<平成19年(行ケ)第10387号 審決取消請求事件>(判決文はこちら)
土曜日、あまりの暑さに岩を触る気がせず、鈴鹿の愛知(えち)川(神崎川)へ行ってきました。
いつもの沢登りコースを逆廻りして沢下りをしました。途中何箇所か泳げる場所があって涼しい…というか、最後の方は寒くなるほどでした。かわいいイモリ(?多分?)を2匹ほど見かけました。
…それに比べて名古屋は蒸し暑過ぎます。すっかり夏バテになりました。ダルい。
さて、本日は涼しげな「オレンジチェリー」なる商標の事件です。指定商品は「果実」です。
「オレンジチェリー」をネットで検索してみると「食用ほおずき」とか「フルーツほおずき」なんかで出ています。
この「オレンジチェリー」ですが、特許庁の審査では、
・「オレンジ色のさくらんぼ」程の意味合いを有するにすぎないから、3条1項3号&4条1項16号に該当する、
・食用ほおずきの一種が取引されている実情からすると、指定商品中の「食用ほおずき」に使用した場合は、「単に品質等を表示するにすぎない」から3条1項3号に該当する、
とされました。
これに対し、出願人は不服審判を請求したのですが、その審決ではなぜか3条1項3号の部分については採用されず、指定商品中「さくらんぼ」以外の商品に使用するときは品質誤認を生じさせるおそれがあり、4条1項16号に該当する、とされました。
そして、出願人がこの審決に対してさらに訴訟を起こしたのがこの事件です。
なお、上記審決が4条1項16号のみしか言及していなかったので、この事件での争点は専ら4条1項16号のみだとされました。
そして、裁判所は、「オレンジチェリー」の意味について、次のように判断しました。
まず、辞書の記載やその他の証拠から、「オレンジ」はいわゆるオレンジ、「チェリー」はさくらんぼの意味を表わす言葉として一般に認識されると認められる、としました。
その上で、
『色んな証拠からすると、「チェリー」その他の果実を指す語の前に、「スイート」「サワー」「アメリカン」等、別の語が付加されて使用される例が少なからず見受けられることからして、これら付加される語はいずれも「チェリー」等を修飾する形容詞っぽく使用され、殊に、「ブラック」「レッド」「ゴールデン」等、色に関する語が付加された場合は、果実の色自体を指すものとして用いられていることが認められる。
すると、「オレンジチェリー」に接した場合、取引者及び需要者は果実としての共通性からミカン科の果実であるオレンジとさくらんぼのミックスしたものないしそれに関連した新種の果実を想起したり、また、「オレンジ」がオレンジ色をも意味する語であることからして,上記のような形容詞的な用法として「オレンジ色のチェリー(さくらんぼ)」を想起することがあり得るものと認められる。
そうすると、「オレンジチェリー」を、その指定商品である「果実」に用いた場合には,取引者及び需要者において当該商品が「さくらんぼ」の一種(例えば,オレンジ色がかったさくらんぼ等)を指すものとして認識されることがあり得るというべきであるから、これを「さくらんぼ」以外の果実に用いた場合には、商品の品質の誤認を生ずるおそれがあるというべきである。』
と判示しました。
原告である出願人は、その他に、
・「チェリー」は単に日本でいわれる「さくらんぼ」のみを意味するものではない、
・「オレンジチェリー」は既にインターネット市場や一般商取引でその名が広く認識され、独自の識別商標としての機能を有している、
とも主張しましたが、いずれも認められませんでした。
そうですか…。
「オレンジチェリー」は登録できないとされたんですね。
ところで、「フルーツトマト」というトマトがスーパーで売られていて、とても美味しそうです。
早速IPDLで調べてみると…「フルーツトマト」単体では登録商標になっていないようですね(ハウスマーク等が付加されてたりします)。やはり単体では登録が難しいんでしょうか。
でも、「オレンジチェリー」も「フルーツトマト」も夏向きで涼しげ&美味しげですね。
と思われた方、ぷちっと押していただけると嬉しいです
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コメント
食用ホオズキは野菜?
いつも楽しく読んでいます。さて、本件が16号だけということは、食用ホオズキは果実ではないと、少なくとも特許庁は判断している(裁判所は?)のだと思います。本件が食用ホオズキについて商標権を取ることを目指していたのだとすれば、審判時でなく、出願時から「救い」がないものであるということなのではないかと。訴訟まで本人でやっていますが、あまり代理人費用をケチってはいけないということですかね?
Unknown
なるほど、よくよく読むと、裁判での特許庁の反論で、『食用ホオズキは野菜の一種というべきである』と言っていますね!
(拒絶理由では(3条1項3号の理由として)『指定商品中の「食用ほおずき」に使用した場合、単に商品の品質等を表示するにすぎないから…』としていたけど…)
仮に出願時から指定商品を「野菜(食用ホオズキ)」としたら、4条1項16号を逃れられたかも?ということでしょうか(仰っている意図が違っていたらすみません)。
『4条1項16号に該当するか否かのメルクマールは指定商品と、ネーミングから想起される商品が概ね“類似”か否かである』なんて説がありますが、野菜(食用ホオズキ)とオレンジチェリーは…?
考えてみるのもおもしろそうですね!
http://blog.goo.ne.jp/aigipattm/e/d34e8f52e1bcf1bd665c07276168867e
Unknown
Mendozaさん、コメントありがとうございます!
なるほど、よくよく読むと、裁判での特許庁の反論で、『食用ホオズキは野菜の一種というべきである』と言っていますね!
(拒絶理由では(3条1項3号の理由として)『指定商品中の「食用ほおずき」に使用した場合、単に商品の品質等を表示するにすぎないから…』としていたけど…)
仮に出願時から指定商品を「野菜(食用ホオズキ)」としたら、4条1項16号を逃れられたかも?ということでしょうか(仰っている意図が違っていたらすみません)。
『4条1項16号に該当するか否かのメルクマールは指定商品と、ネーミングから想起される商品が概ね“類似”か否かである』なんて説がありますが、野菜(食用ホオズキ)とオレンジチェリーは…?
考えてみるのもおもしろそうですね!
Unknown
コメントありがとうございます!
なるほど、よくよく読むと、裁判での特許庁の反論で、『食用ホオズキは野菜の一種というべきである』と言っていますね!
(拒絶理由では(3条1項3号の理由として)『指定商品中の「食用ほおずき」に使用した場合、単に商品の品質等を表示するにすぎないから…』としていたけど…)
仮に出願時から指定商品を「野菜(食用ホオズキ)」としたら、4条1項16号を逃れられたかも?ということでしょうか(仰っている意図が違っていたらすみません)。
『4条1項16号に該当するか否かのメルクマールは指定商品と、ネーミングから想起される商品が概ね“類似”か否かである』なんて説がありますが、野菜(食用ホオズキ)とオレンジチェリーは…?
考えてみるのもおもしろそうですね!
そうです、そうです
再びMendozaです。出願時に指定商品が野菜(食用ホオズキ)であれば、とりあえず審査基準的には果実とは非類似なので、チャンスがあったのかもと思いました。
普段4条1項16号の審決はすぐに片付けていましたが、これを機会に考えてみようと思います。ありがとうございました。
Unknown
確かに4条1項16号って3条1項3号の陰に隠れがち(?)ですが、深く考えてみるとおもしろいですね
こちらこそありがとうございました
面白くなってきました
この話、一段落と思っていましたが、「続編」がありました(私は本件の関係者ではないことを誓います)。原告が商標「オレンジチェリー」を「第31類 野菜」について、6月30日に出願していたのです(8月7日の公開公報による)。
出願日は裁判の口頭弁論終結日(平成20年7月16日)より前ですが、この裁判の中で、被告特許庁の主張等から考えたのではないかと思います。
この出願がどのような運命をたどるのか、個人的にも注目していきたいと思います。名古屋は東京より更に暑いようですが、ご自愛くださいませ。では!
Unknown
「オレンジチェリー」は再チャレンジされていたのですね(IPDLで簡単に検索したのですが見付かりませんでした…)。確かにおもしろそうですね!
名古屋は激暑です
東京は涼しくて羨ましいです