逃れられんかった…

 さて、先週の続きです。

 まず、ライセンシーが使用していた商標(3)が登録商標(2)(クマの図形商標)と類似するものであるか&原告の使用商標(4)と混同を生じるか、という点が問題となります。
 この点については、この裁判に来る前の特許庁の審判で、次のように判断されていました。
 『商標(3)は登録商標(2)に類似する商標の使用で、原告の業務に係る商品と混同を生じさせるものである』
 裁判では、特にこの点については触れられていませんので、審判の結論をそのまま受け入れていると思われます。
 
 それでは、裁判で問題となったのは、どんな点でしょうか?

 そもそも、被告の商標権者が持っていた登録商標(2)(クマの図形商標)はもともと他会社のもので譲ってもらったものでした。ところが、その移転手続前に、既にライセンシーは商標(3)を使っていました。
 それで、ライセンシーの商標(3)の使用については、商標権者の代理人さんが見解書を作成していたのですが、その見解書の中で
 『商標(3)の図形は登録商標(2)と類似する』とか、
 『商標権者は登録商標(2)について他会社からの移転手続を準備中で、この登録商標(2)についてもライセンスを与える予定である』
 と述べていました。
 問題となったのは、最後の『登録商標(2)についてもライセンスを与える予定である』というところ。登録商標(2)について実際にライセンスを与えたかどうかが問題となったのでした。ライセンスを与えなかったとすれば、登録商標(2)が取消されないので。

 被告の商標権者は、
 ・登録商標(2)のライセンス契約書がないし、上記見解書の記載からは、被告がライセンシーにライセンスを与えることやその予定があることを読み取ることができないとか、
 ・ライセンスを与えたのは商標(3)等であって登録商標(2)ではない、
 と主張していました。

 しかし…やはり、この主張は受け入れられませんでした。
 上記見解書の中で、『商標(3)の図形は登録商標(2)と類似する』と述べられているように、ライセンシーが商標(3)を正当に使用するためには、登録商標(2)についてもちゃんとライセンスを受ける必要があると認識されていたはずなので…

 それで、被告からライセンシーへのライセンスが『明示的又は黙示的に締結されたものと推認することができる』と判断されてしまいました。

 …というのが本件の概要ですが、実は、被告は昔、商標(3)と似た登録商標を持っていたのです。
 しかし、今回の原告に登録無効とされているのですね。裁判まで行っています(平成17年(行ケ)第10829号)。
 そのときの無効理由は、原告の使用商標(1)(と略同じ商標?)と出所の誤認混同を生じるおそれがある(商標法4条1項15号)というものでした。 
 裁判所では、『登録商標は、原告の「Bear」ブランドの著名性にただ乗りしようとする意図を持って出願されたものと推認される』とまで言われてしまってました。

 そんなこともあったりして、原告と被告は前から因縁があったのですね…
 
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ここで言っている原告、被告は、今回の事件での原告、被告です。このときの裁判では、原告の立場と被告の立場が入れ替っているので、念のため…
 
ちなみに、使用商標(1)(と略同じ商標?)は、現在、登録になっています。

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