他人の登録商標を借りた表現は…

 先週の続きです。
 まず、以下の(1)(2)のケースが、X社の登録商標「No.5/CHANEL/PARIS」の商標権侵害となるか否か。
 
 (1)香水のパッケージの真ん中に「シャネル(上段)/No.5(中段)/タイプ(下段)」と印刷
  (「シャネルNo.5」は小さい文字だけど、書体&色が他の文字と異なる)
 (2)香水のパッケージの下の方に「CHANEL No.5(R)をお気に入りなら、この香水もお気に召すことでしょう」という説明文を印刷
  (「CHANEL No.5」は太文字)

 これらについて実際の裁判では、

 ・(1)については、小さい文字だとしても、需要者・取引者の注目を引く場合は、「シャネルNo.5」が著名なこともあって、「シャネルNo.5」が印刷されたパッケージの商品の出所を表示する標章と理解する需要者も決して少なくないと認められる。
 ・(2)についても、太文字である等、需要者・取引者の注目を引く場合は、「シャネルNo.5」が著名なこと&(R)が付されていることもあって、「CHANEL No.5」が印刷されたパッケージの商品の出所を表示する標章と理解する需要者も決して少なくないと認められる。

 として、(1)(2)とも、商標としての使用に該当するとしました。
 (ただ、実際の裁判では、(1)の「シャネルNo.5」が図形中に記載されていたり、(2)の「CHANEL No.5」の文章が英語だったりする等、「シャネルNo.5」や「CHANEL No.5」がもっと目を引きやすい状況があったようですが…。)

 そして、(1)の表示も(2)の表示も、X社の「No.5/CHANEL/PARIS」という登録商標と類似するとして、(1)も(2)もX社の商標権侵害であると認めました。

 他人の登録商標を取り入れて(「○○タイプ」等として)自分の商品をアピールする表現は、使っている本人にしてみたら商標権を侵害しているつもりはなくても、このように商標権侵害と判断される場合があります。要注意です。

 それでは、
  (3)だしつゆの容器のラベルに「タカラ本みりん入り(上段)/煮物(中段)/だしつゆ」と印刷
  (「タカラ本みりん入り」は小さい文字、「煮物」は大きく太い文字)
 についてはどうでしょう?
 
 …明日をお楽しみに。
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コメント

  1. Unknown
    ひろたさん。
    こんにちわ。
    今回の話題も僕にとっては、とっても面白い記事
    でした。
    他人の商標の一部を使用している場合の判断基準
    ですが、需要者の誤認混同をベースに判断されるのでしょうか?
    シャネルは、僕も入門講座で、『スナックシャネル
    事件』を教わりました。その判例では、誤認混同を
    生じるとの理由で、侵害を認めたと把握しています。

  2. Unknown
    今回の事件で争点となったのは、主として「商標の使用といえるか否か」であったと思います。『商標権侵害していないっぽく細工しても、需要者が商品の出所を表すと思ってしまうような使用態様はダメよ…』と裁判所が判断したと。
    もちろん、類否判断も争点になりましたが、“需要者の誤認混同”に言及していたのでしょうか?判決文を全部読んだわけではないので、この点について言及があったか否か知らないのです。すみません。

    一方「スナックシャネル事件」は、不競法の事件でした(そもそも商品・役務が被っていないので、「他人の登録商標の一部を使用している」と言えないのでは?)
    この事件の争点は、相手方行為が「不正競争」に該当するか否かで、いわゆる“広義の混同惹起行為”も不競法2条1項1号の「混同を生じさせる行為」に該当する、と判断されたのでした。つまり、一般消費者が広義の誤認混同するおそれがあれば、不競法2条1項1号の「不正競争」に該当すると。

    今回の事件と「スナックシャネル事件」、確かに『シャネル』という点では共通していますが…

  3. 訂正致します
    ガンバさん。昨日のコメントで嘘を書いていた部分がありましたので、お詫びして訂正致します。

    今回の事件で争点となったのは、主として「商標の使用といえるか否か」であったと思います。『商標権侵害していないっぽく細工しても、需要者が商品の出所を表すと思ってしまうような使用態様はダメよ…』と裁判所が判断したと。

    一方「スナックシャネル事件」は、不競法の事件でした。
    東京高裁では「スナックシャネル」(&「スナックシャレル」)は、シャネル社の営業表示と「類似」するので、不競法の著名表示冒用行為に該当すると判断。但し、「混同を生じさせる行為」には該当しないとしました。
    これに対し最高裁では、いわゆる“広義の混同惹起行為”も不競法2条1項1号の「混同を生じさせる行為」に該当すると判断し、相手方の行為はそれに該当すると判断したのでした。つまり、一般消費者が“広義の混同”をするおそれがあれば、不競法2条1項1号の「不正競争」に該当すると。

    今回の事件と「スナックシャネル事件」、確かに『シャネル』という点では共通していますが…
    “需要者の誤認混同”を「出所表示と認識する」という意味で使っているのか、「広義の混同をする」という意味で使っているのか、ということでしょうか?

    すみません、意図を間違えて捉えているかもしれません。

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