ディープなインパクトをもたらす名前

 見事に有終の美を飾ったディープくん。競馬に全く詳しくない筆者も、思わず感嘆の声をあげてしまうような素晴らしい走りでした。きっと涙したファンも多かったことでしょう。

 「ディープ」とか「インパクト」とかいうと、直ぐに馬の名前だと認識されるほど著名となった「ディープインパクト」という言葉ですが、このように著名な馬の名前については、どのような権利を主張できるでしょうか。

 まず、馬に対して正当な権利を有する者(馬主等)が商標権を取得していれば、指定した商品・役務(サービス)の範囲において他人が勝手に使用することに対して差止め等を請求することができます。実際、商標登録出願されているようですね(商願2006-89151)。

 では、商標権を持っていない場合はどうでしょうか?それとか、指定した商品・役務(サービス)ではない商品・役務(サービス)に勝手に使用された場合は?
 
 「ディープインパクト」ではないのですが、馬の名前が競馬ゲームソフトの題名として無断で使われたことに対して、いわゆる「物のパブリシティ権」の侵害であるとして、ゲームソフトの製作・販売の差止め等を請求した事件が過去にあります。
 それまで「パブリシティ権」は、著名人(人間)について認められてきました。つまり、著名人(人間)の氏名・肖像は経済的価値や顧客吸引力があるので、著名人はその氏名・肖像を排他的に支配する権利を有する、とされていたのです。すると、馬(物)に「パブリシティ権」が認められるか?ということが問題となるわけです。
 この事件について最高裁は「物のパブリシティ権」は認められないという結論を出しました(最高裁H13(受)866,867、H16.2.23小判決)。理由は、法令等の根拠もなく認めるのは相当でないから、ということでした。物(馬)について「パブリシティ権」を認めることについて慎重な判断結果を出したといえます。

 でも、商標権がないからといって、著名な物(馬とか)の名前を勝手に使って商売するのは、常識的に考えて不当な感じがしますよね。少なくとも、著名性にフリーライドする意図がみえみえな場合、倫理的にどうなの?と思いませんか。
 実際、上記の事件において一審と二審では一定の範囲で「物のパブリシティ権」を認めていましたので、時代の流れと共に「物のパブリシティ権」が確立する日がきて侵害を問える日がくるかもしれません…かな?

ちなみに私はディープ姫ではありません。念のため。
  
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