さて、前回の続きです。
この訴訟の前に、特許庁では“両商標(左の登録商標と右の引用商標)は類似する”として、左の登録商標を無効とする審決が出されました。
これに対して、左の登録商標の商標権者が、その審決の取消しを請求したのが、この裁判です。
裁判所は、称呼、観念については、
左の登録商標は『「ベアー(熊)」と認められる』、右の引用商標は『多分に不確定なものを含んでおり、「ベアー(熊)」と認められる余地もあるが、「ビー,アール」又は「ビール」との称呼が生じるとともに、特定の観念は生じない余地も十分にあり得る。』
といったことから、『称呼、観念において共通する点はあるもの、これをもって直ちに両商標が類似するとは判定し難い』と判示しました。
また、外観については、
左の登録商標は『羆のように見える熊の上半身の図柄が強烈な印象を与える』のに対し、右の引用商標は『文字のみによる商標であり、末部の「R」の大文字が特異な外観を呈するものである。』
といったことから、『外観において、両商標は、紛れる余地の全くないほどに非類似のものである。』と判示しました。
左の登録商標の認定はさておき、右の引用商標「BeaR」はどうして上記のような認定になったのでしょうか。
これについては、
『~ひとつの単語を引用商標のように第1文字と最終文字のみを大文字で構成することは通常ではなく、特異な態様ということができ、~「Bea」と「R」を組合わせたか、又は「B」と「R」との間に「ea」を挟んだ造語ないし何らかの略語であると見ることも可能である』ということや、
衣類(衣服等)について『~「BEAR」、「Bear」等に関する登録された商標の状況についてみると、~引用商標の出願日より前のものをみただけでも、「LUCKY BEAR」、~「POLAR BEAR」、「BEAR CLUB」などおびただしい数にのぼっている。』ので、『単なる「BEAR(ベアー)という称呼や「ベアー(熊)」の観念のみによっては、自他商品の識別はできず、需要者、取引者は、「BEAR」等に付加された語句や図形などの差異によって、種々存在する「BEAR(ベアー)」の商標を識別しているものと推認される。』から、『引用商標「BeaR」は特異でユニークな配列、表記である点で自他商品識別能力を具備し得たものというべきである。』
という理屈でした。
引用商標「BeaR」は、「Bea」と「R」を組合わせたか、又は「B」と「R」との間に「ea」を挟んだ造語ないし何らかの略語で、称呼は「ビー,アール」又は「ビール」ですか…。
引用商標の商標権者としては、この認定はどうなんでしょう?
特許庁は、単に引用商標より先に「BEAR」「Bear」だけの商標が登録されてなかったから、フツーな感じで『称呼は「ベアー」』として登録したのですよね(だから無効審判でも、左の登録商標と引用商標を“類似”としたのですね)。
引用商標の商標権者としては、こちらの認定の方が「ベアー」という称呼を権利範囲に含められるので、嬉しいような気がいたしますです。
あ、また長くなってしまいました。 ちっとも「一口」でありませんでした。おしゃべりが過ぎます
これに懲りず次回も見ていただける方、ぷちっと押していただけると嬉しいです。
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