意匠新着審決【10条1項該当性】(本意匠になるか引用意匠になるか)

令和元年(2018年)法改正以降、関連意匠制度が拡充され、シリーズものの意匠についての権利保護が図りやすくなりました。
改良意匠を守っていくうえで、心強い制度です。

関連意匠として意匠登録を受けるためには、意匠登録を受けようとする部分同士の位置・大きさ・範囲やその用途及び機能が共通している必要があります。

今回の審決は、先行意匠と範囲の異なる意匠が、関連意匠と認められるか否かが争点となりました。

不服2024-19167
意匠に係る物品:カッターナイフ

本願意匠

引用意匠
赤色に着色した部分以外の部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分

原査定においては、
「本願意匠はカッターナイフ全体に係るものであるのに対して、意匠登録第1499393号の意匠はカッターの刃を除いた筐体部分に係るものであり、カッターナイフと筐体とでは各々の用途及び機能が異なることから、両部分は類似しない」として、引用意匠を本意匠とする第10条第2項の規定の適用を認めず、引用意匠が先行公知意匠にあたるとして第3条第1項第3号で拒絶となっています。

これに対し、拒絶査定不服審判における判断は、以下の通り、関連意匠の適用を認めるものになりました。

ア 意匠に係る物品
両意匠の意匠に係る物品は一致するから、同一である。イ 両部分の用途及び機能
両部分の用途及び機能はおおむね一致するから、おおむね同一である。ウ 両部分の位置、大きさ及び範囲の評価
両部分の位置及び範囲は、ブレードを含むか否かで相違するが、カッターナイフ全体におけるブレードの大きさは、ブレード繰り出し時の平面視において、カッターナイフ全体の約9%の面積に過ぎず、部分全体に占める大きさが極めて小さいから、この相違は、両部分の類否判断を左右するほどのものではない
(略)
以上のとおり、両意匠は、意匠に係る物品が同一で、両部分は、用途及び機能がおおむね同一で、位置、大きさ及び範囲は相違するものの、両部分の類否判断に与える影響は小さく、その形状等も類似するものであるから、両意匠は類似する。
(略)
したがって、本願意匠は、意匠法10条1項の規定に該当する。

限定的な審決例だとは思いますが、範囲の異なる意匠について、関連意匠の適用を認められるというのは、嬉しい知らせです。
思いがけずヒットした商品のシリーズを保護するなど、元の出願を行った時には全く予想できていなかったデザインも、権利保護をはかれる可能性がありますね。

[担当:岩田]

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