“想い”をビジネスするには… -Ontennaの事例-

 

中部経済産業局さんの「第3期次世代女性リーダー候補」の取り組のキックオフが7/22に行われました。

https://www.chubu.meti.go.jp/b38josei/win/20200213/20200213.html
 
その取り組みのお手伝いとして「”想い”をビジネスにつなげる経営資源としての知的財産 -知財を活用した経営戦略・事業計画- 」というお題にてお話させていただきました。

セミナー
セミナー予定 外部セミナー 日付 場所・団体 内容 2020.07.22 中部経済産業局 次世代女性リーダー候補 第3期WIN あいぎセミナー ...

コロナ禍で大変な状況が続き暗いニュースが多いですが、将来を担う女性リーダー候補の取り組みとしては、withコロナの時代に向けて前進できるような前向きなトーンでお話したいと考えました。

色々な業種の方が集まって、新しい事業を立ち上げるというグループワークをされるとのことなので、原点回帰ぽく「”想い”」から出発して新しいビジネスを考え、それを実現するためにいかに知財がサポートできるのか、という視点でお話しました。

今回は、そのお話した内容を少し掘り下げてご紹介したいと思います。

 

Ontennaとは

 

最初に事例として紹介したのが、富士通さんのOntenna という商品です。

この商品は、クリップ状になっていてヘアピンのように髪の毛に装着でき、振動と光によって音の特徴をユーザに伝えるデバイスで、コントローラーとセットにすると複数のデバイスを同時制御できるので、ろう者の方も健常者の方も一緒に音楽演ができるなどの色々な楽しみ方ができる、というものです。

Ontenna - 髪の毛で音を感じる新しいユーザインタフェース
Ontenna(オンテナ)は、ヘアピンのように髪の毛に装着し、振動と光によって音の特徴をユーザに伝える全く新しいデバイスです。

グッドデザイン賞のサイトに、開発者さんのプレゼン動画も上がっていて、その”想い”が存分に語られている好例だと思い、取り上げさせていただきました。

音知覚装置 [音をからだで感じるユーザインタフェース「Ontenna」]
グッドデザイン賞の仕組みや、過去のすべての受賞対象が検索できる「グッドデザインファインダー」など、グッドデザイン賞に関する情報をご紹介するサイトです。毎年1回(4~6月頃)募集する、グッドデザイン賞への応募もこのサイトから行うことができます。

Ontennaの事例を取り上げたところ、翌日7/23の朝日新聞でも取り上げられていました。やはり注目されているんですね。
 

Ontennaの商品化

 

さて。
 
“想い”から出発するビジネスなんて、耳障りはいいけど、結局は商売なんだから儲からなかったら実現できんし、実現できたとしても継続できんよ!という声が聞こえてきそうです。

そりゃ、そーだ。

特に日本のようにダメ出し文化だと、”想い”をビジネスに繋げるのは、ハードルが高いことが多いのではないでしょうか。

では、Ontennaの場合、どのように事業に結び付けたのでしょうか。

ろう学校の生徒数は約1万1000人とのことで、富士通のような大企業にとっては、ろう学校だけをターゲットにする商品では市場が小さすぎます。

そこで『聴覚障害者と健聴者が一緒に音を楽しむ』を押し出して、情報発信していったら、テレビ局や旅行代理店などから「イベントで使いたい」といった案件が寄せられるようになり、上層部に「大丈夫です」と言い続け、事業化が決定したそうです。

富士通さんの記事に経緯がサラリと書かれていますが、簡単なことではなかったと思います。

第106回 Ontenna(オンテナ)/富士通|成功の本質|リクルートワークス研究所
卓越した商品・サービスの開発や技術イノベーション、組織再建といった幅広い分野の「成功」の物語りを、それを生んだ組織の価値観、リーダーシップ、知識創造といった観点から、野中郁次郎・一橋大学名誉教授が読み解きます。

 

独立系ベンチャーではなく大企業で

 

自分が気になったのは、こういった斬新なアイデアの商品を、独立系ベンチャーでなく大企業で開発することになったのはなぜか、でした。

それが、ここの記事に書かれています。

https://type.jp/et/feature/7533

「自分で起業する選択肢もありましたし、実際にベンチャーキャピタルから出資のお話もいただきましたが、大企業ならもの作りのノウハウがあるし、人材も設備もそろっている。だから、大企業から新しいものを世に送り出すロールモデルになればという思いで、富士通への入社を決めました。」

また、先ほどの富士通さんの記事にも、こう書かれています。

「もし富士通という企業に入らなければ、これほど短期間で完成度の高い製品をつくることはできなかったでしょう。日本の大企業には、製品化の多様なノウハウが財産として蓄積されています。自分の研究を実現したいという目標を持った若者が大企業の力を借りながら、思いを形にして社会実装していく。そういう動きがどんどん広まっていけばいいと思います」

オープンイノベーションぽいことを自社内で完結しているというのが、このOntenna事業のカタチのようですが、さて、やはり有形・無形の経営資源の蓄積がないと”想い”を実現することは無理なのか…、独立系ベンチャーの方のご意見も伺いたいところです。

 

デザイン思考な開発

 

Ontennaは第1のユーザーであるろう者の方の意見を聞きなら開発を進める必要あると思いますが、試行錯誤しながらの開発は、流行りの言葉でいえば、まさに”デザイン思考”な開発ですよね。

とはいえ、デザイナーさんの思考を、デザイナーさんでない人向けに”デザイン思考”と呼んでいるわけで、デザイナーさんからしたら当たり前にやっていることですよね。下記の記事でも、開発者(デザイナー)さんは特に”デザイン思考”を意識することなくやってた、と書かれています。

Ontenna開発者 本多達也にとってのデザイン思考とは 
グッドデザイン賞を受賞した製品から「デザイン思考」を考えてみようという今回の企画。音をからだで感じるユーザインタフェース「Ontenna」(富士通株式会社)。開発者である、富士通株式会社 Ontennaプロジェクトリーダー 本多達也さんにお話を伺いました!

 

Ontennaの知的財産権

 

最後に、Ontennaの知的財産権を紹介いたします。大企業ということもあってか、特許・意匠・商標それぞれで権利化しています。

なお、上の2018年5月の記事ですでにクリップ端末の写真が公開されています。なので、特許は、クリップ端末単体でなく充電器との組合せ等としたことが伺われますが、違ってたらごめん~。また、意匠はクリップ端末について新規性喪失の例外適用してないっぽいので、その後形状変えたのを出願したのかもしれんが、違ってたらごめん~。

“デザイン思考”的な開発を進める場合、どのタイミングでどう適切に権利化を図るか、の見極めが結構難しいと思いますが、ここは知財担当者さんの腕の見せ所ですね。

 

◆特許(2019年2月にPCTで出願されています)
特許6575737
【請求項1】
  電子機器と、
  前記電子機器が組み合わされる充電器と、
  を備え、
  前記電子機器は、
  バッテリと、前記バッテリと電気的に接続されたコネクタとを有する本体部と、
  前記本体部に沿って延びるクリップと、
  前記クリップに設けられた磁石と、
  を有し、
  前記充電器は、
  前記電子機器が前記充電器に組み合わされた場合に前記コネクタと接続される位置に配置された充電コネクタと、
  前記電子機器が前記充電器に組み合わされた場合に前記クリップを収容する位置に形成された凹部と、
  前記凹部における前記磁石との対向部に設けられ、前記磁石との間に吸引力が生じる吸引磁石と、
  を有する、
  電子機器と充電器のセット。

◆意匠登録(2019年1月に出願されています)
意匠登録1640713(クリップ端末)

意匠登録1642733(充電器)

意匠登録1648356(コントローラー)

◆商標(No.6237156は2015年8月、その他2件は2018年12月に出願されています)

 

 

 

以上、Ontennaの事例をご紹介しました。

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