「商標・意匠・不正競争判例百選」読み合わせ勉強会No.7

毎週1回『商標・意匠・不正競争判例百選(第2版) 別冊ジュリスト』の読み合わせ勉強会に参加しています。勉強会の内容を自分的に整理した覚書メモです。

13.レールデュタン事件(H10(行ヒ)85)

【テーマ】

4(1)15「混同」の意義

【メモ】

1.本判決の意義

4(1)15に、”広義の混同”を生ずるおそれがある商標が含まれることを最高裁として初めて明らかにした。

不競法2(1)1の混同には広義の混同が含まれることが確立していた(日本ウーマン・パワー事件(S57(オ)658)。

2.混同を生ずるおそれの判断方法

本判例における「混同」の判断の考慮事実
『「混同を生ずるおそれ」の有無は、当該商標と他人の表示との類似性の程度、他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や、当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし、当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断されるべきである。』

審査基準
『本号に該当するか否かは、例えば、次のような事実を総合勘案して判断する。
① 出願商標とその他人の標章との類似性の程度
② その他人の標章の周知度
③ その他人の標章が造語よりなるものであるか、又は構成上顕著な特徴を有するものであるか
④ その他人の標章がハウスマークであるか
⑤ 企業における多角経営の可能性
⑥ 商品間、役務間又は商品と役務間の関連性
⑦ 商品等の需要者の共通性その他取引の実情
なお、②の周知度の判断に当たっては、この基準第2(第3条第2項)の2.(2)及び(3)を準用し、また、必ずしも全国的に認識されていることを要しない。』

ここ数年の4(1)15の判例(無効審判で請求不成立だったが、裁判で審決取消(登録無効)が認められた)

平成29年(行ケ)10214「GODZILLA」
平成29年(行ケ)10080「(レッドブルの図形)」
平成29年(行ケ)10109「MEN’S CLUB」
平成29年(行ケ)10094「豊岡柳\TOYOOKA」
平成28年(行ケ)10262「(ミズノ・ランバードの図形)」

※勉強会では、「レールデュタン」がペットマークであったことから、ハウスマークとペットマークの関係が議論されました。

 

14.BLUE NOTE事件(H23(行ケ)10086)

【テーマ】

総合小売等役務の権利範囲と「混同のおそれ」

【メモ】

1.判決の意義

小売等役務商標の効力が及ぶ範囲について一定の考え方を示した。

『「特定小売等役務」においては,取扱商品の種類が特定されていることから,特定された商品の小売等の業務において行われる便益提供たる役務は,その特定された取扱商品の小売等という業務目的(販売促進目的,効率化目的など)によって,特定(明確化)がされているといえる。そうすると,本件においても,本件商標権者が本件特定小売等役務について有する専有権の範囲は,小売等の業務において行われる全ての役務のうち,合理的な取引通念に照らし,特定された取扱商品に係る小売等の業務との間で,目的と手段等の関係にあることが認められる役務態様に限定されると解するのが相当である(侵害行為に
ついては類似の役務態様を含む。)』

『「総合小売等役務」においては, 「衣料品,飲食料品及び生活用品に係る各種商品」などとされており,取扱商品の種類からは,何ら特定がされていないが,他方,「各種商品を一括して取り扱う小売」との特定がされていることから,一括的に扱われなければならないという「小売等の類型,態様」からの制約が付されている。 したがって,商標権者が総合小売等役務について有する専有権の範囲は,小売等の業務において行われる全ての役務のうち,合理的な取引通念に照らし,「衣料品,飲食料品及び生活用品に係る各種商品」を「一括して取り扱う」小売等の業務との間で,目的と手段等の関係にあることが認められる役務態様に限定されると解するのが相当であり(侵害行為については類似の役務態様を含む。),本件においても,本件商標権者が本件総合小売等役務について有する専有権ないし独占権の範囲は上記のように解すべきである。』

『第三者において,本件商標と同一又は類似のものを使用していた事実があったとしても,「衣料品,飲食料品及び生活用品に係る各種商品」を「一括して取り扱う」小売等の業務の手段としての役務態様(類似を含む。)において使用していない場合,すなわち,①第三者が,「衣料品,飲食料品及び生活用品に係る」各種商品のうちの一部の商品しか,小売等の取扱いの対象にしていない場合(総合小売等の業務態様でない場合),あるいは,②第三者が,「衣料品,飲食料品及び生活用品に係る」各種商品に属する商品を取扱いの対象とする業態を行っている場合であったとして,それが,「衣料品,飲食料品及び生活用品に係る各種商品を一括して取り扱う」小売等の一部のみに向けた(例えば,一部の販売促進等に向けた)役務についてであって,各種商品の全体に向けた役務ではない場合には,本件総合小売等役務に係る独占権の範囲に含まれず,商標権者は,独占権を行使することはできないものというべきである(なお,商標登録の取消しの審判における,商標権者等による総合小売等役務商標の「使用」の意義も同様に理解すべきである。)。「総合小売等役務商標」の独占権の範囲を,このように解することによって,はじめて,他の「特定小売等役務商標」の独占権の範囲との重複を避けることができる。 』

○問題点

1.4(1)15の判断手法

本判決では、取引の実情等を考慮せず、指定役務の独占権との関係だけで結論を出しているようにみえる。なんか4(1)11ぽいね…。

↑背景として、指定商品を異にする原告と被告の登録商標が長年わたって併存、小売商標制度の創設時に、被告がそれまで持ってた登録商標の指定商品に対応する特定小売等役務と総合小売等役務の範囲で、新たに商標登録したという事実。お互い独自の信用が蓄積されていたという実態があった。

2.小売等役務の類似範囲

本判決では、原告引用商標の周知性が認められる範囲を「レコード(CDを含む)」に限定 vs  被告登録商標は「総合小売等役務」&「特定小売等役務」

(1) 商品商標と小売等役務の関係

「小売等という業務目的」に対応する「手段等」としての役務態様であれば、全て小売商標の権利範囲に含まれる…?商品商標とのボーダーがあいまいに…?

(2) 総合小売等役務と特定小売等役務との関係

「総合小売等役務」が特別に設けられていることを前提にして、審査でも、総合小売等役務と特定小売等役務をクロスサーチしない。

しかし、実マーケットで、一部の取り扱い商品がバッティングする可能性は十分ありえると思うので、それでいいのか…?モヤモヤ感あり…

◆総合小売等役務
総合小売等役務でいうところの「生活用品に係る各種商品」は、「衣料品(35K02)」「飲食料品(35K03)」以外の”すべて”をいうんだね…!(恥ずかしながら知らんかった汗)。なので総合小売等役務と特定小売等役務をクロスサーチしないんだね…。しかし、”生活用品に係る”といっているので、純粋BtoB商品ぽいものまで含むのだろうか…(例えば、樹脂のペレットとか)。
ところで、総合小売等役務って、証明書が面倒なわりに、取り扱い商品が同じでも特定小売等役務とは非類似扱いだし、また、「一括的に取り扱」ってなかったら不使用になるの…?がよくわからんし、なんでも屋さんを保護する目的の制度なら、いまの不都合さを調整する仕掛けが必要ですね…(結局、実務的には、総合小売だけでは不安だから特定小売も含めておくケースが多くなってると思うけど、そーじゃない感が…)

総合小売等役務について勉強になりました!

※参考
「小売等役務制度に関する事例紹介と今後の課題について」パテント誌
「小売商標の権利範囲と他人の業務に係る商品との出所混同」

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