<平成22年(ワ)第2723号 損害賠償請求事件>(判決文はこちら)
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※こないだのコンバースの件は、ネタ切れしたときのために取っておきますので(え?)、しばらくお待ちください~
本日は不競法下の商品形態模倣で争われた事件をご紹介いたします。この事件は、裁判所の判断そのものよりも、なぜにこのような事件に発展したかの経緯の方が、教訓になるような。
■概要
原告さんは日用雑貨品の製造・販売を業とする会社であり、下記包丁研ぎ器「ダイヤモンドシャイン」を中国で委託製造の上、輸入して、H18.7.21以降、日本国内で販売しております。
被告さんも、日用雑貨品の製造・販売を業とする会社であり、下記包丁研ぎ器「キレール」を中国から輸入して、H20.4.以降、日本国内で販売しております。
ここまでに至った経緯の概要は、以下のとおり。
H18.4初め: 原告さんは、(株)小林工具製作所のダイヤモンド研ぎ器(たぶんこれ?)が売れているとの情報を入手、原告さん独自の商品を企画。
H18.4.13 : 原告さんが中国の商社D社に商品原案図を送り、金型代と製造原価の見積依頼。
H18.5.9: 原告さんが特許事務所に依頼した他社特許・実用新案権・意匠権の抵触調査の報告あり(上記原告商品につき実施可能であるとの報告)。
H18.7.21: 原告さんは、D社から送付された最終図面をもとに、中国で委託製造した上、輸入し、上記原告商品を国内で販売開始。
H18.11.27: D社から値上げ要請があったため、原告さんは、A社に原告商品の図面や商品見本を渡し、試作品を作らせた。この時点では発注は行わなかった。
H19.1頃: 原告さんは、他の商社を通じ、A社に製造工場を変更、委託製造開始。
しかしながら、不良品が多発したため、D社を通じて最初の工場に戻した。
H20.4 : 被告さんが、A社から上記被告製品を購入(輸入)、国内で販売開始。
■争点
争点は4つありましたが、ここでは争点1(被告商品の形態は、原告商品の形態を模倣したものか)のみを取り上げます。
■争点1に対する裁判所の判断
上記経緯のとおり、原告さんは、A社さん原告商品の委託製造をしたものの、不良品多発のため最初の工場に戻して、その後、被告さんがA社さんから被告製品を購入するようになっています。むむむ。
裁判所は、上記経緯から、原告商品は原告さんがその形態を考案して開発し製造販売したものと認めました(判決文12~13頁)。
一方、被告さんは、原告商品の開発者は原告さんでないと主張するとともに、原告商品は先行他社商品の模倣品であると主張していました。しかしながら、証拠からは認定されず、被告さんの主張は認められませんでした(判決文13~20頁)。
そして、被告商品の製造経緯について、裁判所は、以下のように判示しています(判決文20~21頁)。
『通常,生産を委託された場合に,同じ金型から製造した商品を委託した者以外の者に譲渡することが許されるとは考えにくいところである。仮に,A社が原告商品を他に供給してはならない旨の義務を課せられていなかったとしても,A社としては,原告商品を単に製造しているだけで,同商品の形態について,法2条1項3号の権利を有しない以上,A社が,日本国内で原告商品を販売することは,法2条1項3号に該当する行為というべきである。A社から原告商品と同じ商品を購入し,日本国内において販売する行為は,他人の商品の形態を模倣した商品であることを知らず,かつ,知らないことにつき重大な過失がない場合を除き,同じく,法2条1項3号に該当するというべきである。』
こうして裁判所は、争点1について以下のように結論付けています(判決文21頁)。
『原告商品は,原告が開発したものと認められる一方,これと実質的に同一性のある先行商品が存在していた事実は認められない。
そして,原告商品と被告商品とは,同一形態のものであり(争いがない。),原告商品の試作品を製造しただけの製造元であるA社が,被告商品を製造しているのであるから,被告商品は,原告商品に依拠して作成された模倣品であると認められる。』
■コメント
裁判所の判断は妥当だと思いますが、このような争いのもととなったのは、D社さんからの値上げ要請を受けて、A社さんに図面や商品見本を渡していたこと(製造委託をしたこと)でした。
特に日用品の場合、製造コスト抑制は大切だと思いますが、製造工場を選択する際にはこういったトラブルの可能性も考慮した方がよさそうですね…
本日は以上です!次回も見ていただけるならぷちっと押してくださいな(。-_-。)/
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※2013.4.30 追記:
控訴審である大阪高裁の判決が出ました(平成23年(ネ)第2651号)
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