無効にされてしまって、過去に使っていた期間の損害賠償請求が認められてしまった事案がございました。
「和幸食堂事件」(H22(ワ)44788 損害賠償等請求事件)東京地裁
「ハーブヨーグルトン事件」(平成23年(ワ)第21532号 損害賠償請求事件)東京地裁
ほぇーどっちも東京地裁。
いずれも、準特103条の過失の推定を覆すことはできない、とされとります。
(「ハーブヨーグルトン事件」の方は、被告標章が、弁理士調査で肯定的見解→登録→異議申立てされたけど登録維持決定→無効審判で登録無効 という経緯をたどってました…)
実際にこういう判決が出てしまうと、
「一般の人から見ると似てる???って思われるかもしれんけど、商標の世界では非類似で登録されるだろう」的なケースで、かつ、引用商標の権利者さんが
オプションで指定した商品・役務がたまたま被っちゃったとかじゃなくて)
ばっちりコンペティターだと、頭の中に黄色ランプが点滅してしまいます…
今日はこれでおしまい!
次回も見ていただけるならぽちっと押してくださいな(。-_-。)/
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