<平成28年(ワ)第13870号 意匠権侵害差止等請求事件>(判決文はこちら

唐突ですが、意匠法施行規則3条様式6備考14によると、
「…(所定の)図面だけでは、その意匠を十分表現することができないときは、…その他の必要な図を加え、そのほか意匠の理解を助けるため必要があるときは、使用の状態を示した図その他の参考図を加える。」
となっとります。
また、JPOの「意匠登録出願の願書及び図面等の記載の手引」では、
「…意匠権の客体となる形態の全体が特定したものとして理解されるように、必要な図を記載することが必要です。なお、意匠の理解を助けるための図も必要に応じて記載します。(形態の説明のための図や使用状態図等であって、当該意匠を構成しない線等を描き加えた図は「○○参考図」等と表示し、当該意匠の構成要素のみを描いた図と区別します。)」
となっとります。
 
つまり、本来、「使用状態を示す参考図その他の参考図」は、意匠登録を受けようとする意匠の理解を助けるための図にすぎず、登録意匠の範囲を定める基礎となるものではない…と考えられますね。
   
それだけに、6面図以外に追加する図面って、その名称に結構悩みませんか?その図を「必要な図」として追加するべきか、そうではなく「参考図」として追加するべきか… まじ 悩みます。

特に、使い方等によって形態が変化する意匠の権利の取り方って、他にも色々な事情を考慮しなくちゃいかんくて、あっちを立てればこっちが立たず…のこともあったりするので、悩ましいですよね。
 
 
といったことを前提に、ここで、今日ご紹介する意匠権侵害訴訟での本件意匠(台車の登録意匠)の図面をご覧ください。

(1)1JPS_001399969_000007
(2)2JPS_001399969_000008

この本件意匠の基本の形態は、バージョン(1)の方です。

次に、こちらは、被告意匠(台車に係る意匠)です。
被告意匠

この被告意匠には、上記本件意匠のバージョン(1)のような本体四隅の手押し棒がないですね。
 
では、バージョン(1)の手押し棒は、本件意匠と被告意匠の類否判断に影響したのでしょうか?
 
この点、原告さんは、
「手押し棒は台車本体とは別々に取引されるものであり,汎用品かつ特徴のない形状であるから,手押し棒が本件意匠の要部となることはない。」と主張されていました(判決文4頁)。

しかしながら、裁判所(東京地裁)は、このように類否判断しました。
本件意匠の構成は別紙3意匠公報の【図面】のとおり,被告意匠の構成は別紙2被告意匠目録のとおりであり,本件意匠が台車本体の四隅に立設された4本の手押し棒(台車本体の短辺より長く,長辺より短い高さのもの)を有するのに対し,被告意匠には手押し棒に対応する部分がないため,両意匠は正面視,側面視等において明らかに形状を異にする。したがって,本件意匠と被告意匠は類似しないと判断すべきものである。』(判決文6頁)

それならば、本件意匠の 手押し棒なしバージョン(2)は?
バージョン(2)「必要な図」か「参考図」かで、類否判断に影響があるのでしょうか。

なお、バージョン(2)の図面の名称は、【手押し棒を外した状態の参考図】となっており、名称からすると「参考図」です。
一方「意匠に係る物品の説明」の欄には、「台車本体の四隅のコーナー部に手押し棒が挿着される挿入孔を形成し、この挿入孔に手押し棒を着脱自在に立設した。」との記載があります。
 
さて、裁判所はこれをどう扱ったかというと…
上記意匠公報に,意匠に係る物品の説明として手押し棒が着脱自在に立設される旨の記載があり,参考図として手押し棒を外した状態の斜視図が掲載されていることから,念のため,本件意匠のうち手押し棒以外の部分と被告意匠の類否について検討する。』(判決文6頁)。

このように、裁判所は、手押し棒なしバージョン(2)についても類否判断を行っております。

そして、裁判所は、使用の状態やカタログ・パンフレットの記載や公知意匠等を参酌した上で(判決文9-10頁)、手押し棒なしバージョン(2)と被告意匠の要部については、
原告が要部であると主張する載置面の天板の形状等だけでなく,凹部上方から視認される車輪取付板の形状及び底面視における車輪の取付態様や台車の骨格等も,これに接した者の注意を引くと認められる。』とし、
本件意匠と被告意匠はこれらの点が相違するのであり,これにより両意匠から需要者が受ける印象が異なるということができるから,前記ウの共通部分を踏まえても,全体として異なる美感を生じさせると解される。
 以上によれば,手押し棒の有無にかかわらず,本件意匠と被告意匠が類似するとは認められないと判断するのが相当であって,原告の前記主張を採用することはできない。
と判断しました(判決文10頁)。
 
結果としては、手押し棒なしバージョン(2)についても、非類似との判断でした…。

 
なお、原告さんは、被告製品が、本件意匠に係る物品に「のみ」用いられるものであるとして、間接侵害も主張していましたが、上記のように手押し棒なしでも非類似と判断されるのに加えて、
被告製品のような載置面が平板な台車は,四隅に手押し棒を立設する態様のほか,手押し棒を2本立設する態様,手押し棒を立設しない態様等でも建設現場における資材の運搬等の用に供されると認められる。
ので、間接侵害には当たらないと判断されています。

 
■コメント

この事案では、手押し棒なしバージョン(2)でも「非類似」判断だったので、手押し棒の有無で「非侵害」の結論には影響がなかったです。
しかし、仮に、手押し棒なしバージョン(2)で「類似」という判断になった場合、(2)の図面が「必要な図」か「参考図」で、結論に影響が出てくるでしょうか?
「意匠に係る物品」の記載は登録意匠の範囲を定める基礎となりますので、この事案では記載があったことで「念のため」であっても判断してくれたように思えます。記載の有無もすごく重要だということを改めて認識した事案でございました。
 
ところで、この事案の場合、
手押し棒ありなしで形態が変わってるので動的意匠として登録する手もあったのかなーとか、
手押し棒なしバージョンン(2)を基本形態にしたら利用関係で抑えられる可能性もあるのかなーとか
思ったりもしますが…
けど、外野がこの件だけ見てても見えてこない事情等が往々にしてあって、そういった諸事情知らない者があれこれゆーても…ですね。
(ちなみに、本事案の登録意匠は関連意匠として登録されており、その本意匠には他に複数の関連意匠が紐付いています。)
 
 
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