<平成21年(ワ)第25783号販売差止等請求事件>(判決文はこちら)
唐突ですが、皆さん、一度は腰を痛めたことがありませんか?
自分も職業柄、一日中座っていることが多いので、腰によい状態であるわけありません。
また、クライミングっつーのが、これまた腰に多大な負担をかける動作を行うスポーツでして、年寄りのカラダにはかえって良くなかったりするのです。あちこち壊れがち(笑)。
そんなわけで、腰痛遍歴を振り返ってみると結構いろいろやっています。座っていられない程の腰痛が長期間続いたり、ぎっくり腰を発症したり…。
今では、腰痛防止のために、それ系クッションを使用しています。ただし、正直言って、効いているのか否かいまいち判然としないです…。
で、本日は、それ系クッションの話です。商標権侵害と不正競争行為該当性で争われた事件をご紹介します。
■概要
原告さんは、寝具ふとん類の製造,各種繊維及び繊維製品等の製造・売買等をする会社で、下記の登録商標を所有しています(商標登録第822951号)。
指定商品は、第20類「クッション,座布団,まくら,マットレス」等です。
また、原告さんは、下記の表示を、自己の商品等表示として周知/著名だと主張していました。
「ドーナツ枕」
ネットで「ドーナツ枕」を検索すると、確かに、原告さんの赤ちゃん用の「ドーナツ枕」がたくさんヒットしますね。ほぇー、かわいいです。
一方、被告さんは、健康安眠枕、健康安眠マットレス及び健康クッションの輸出入、卸及び販売等を目的とする会社で、今回問題となった標章2つを使用していました。
被告標章1:
「ドーナツ
クッション」
被告標章2:
「ドーナツクッション」
被告標章2が使用されているテンピュール社さんのサイトをご参照ください。
なお、被告さん商品の説明としては、楽天のサイトの方が詳しいかも(うーん、このクッションの効果はどうなんだろう?どなたか使っている方、いらっしゃいますか?)
■争点
本件の争点は以下のとおり。
争点(1-1):本件商標権の侵害行為の有無、
争点(1-2):本件商標権の効力の26条1項2号、4号による制限、
争点(2-1):不競法2条1項1号又は2号の不正競争行為該当性、
争点(3):損害額
主な争点となったのは、(1-1)でした。
■争点(1-1)本件商標権の侵害行為の有無
裁判所は、37条1号該当性の判断よりも前に、被告各標章が商標としての「使用」(商標的使用)に該当するか否かについて判断をしています。
以下、要点のみかいつまんでご紹介します。
○被告標章1・被告標章2から生じる観念(判決文31~37頁)
『「ドーナツクッション」の称呼から,中央部分に穴のあいた円形,輪形の形状のクッションあるいはこのような円形,輪形に似た形状のクッションの観念が生じるものと認められる。』
○被告さんが専用使用権を受けていた「テンピュール商標」(判決文37~38頁)
『各テンピュール商標は,被告が販売する商品とともに全国放送のテレビ番組,新聞,雑誌等でたびたび紹介されるなどして,少なくともテンピュール商標2(「テンピュール」の標準文字からなる商標)は,平成20年7月当時までに,被告が販売する商品の商標として著名となっていた』
○被告標章1の使用態様等(38~41頁)
『①被告商品の包装箱には,被告標章1が合計5個(表面,裏面,右側面,上面及び下面(底面)に各1個)表示されているところ,表面,裏面及び右側面の被告標章1は,被告商品の本体について,取り外された楕円筒形の中央部分とその取り外し後に楕円形の穴があいた本体のイメージ図と一緒に表示されていること,②被告商品の包装箱の表面には,テンピュール商標1及び「中央にスーパーソフトな素材を用いてデリケートな部分を優しくサポートお産の後の妊婦さんや痔でお悩みの方などにお薦めのシートクッション。中央部分にはスーパーソフトなテンピュール®を用いて安らげる座りごこちを提供します。」との説明文が,裏面には,テンピュール商標1及び「・・・スーパーソフト部分は着脱が可能となっています。」との説明文が表示されていること,③右側面,上面及び下面(底面)の被告標章1は,テンピュール商標1と一緒に表示されていることが認められる。
そして,④被告標章1から中央部分に穴のあいた円形,輪形の形状のクッションあるいはこのような円形,輪形に似た形状のクッションの観念が生じること(前記(2)),⑤各テンピュール商標(テンピュール商標1ないし3)は,被告が販売する商品とともに全国放送のテレビ番組,新聞,雑誌等でたびたび紹介され,「テンピュール」の標準文字からなるテンピュール商標2は,平成20年7月当時までに,被告が販売する商品の商標として著名となっていたこと(前記(4))からすると,被告商品の包装箱に表示されたテンピュール商標1及び説明文中の「テンピュール®」の表示は,被告商品が被告が販売する商品であることを識別させるために使用されているものと認識できること,
以上の①ないし⑤に照らすならば,被告商品の包装箱に接した一般消費者においては,被告標章1について,被告商品の本体の形状を示すイメージ図及び上記②の説明文と相俟って,被告商品が中央部分を取り外すと,中央に穴のあいた輪形に似た形状のクッションであることを表すために用いられたものと認識し,商品の出所を想起させるものではないものと認められる。
そうすると,被告標章1が被告商品の包装箱において商品の出所表示機能・出所識別機能を果たす態様で用いられているものと認めることはできないから,被告商品の包装箱における被告標章1の使用は,本来の商標としての使用(商標的使用)に当たらないというべきである。』
同じような理屈で、被告さんサイトにおける被告標章2の使用態様も、被告さんカタログにおける被告標章2の使用態様も、商標的使用に当たらないと判断されています(判決文43~45頁)。(なお、先ほどもご紹介しましたが、被告さんサイトはこちら)
■その他の争点
争点(2-1)においても、被告各標章は商品の出所識別機能を果たす態様で用いられていないとされ、商品等表示に該当しないと判断され、不正競争行為該当性が否定されました。
本件のご紹介は以上です!
ちなみに…
ネットで「ドーナツクッション」を検索すると、被告さんの商品だけでなく、まあまあ色んな商品がヒットしますね。ちょっと普○名○化しかけてる?……おっと、いえいえ、何の話でしたっけ?(汗)
本日はこの辺で。
次回も見ていただけるなら、ぷちっと押していただきたいのです…
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この記事を読んでひろた興味を持たれた方は…
【執筆記事】
「知財管理」誌 VOL.60 NO.6
(並行輸入と商標権侵害 -並行輸入の抗弁における「同一人性の要件」及び「品質管理性の要件」-)
「知財産管理」誌 VOL.58 NO.5
(「腸能力」審決取消請求事件(平成19年(行ケ)第10042号 審決取消請求事件)
内容はこちらからどうぞ
【関係事件】
代理人になった事件です。負けたのでご紹介するのをためらっておりましたが、思い切って…。
平成18年(行ケ)第10367号審決取消請求事件
なお、牛木理一先生のHPで紹介いただいているので(「特許ニュース」2007年6月29日号の記事です)、そちらも併せてご覧ください~(こちらのB-27の項です)。
【ZIP FM Z-TIME BIZ】
ここのフォトギャラリーになぜかわたくしが。
見付からないよ~?→2008/07/23のところ…
※注意!弁理士さんや知財部門のご担当など、クロートの方へ!
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