先週行われた、第15回日中意匠制度シンポジウムにzoom参加しました。
日本と中国の特許庁が、双方の意匠制度の最新動向や審査実務等を紹介しあう会合で、毎年開催されています。
そこで気になった点を2点ほど速報でお知らせしたいと思います。
ちなみに、中国側の資料は配布されず、画面投影のみでしたので、正確でない点もあるかと思いますが、悪しからずご了承ください。
1.中国における『専利法実施細則』及び『専利審査指南』施行後の最新情勢
2024年1月20日に施行された、専利法実施細則及び専利審査指南について中国の意匠審査官さんから説明がありました。
ここでの注目点は、「創作非容易性」についても、初歩審査において審査される可能性が出てきたことです。(講師さんは、「審査官は、専利法第23条第2項(創作非容易性に相当)に明らかに符号しないか否かについて審査することができる」、と強調していました。)
(参考)
中国専利法第23条第2項
専利権を付与する意匠は、既存デザイン又は既存デザインの特徴の組み合わせと比べて明らかな違いがなければならない。
以前から、明らかに新規性を欠如しないかどうか(専利法第23条第1項)については審査されることもあり、引用例付きの拒絶理由通知が出された人もいる、という話は聞いていましたが、今後は、創作非容易性も審査が行われる可能性があるということです!
それと同時に、「拒絶理由通知の書き方(審査官向けか?)」及び「拒絶理由通知に対する応答方法」についても説明がありました。
いや、なんか、拒絶理由通知出す気満々じゃないですか?中国特許庁の説明からは、これからは、実体審査を行っていくぞ!という強い意志を、私は感じました。
日本の実務者は、これまでのように、お客さんに、「中国は無審査制度ですので、出願すれば全て登録になります」との説明は、今後控えた方がいい、ということになりますか。
この改正の目的は、膨大な出願件数の抑制にあるのかもしれない、と思いました。ここ何年かの中国における意匠出願件数は、約80万件とのことです。3万件前後で推移している日本の意匠出願件数の25倍以上です。
以前、お客さんが中国で商品を発売されるとのことで、意匠調査の見積を現地代理人に依頼したところ、調査対象件数の多さのため、60万円を超えるほどだったことを思い出します…。調査は、断念しました…
さすがに多すぎ、と中国も考えているのか、明らかに従来からある意匠、従来からある要素の組み合わせからなる意匠についての出願を拒絶することを通じ、将来の出願件数を徐々に抑制しようとしているのかもしれません。
2.中国における部分意匠の審査について
物品名を、「車両のドア」や、「携帯電話のカメラ」にしなければならない等々、日本の部分意匠制度とは異なる点についての説明がいくつかあったのですが、ここでの注目点は、
「保護を求める部分は、『相対的に独立する領域を形成し、かつ相対的に完全なデザインユニットを構成』しなければならない」
という規定です。
日本でも、「意匠登録を受けようとする部分は、他の意匠と対比の対象となり得る一定の範囲を占める部分であること」という規定が審査基準にあり、部分意匠制度が導入された当初(平成11年)は、手さぐり状態で、意匠登録を受けようとする部分として、あまり無碍な範囲を指定することはなかったように思いますが、導入から25年経過した現在では、部分意匠の効力を最大限に発揮させるべく、一点鎖線等をフル活用し、結構好き勝手な、もとい、任意の範囲を意匠登録を受けようとする部分とすることも多くなっていますよね(※)。
このように特定された任意の部分が、中国において上記の要件を満たすのかどうかは注意すべき点だと思いました。
今気が付きましたが、以前の審査基準には載っていた、意匠の古株さんにはお馴染みのこの図、審査基準から消えている…いつなくなったんだろう?
(「他の意匠との対比の対象となり得る部分とは認められないもの」の例です)
予め、中国にも出願すると分かっているものについて日本で意匠出願する際には、部分の範囲を、明らかに一つのデザインユニットを構成する範囲にしておいた方が安全である、ということ、覚えておきたいと思いました。
以上、ご報告でした。
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