<平成19年(ワ)第14984号 商標権侵害差止等請求事件>(判決文はこちら)
昨日は弁理士の義務研修(継続研修)に出席致しました(兼司会)。
先生のお話は大変有意義だったのですが、とにかく会場が寒かった。
冬用のショールを羽織っていたのですが、それでも鳥肌が立つぐらいで、帰宅したら38度の熱が…。頓服飲んだら、いきなり今朝は平熱になっていた(あの一瞬の熱は何だったんだ?)。
さて、本日取り上げる事件は奈良の「青丹よし」です。
原告の登録商標(登録第2283425号)はこちら。
指定商品は「和三盆と葛粉で短冊型に打ち込めた干菓子」です。
一方、被告(萬勝堂)の商品はどうやらこちらのHPに載っているもののようです。
一目瞭然ですが、似ている部分は「青丹よし」の文字の部分だけです。
なので、原告は「青丹よし」の文字部分を“要部”と捉えて、被告は原告の商標権侵害行為を行っている、と主張していました。
そして、裁判所の判断は…
おそらく想像がついたと思いますが、裁判所は「青丹よし」の部分は要部たり得ない、と判断しました。
その理由は、
『「青丹よし」は、幕末又は江戸時代中期に有栖川熾仁親王ないし有栖川宮が命名したものと伝えられ,その後,主として奈良市内において複数の菓子業者によって広く製造販売されてきた「青と赤との二色を一組にした落雁と同種の干菓子」であり,その名称は奈良において製造販売されるこの種の干菓子に広く付せられてきたものである。
そして,「青丹よし」という名称そのものについて商標登録が認められた例はないことからすれば,「青丹よし」という名称そのものが特定の業者の製造した上記干菓子を表示する機能を有しているとは認め難い。
まして,原告の製造販売する上記干菓子として出所識別力を獲得したと認めるに足りる証拠は全くない。』
といったようなことです。
そして、『原告の登録商標は、「青丹よし」以外の部分と相俟って始めて出所識別力が生じるものというべきだ』とされ、結果的に、被告が使用する商標は原告の登録商標とは類似しない、という判断となりました。
ところで。
「青丹よし」が普通名称又は慣用名称とまで認めるか否かについては、裁判所はあえて(?)言及していません。
これを、わが名古屋の銘菓の一つとして挙げられる「ういろう」と比較してみると…
おお、「ういろう」は普通名詞であると断言されています(平成12年(行ケ)第321号)。
こちらの裁判では、「ういろう」が普通名詞と認められた理由として色んなことが挙げられていますが、
別件の登録商標の指定商品として「ういろう」という記載が認められていた事実も結構効いたみたいですね。
今回の事件の登録商標では、指定商品は「和三盆と葛粉で短冊型に打ち込めた干菓子」といった説明調になっていますね。「青丹よし」では特許庁の審査に通らなかった可能性があるのでしょうか?
そうだとしたら、「ういろう」ほどには普及した名詞とはいえない、ということでしょうか。
東京の人(特許庁審査官)にもピンとくる名詞か否か、ということも一つのポイントになり得るということ?
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