<平成19年(行ケ)第10172号 審決取消請求事件>(判決文はこちら)
ビ、B系って…なに?と焦った方!わたくしと同じですね
B系というのは「黒人女性のファッションを意識し、セクシーさを趣向とする被服やファッション関連商品についてのファッション分野」をいうそうです。ブラックミュージックや「クラブ」におけるダンス愛好者から絶大な支持を受けているそうです。はぁ、そうですか…。あ!「クラブ」って、「ク」にアクセントを置いちゃいけませんよ!
この事件の原告は、20代~30代の女性向けのセクシーなB系ファッションブランドとしての本件登録商標「Shoop」の商標権者。
一方、被告は、ティーン世代の少女向けのかわゆいカジュアルファッションブランドとしての引用商標「CHOOP」を使用している者。
どちらの商標も称呼(読み方)は『シュープ』(らしい)。
裁判所に来る前に、特許庁の審判で、『登録商標「Shoop」は周知の引用商標「CHOOP」と類似しているのに過誤登録された(商標法4条1項10号違反)』として、「Shoop」の登録が無効とされました。登録商標「Shoop」について無効とされた指定商品は「セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽及びこれらの類似商品」です。引用商標「CHOOP」が使用していた商品は「「キッズウェア,パジャマ,レディスカジュアルウェア」等です。
今回の裁判は、原告が(「Shoop」の商標権者)が特許庁の審決を不服として取消しを求めたものです。
さて、商標法4条1項10号は、未登録だけど周知となっている商標の保護を主目的としています。周知商標は、未登録であっても保護すべき信用を獲得しているものといえます。したがって、商標使用者の信用の保護・需要者の保護を図るという観点から、そのような周知商標と類似した商標を他人が出願しても登録しないこととしています。
そして、商標法4条1項10号違反に該当するには、次の3つの要件を満たす必要があります。
(1)引用商標「CHOOP」が、被告の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されていること、
(2)本件商標「Shoop」と引用商標「CHOOP]とが類似すること、
(3)本件商標「Shoop」に係る指定商品と引用商標「CHOOP」の使用に係る商品とが同一又は類似すること。
まず(1)ですが、ここでいう「需要者」とは?
商品の性質上需要者が一定分野の関係者に限定されている場合にはその需要者の間で周知であれば足りる、と判断されることが多いです。
ということは、『引用商標「CHOOP」の「需要者」=ティーン世代の少女』ですか。わたくしは“ティーン世代”と別の宇宙に住んでいるので知りませんでしたが、どうやら「シュープ」っていうのはあっちの宇宙で結構周知のようです。
なので(1)の要件は満たします。
次に(2)ですが、「類似」というのは、称呼(読み方)・外観(見た目)・観念(イメージ)に基づき、その商品の取引実情に照らして総合的に判断すべき、とされることが多いです。最近は特に「取引実情」が重視されたりします。
まず称呼(読み方)は?
本件商標「Shoop」は、ナチュラルに『シュープ』と読めそうですね。引用商標「CHOOP」は、ティーンズの宇宙では『シュープ』が当たり前かもしれませんが、わたくしの宇宙では…『チョープ』?え?裁判官(おじさん)も『「シュープ」の称呼があらゆる需要者層において広く認識されていたとまで認めることはできない』と言っています。
では外観(見た目)・観念(イメージ)は?
外観(見た目)については、「Shoop」がちょっとデザイン化されていたこと等から『相違する』とされています。
観念(イメージ)については、「Shoop」はいわゆるブラックミュージックの愛好者の間では「タメ息」を意味する俗語と認識されているけど、必ずしも一般的な観念が生じるとまでは認定できないとされました(納得…)。一方「CHOOP」も何のこっちゃよくわからんので、一般的な観念は生じないとされました。なので、両者は観念的に対比できない、とされています。
最後に、取引の実情は?
本件商標「Shoop」は20代~30代の女性向けのセクシーなB系ファッションブランドとして顧客開拓をしていたけど、引用商標「CHOOP」はティーン世代の少女向けのかわゆいカジュアルファッションブランドとして顧客開拓をしていた。需要者層が異なります。
ということで、総合的に判断すると、本件商標「Shoop」は引用商標「CHOOP」と商品の出所につき誤認混同を生じないから類似でない!とされました。
なので(2)は満たしません。
ティーンズ向けのかわゆいカジュアルファッションと、セクシーなB系ファッションというのは、はぁ、それほど違うものなんですな。
さて(3)については、…次回にて。
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