昨日の続きです。判決に付された意見について。
この事件の被告は、原告登録商標の指定商品中「自動車並びにびにその部品及び附属品、及びこれらに類似する商品」について取消審判を請求した請求人でした。
さて、この「及びこれらに類似する商品」について、裁判所はこう苦言を呈したのでした。
『被告が取消しを求めた指定商品の範囲については、「自動車並びにその部品及び附属品」ではなく、「及びこれらに類似する商品」を含めた点において、不明確というべきである。』
つまり、登録商標の指定商品は旧第12類「輸送機械器具その部品及び附属品(他の類に属するものを除く)」でしたが、ここから「自動車並びにびにその部品及び附属品、及びこれらに類似する商品」を取消して除外すると、『残りの指定商品の範囲が不明確になって、登録商標の効力の及ぶ指定商品の範囲が客観的明確性を欠き、法的安定性を害する結果になるといわざるを得ない。』と。
そして、取消審判請求の審理する審判体(特許庁)としては、
『実質的な審理を開始するに先だって、まず、釈明権を行使するか、補正の可否を検討する等の適宜の措置を採るべきであり、そのような措置を採ることなく、漫然と手続を進行させた本件の審判手続のあり方は妥当を欠く点があったというべきである。』と。
まあ、もっとも本件については、一応、
『審判の経緯、取消訴訟の審理の経緯及び取消事由の内容(上記の点を取消事由として主張していないことも含める。)など一切の事情に照らして、審決を取り消すまでの違法を来すものとはいえない』
ので判決の結論には変わりがないものの、
『今後、商標登録の取消審判請求の審理に当たっては、請求人の求めた「請求の趣旨」における「指定商品の範囲」(特に、「類似する商品」との記載)の明確性の有無の検討、不明確な請求の趣旨に対する是正手続を十分に尽くすべきであり、この点に考慮を払わない審判手続の運用は、すみやかに改善されるべきである』
との意見が付されました。
この意見中では、他の事件で取消対象の指定商品が不明確なものが引用されており、裁判所は『またかい!』と思ったのでしょうか…
本日はこの辺で。
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コメント
Unknown
裁判所勤務の方達には、運転免許を持たない方がいらっしゃったと思います。
ブレーキマスターシリンダーがどうの、クラッチマスターシリンダーがどうのと言いましても、ご覧になったことも無いでしょね。
ボンネットを開けると運転席の前にありますが。白い半透明のタンクにブレーキオイルが入っていて、アルミ、又は、鋳鉄のシリンダーがそうです。
基本的にこの2つ、原理、構造は同じで、自動車にも、産業機器にも、使われてます。
該当する業界にとっては当然なのだと、一般人の私は考えてしまいますが、運転しない方には、何故、自動車は止まるのかなど、回転のエネルギーの熱への変換や、パスカルの法則など、物理から説明する必要があるかもしれませんね。やれやれ。
Unknown
知財高裁では高度な技術の特許に関連する訴訟もたくさんあるので、裁判官は原理くらいわかっていらっしゃると思いますが…
『機能的に同じ原理を有するからといって、同じ商品区分に属しなければならないということはできない。』と言ってますので、“商標の商品の類似概念は必ずしも原理・構造とリンクしない”ということでしょうね。
ちなみに私の記事をよく読み返してみたら「マス・シリンダ」となっている箇所がありました…寝ぼけてました。訂正しました。