「ぼく官」を攻略?商標的に。

<平成13年(ワ)第7078号 損害賠償請求事件>(判決文はこちら
 
 昨日の続きを。
 唐突ですが、リーマンのココロをくすぐる乗り物系職業シリーズといえば「電車でGO!」を思い浮かべてしまいます。
 でも「ぼく管」も有名なんですね。本日は「ぼくは航空管制官」を巡って商標権侵害で争われた事件のハナシです
 
 まず、事実の概要から。
 
 原告の商標権者A社は次の登録商標を持っていました。
 登録第4455006号:「ぼくは航空管制官」(指定商品「家庭用テレビゲームおもちゃ」)

 被告B社は、航空管制官の業務をベースとしたゲームソフト(ゲームボーイアドバンス用)を販売していました。
 被告ソフトの外箱には「ぼくは航空管制官」という文字が表記されていました。

 実は「ぼく管」シリーズは、もともと訴外C社が開発して大ヒット商品になったものでした。
 で、プレステ版に移植するに当ってC社は原告A社と契約し、A社がプレステ版ソフトを開発・販売することになりました。
 一方、ゲームボーイアドバンス版についてC社は被告B社に製造・販売の許諾を与えました。

 ところが、C社が被告B社にゲームボーイアドバンス版の許諾を与える直前に、原告A社は、C社の許諾なしに勝手に上記商標を登録したのでありました…。
 それでもA社は商標権者ですからB社を商標権侵害で訴えたわけです。

 ところで、昨日の「三国志事件」では、ゲームのタイトルは商標として認められず、被告行為は商標権侵害となりませんでした。
 
 じゃあ、この「ぼく管事件」では、B社の行為はどう判断されたのでしょう?

 結論から言えば、B社がソフトの外箱に「ぼくは航空管制官」の表示をしていることは商標としての使用である、と裁判所は判断したのです。
 
 具体的にはこんなことを述べました。

 『①被告ソフトの外箱の表面,側面及び裏面に,「ぼくは航空管制官」の文字が,大きくかつ目立つ色で表記されていること,
 ②被告ソフト及びその外箱には,「ぼくは航空管制官」の文字を除いて他に,被告ソフトと他社の商品とを区別するための標章は存在しないと解されること,
 ③「ぼくは航空管制官」の文字の上方には「航空管制シミュレーションゲーム」と記載されているが,被告ソフトの内容は,同記載によって端的に説明されていると解されること
 等の点を総合すれば,被告標章「ぼくは航空管制官」部分こそが,自他商品を識別するための標識としての機能を果たしているというべきである。

↑↑ 
 ゲームのタイトルってだいたいこんな感じで表示されているのではないでしょうか。
 この判決をベースにするとゲームのタイトル表示が「商標」と認められるケースは多そうですね。

 よかった~、ゲームのタイトルで出願しておいても無駄になることはなさそうだ~
 と胸をなでおろしている方もいらっしゃるでしょう。
  
 でも、「三国志事件」と何が違ったの?
 そんな疑問が頭に浮かんだ方、ぷちっと押していただけると嬉しいです
 ↓↓↓
 

 この判決の判断に対しては、もちろん異論もあります。「三国志事件」と本質的に変わらんのでないの?とか。
 ちなみに、A社がC社の断りもなく商標登録してしまったので、権利濫用だとしてA社の請求は結局認められなかったんですけどね…
                                                                                  
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この記事をご覧になって、何だ?この弁理士は?と思われた方は…
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