昨日の続きです。
4条1項15号の『出所混同を生ずるおそれ』というのは、引用商標と類似するとかしないとか、そういう問題に限ったことではありません。
あるネーミング(マーク)「○○」を使うと、「○○」を使った商品・サービスが、他の有名な会社の関連会社のものだと誤認混同されるおそれがある場合も『出所混同を生ずるおそれ』があると判断されます。たとえ有名な会社が実際にその商品・サービス事業をやっていなかったとしても、そう判断されることがあります。最近は多角経営が多いので、消費者は「新しい事業を始めたのかな?」と間違えることも考えられるからです。
で、今回の事件の場合は?
原告は、2つの引用登録商標を特に取り上げて、これらが時計を表示する商標として日本で著名でないとか、これらの引用登録商標と自分の登録商標は判然と区別可能である等と主張しました。
でも、それだけでは足りなくて、原告の登録商標を「時計」に使うと、アルマーニ・グループとか関連会社のものだと誤認混同されるおそれがあるか否かが問題となっているわけです。
それで裁判所は、まず引用登録商標の著名性については、
『問題になっているのは、10個の引用商標の総体としての「引用商標」、つまりARMANI標章の著名性だ。』
として、2つの引用登録商標だけを取り上げても足りないとしました。
また、引用登録商標と原告の登録商標は区別可能かどうかについては、
『「出所混同」というのは、アルマーニが使用している商標との関係での混同のみに限定されず、商号とか営業表示等の関係での混同も包含するのだ。つまり、ARMANI標章を使用するアルマーニ・グループとか関連会社との出所混同が問われているのだ~』
と言いました。
そして結論としては、『原告の登録商標は、10個の引用商標の総体としてのARMANI標章と誤認混同するおそれがある』として、原告の登録商標は4条1項15号に該当することに変わりないとしました。
4条1項15号というのは、商標同士が類似するといえない場合(4条1項11号に該当しない場合)であっても、消費者が「あの会社の関連会社かな?」と間違えてしまうような商標の登録を排除するものです。
今回の場合、無効理由として4条1項11号が使われなかったのは、商標同士が類似といえるかビミョーだったと思った?ことと、ARMANIが著名だったことがあるのかも?
本日はこの辺で。
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