元号とブランディング

令~和 ♪ ってエリック・クラプトンの曲みたい。  と思う時点で昭和生まれ。
そんな新元号が発表になったので、元号とブランディングについて考えてみたいと思います。
世の中には、元号を含む社名、屋号、商品名、サービス名がたくさん見られますね。
有名どころでいえば、例えば、「明治屋」「大正製薬」「昭和シェル石油」等。
それぞれ、創業が明治時代、大正時代、昭和時代といった、歴史のあるブランドです。
 
一方で、これから新しい名称を作るとして、元号を名称に取り入れるとしたら、どんなことを考慮すればいいでしょうか?
ブランディング的観点からいうと、元号の持つイメージと、社名等の名称に持たせたいイメージとが合致していないと、わざわざ元号を取り入れる意味がないですね。
そこで、まずは、明治以降の元号のイメージを見て見ましょう。
下記の参考サイト等によると、各元号のイメージは、こんなところでしょうか。
明治
 明治モダン
大正
 大正ロマン
昭和
 昭和レトロ
 
 
 
平成
 
 
 
(参考サイト:https://www.intage.co.jp/gallery/shingengo/ )
こうしてみると、「明治モダン」「大正ロマン」「昭和レトロ」といった呼び方は、後の時代の人が、断片的な情報をもとに、いわば勝手に?ポジティブなイメージを抱いて付けたようにも思えます。
一方、参考サイトの調査によると、昭和については、「戦」「古」というネガティブなイメージと、「懐」というポジティブなイメージとが、年代によって異なっているようです。
東海地方でチェーン展開している「昭和食堂」なんかは、この「懐」とか「昭和レトロ」といったポジティブなイメージを上手く利用している例といえますね。
昭和くらいが、いわゆる『ピーク・エンド効果』が顕著に現れる古さなのかもしれませんね。
そして、平成になると、「災」の回答率が突出してます。多くの人々の記憶に新しく、ネガティブな気分が生々しく甦るのかもしれませんね。
 
以上をおおざっぱにまとめると、ブランディングの観点からは、こんなことが言えるかも。

・古い時代は、ネガティブなイメージが薄れてポジティブなイメージが定着する傾向にある。古い時代のポジティブなイメージを利用して、その元号を取り入れるのは効果的かも。
・直近の時代の元号は、その時代のネガティブなイメージも残っていることも考慮した上で採用を。

 
では、”まさに今” の元号を名称に取り入れることについては、どうでしょうか?
“まさに今”の元号を採用するのは、たいていその時代が始まった辺りで「新しさ」を想起させたい、という意図であることが多いのではないでしょうか。
一例として、福井県の山に行った帰り寄る「平成の湯」という温泉施設があります。今月末までは、”まさに今”の元号を取り入れた名称です。
この温泉施設も、たぶん、平成元年あたりにオープンしたのではなかろうか…??(←いつオープンしたのか情報が取れませんでした。ちなみにH26に新装グランドオープンされたようです。)
しかし、時は流れるもの。「新しい」も、いつかは「古い」に変わります。平成も31年にもなると、「平成」にもベテラン感が出てきます。
(「Hey!Say!Jump」は大丈夫でしょうか?と要らん心配をする(笑))
長く使う名称であれば、「古い」に変わったときに、どのようなイメージになっているかがポイントだと思います。ですが、名称を作った時点では 、これから先の将来のことであるがゆえに、その時代になにが起こるかは未知です。後あとその元号のイメージが、ポジにもネガにも転ぶ可能性があります。
上記のように「平成」のイメージは、まだまだネガティブ先行。
あと50年くらいしたら「平成」も「昭和」のように、懐古的にポジティブなイメージが出てくるかもしれないですけど…。
このように、”まさに今”の元号を名称に取入れることは、結構、ギャンブルだといえるのではないでしょうか。
 
なので!
「令和」を名称に取り入れようとしている、そこのアナタ!
名称に持たせようとしているイメージに合うかどうか、考えてくださいね。
特に、その名称を長く使いたいなら、一歩引いてみることも大事かもしれません。
「令和」がいつまで続くかわからんし、「令和」の時代にどんなことが起こり得るかも未知ですから。
もちろん、ポジティブで明るい時代になることを祈りつつも…


ちなみに、新旧の元号(を含む名称)が商標登録できるか?については、以下のとおりです(やっと最後に弁理士らしい話題に繋がった汗)。

(1)「元号」だけは商標登録できない。
・例えば、「平成」「令和」等は、商標登録できません※1。
・ 商標法3条1項6号の「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標」に該当するとされているためです(2019.1改訂商標審査基準)。
・ただし、歴史上の元号全てが対象となるわけではなく、会社の創立時期、商品の製造時期、サービスの提供時期を表すものとして一般的に用いられているかどうか、で判断されます。例えば、具体的な時期を一般的には想起させない「慶応」以前の元号(「元禄」「大化」等)は、登録される可能性もあり得ます。
(2)「元号」+「識別力※2のない言葉」は商標登録できない※1。
・例えば、サービス「温泉施設の提供」を指定して「平成温泉」、商品「せんべい」を指定して「令和せんべい」等は、商標登録できません。
・これも(1)と同様の理由からです。
・(1)の「ただし」以下も同様。
(3)「元号」+「識別力のある言葉」は商標登録できる可能性がある。
・例えば、商品「おもちゃ」を指定して「平成」、サービス「飲食物の提供」に「昭和わかしゃち食堂」等は、商標登録できる可能性があります(他の拒絶理由が見つからなければ)。

 
以上、ご参考になりましたでしょうか?
 

※1:ただし、例外があります。例えば、チョコで有名な「明治」や冒頭でご紹介した「大正製薬」等、その分野で著名となっている商標は、例外的に登録が可能です。
※2:自分の商品又はサービス(役務)を他人の商品又はサービスから区別させることのできる商標の機能のことをいいます。
 

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