昨日の続きです。
本日は裁判所が本件商標と引用商標の対比をどのように行ったか、についてです。
まずは、観念と称呼から。
・観念について(判決文15頁~17頁):
本件商標については、「SHI-SA」の文字と図形とが相まって、沖縄のシーサーが想起されると認定しています。
引用商標については、「PUMA」の文字と図形とが相まって、動物の「ピューマ」が想起されると認定しています。また、プーマ社の著名ブランド「PUMA」の観念も生じると認定しております。
・称呼について(判決文17頁~18頁):
本件商標については、「SHI-SA」の文字や、沖縄のシーサーの観念から、「シーサ」あるいは「シーサー」の称呼が生じると認定しています。
引用商標については、「PUMA」の文字から「ピューマ」あるいは「プーマ」の称呼が生じると認定しています。
と、ここまでは、すとんと腹に落ちる感じですね。
それでは、外観については…
・外観について(判決文13頁~15頁):
まず、共通点と差異点を認定しています。(意匠っぽいですね…)
『(ア) 共通点
本件商標と引用商標1は,アルファベットの文字(SHISAとPUMA)が横書きで大きく表示されている点,その右上方に,四足動物が右側から左上方へ向けて跳び上がるように前足と後足を大きく開いている様子が側面から見た姿でシルエット風に描かれている点で共通する。
また,本件商標におけるの文字と引用商標1におけるの文字は,いずれも横長の長方形の枠内にはめ込まれたかの
ごとく太字で表記され,個々の文字は縦長となっている点で共通している。
そして,両商標における動物図形は,その向きや基本的姿勢のほか,跳躍の角度,前足・後足の縮め具合・伸ばし具合や角度,胸・背中から足にかけての曲線の描き方について,似通った印象を与える。』
『(イ) 差異点
本件商標において大きく表示された文字はであり, 引用商標1において大きく表示された文字はであって,アルファベットの文字数,末尾のを除き使用されているアルファベットの文字が異なるほか,本件商標においてはとの間にハイフン(-)が表記されている点で異なっている。
そして,両商標における動物図形については,本件商標の動物の方が引用商標1の動物に比べて頭部が比較的大きく描かれているほか,本件商標においては,口の辺りに歯のようなものが描かれ,首の部分に飾りのような模様が,前足と後足の関節部分にも飾りないし巻き毛のような模様が描かれ,尻尾は全体として丸みを帯びた形状で先端が尖っており,飾りないし巻き毛のような模様が描かれている。これに対し,引用商標1の動物図形には模様のようなものは描かれず全体的に黒いシルエットとして塗りつぶされているほか,尻尾は全体に細く,右上方に高くしなるように伸び,その先端だけが若干丸みを帯びた形状となっている。』
それで、結論は…
『(ウ) このように,本件商標と引用商標1とはないしの文字と動物図形との組合せによる全体的な形状が共通しているものの,その違いは明瞭に看て取れるものである。』
と、外観は異なるという結論です。(…裁判所が「このように」に至った経緯がよくわからんかったけど…)
ということで、裁判所は、観念・称呼のみならず、外観も異なると認定したのでありました。
ちなみに、被告のプーマ社は、『引用商標の著名性を考慮すると、本件商標と引用商標1とに観念上の錯誤が生じ,その結果,本件商標から「周知著名なプーマの商標」(「PUMA」ブランド)の観念及び「プーマ」の称呼が生じる』と主張しました。
しかしながら、裁判所は、本件商標の図形は「PUMA」ブランドの商標と似ている点があるものの,取引者・需要者に印象付けられる特徴は「PUMA」ブランドの商標とは異なるとして、被告の主張を認めませんでした(判決文18頁~23頁)。
特許庁と裁判所の判断、ぱきっと割れました。
ということで、本日はこの辺で。
次回も見ていただける方、ぷちっと押していただけると嬉しいです。
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