知財の世界にどっぷり浸かっていると、”(商標的な)商品・役務(サービス)”に着目することは結構重要なので、日常生活でも気になります。

ビールで乾杯するきは「ビールだけ他のアルコール飲料とは別の区分だしね、かんぱーい」とか、
突出しが出てくると「これは、何を主材とした惣菜なのかな?もぐもぐ」(主材によって区分が変わる)とか。

そんなわけで、今日のお題は、商標の世界の「商品・役務」についてです。

 

1.そもそもどっち?問題

ちょっと前の判例で争点となった問題に、

『「とうもろこし」は、野菜なのか、穀物なのか? 問題』  がございました。

なぜこれが判例で問題になったというと、ある商標登録を無効にすべく審判を請求した側が、
『この商標登録の指定商品は「穀物」としての「とうもろこし」なので、(穀物系商品を指定する)引用商標と類似する &
商標権者が使用しているのは「野菜」としての「とうもろこし」だから、登録商標の使用実績も微妙』(←かなり意訳)
という旨を主張して、その商標登録を無効にしようとしたからです。

これに対して、商標権者さん側は、
『「野菜」のつもりで出願した(出願時に資料も出した)ので、「穀物」じゃない』(←かなり意訳)
という旨を反論しました。

これは…

悩ましくないですか? 奥さん。

「今日は とうもろこし のパンケーキ♪」というときは、「穀物」ぽいし。

「今日は とうもろこし のバーニャカウダ♪」というときは、「野菜」ぽいし。

 

まず、この商標登録では「第31類 とうもろこし」が指定されています。
この商標の出願時点では、規則の別表の第31類のところで、「とうもろこし」が、「あわ きび …」等の雑穀や穀物と並べて記載されていましたが、野菜のところには記載されていませんでした。また、出願時点の旧審査基準でも、「とうもろこし」は、「あわ きび …」等の雑穀や穀物と同じ類似群(商品・役務が類似すると推定されるグループ)のコード「33A01」が付されていました。

このような事情を受けて、裁判所は、
「第31類 とうもろこし」とする本件指定商品の範囲は,少なくとも「穀物」としての「とうもろこし」に及ぶものである。
と判断しています。

つまり、無効審判を請求した側の主張に沿った判断となりました。

 

ですが!

ここから「とうもろこし」の旅が始まります。

件の商標の出願後に、規則の別表が改訂されて、第31類の旧「とうもろこし」が新「とうもろこし(穀物)」となり、かつ、野菜のところに「とうもろこし(野菜)」が加えられました。つまり、出願後に、「とうもろこし」は、穀物にも野菜にもなり得るものに変身したのです~。

これを受けて、裁判所は、
このことに照らすと,本件指定商品「第31類 とうもろこし」は,「穀物」としての「とうもろこし」だけでなく,「野菜」としての「とうもろこし」も含むと解することが相当である。本件商標に類似群コードとして「33A01」が付されていることはこの認定を左右しない。
と判断したのです。

(裁判の結論としては、商標登録は無効、ということになりました。)

 

いまでは、「とうもろこし」は、「とうもろこし(穀物)」の「33A01」という類似群コードと、「とうもろこし(野菜)」としての「32D01」という類似群コードが付くようになっているようです。

でも、以前はそうでなかったのですね…

 

かように、商標の世界では、

そもそも その商品・役務(サービス)ってどっち? 問題

がときどき発生しますので、実は、結構、要注意です。

 

ちなみに、「とうもろこし」を調理するとたちまち違う商品になり、炒ったりゆでたりした「とうもろこし」は全然違う類似群コードが付きます。とうもろこしビジネスを展開するなら、加工品までくまなくカバーしておいた方がいいかもしれませんね。

 

2.類似群コードの推定が ひっくり返される 問題

上でも出てきた「類似群コード」というのは、特許庁が審査の便宜のために「この商品とこの商品は、類似と推定してしまおう」として同じグループにまとめて、そのグループごとに付けた5桁コードのことをいいます。

類似群はあくまで類似を推定するものなので、裁判所や特許庁で争って別の判断が出たりします。例えば、同じ類似群コードの商品・役務でも’非類似’となったり(自分の商標をなんとか登録させたい場合が多いです)、違う類似群コードの商品・役務でも’類似’となったり(他人の商標登録をなんとか潰したい場合が多いです)。判決や審決なんかではときどき事例を見ます。

ほぉ。頑張れば、別の判断を勝ち取れるのかー。

じゃ、仮に似たような先行登録商標があったとしても、「商品/役務が似てない」って頑張ればいいじゃんね?

それはそうなんですが…

別の判断を勝ち取れるといっても、出願段階の意見書で頑張っただけで勝ち取ることはちょー難しく、次のステージの審判段階まで進まないと勝ち取れないイメージです(もっとも、審判段階に進んだとしても、十分な証拠等がなく勝ち取れんことも、もちろん多いです)。さらに裁判まで行くケースもあります。

審判や裁判まで進んで争うって、結構なお金と時間がかかります。

商標って、早く登録して使い始めたいことが多いのに、自分の出願がいつまでも宙ぶらりんな感じでずっと争うのも何じゃないですか?(既に使用開始してしまって、なんとしても登録したい、という特別の場合は別ですが)

なので、

できる限り素直に特許庁の「類似の推定」に従って、すんなり登録できそうなものを登録した方がお得

だと思います。

 

3.類似群コードの付け替えがされてしまう 問題

では、素直に類似群コードに従って~
「第30類 パン」(30A01)を指定した「あいぎ」という商標を、いい感じに登録できました!
としましょう。

ところが、登録からしばらく経ったある日、なぜだか同じ「30A01」の類似群コードで、他人の商標「あいぎのサンドイッチ」が登録されていたことを発見!

同じ類似群コード「30A01」なのに、なんで類似の商標が登録されてんの???

これはなんでかというと…

日本の商品や役務の分類は国際分類(ニース分類)を基にして決められているのですが、その国際分類は定期的に変更されて、その変更のたびに日本の分類や類似群にも変更が加えられます。

上で問題となった「パン」は、わりと昔から第30類の「30A01」の類似群とされているのですが、「サンドイッチ」は数年前に(ニース分類第10版のときから)「30A01」の仲間入りをしたばかり。以前は「32F06」という、惣菜系の仲間にグルーピングされていたのです。

そうすると、以前は「パン」と「サンドイッチ」は”非類似”と推定されていたので、理論的には、「パン」の「あいぎ」と、「サンドイッチ」の「あいぎのサンドイッチ」が重複して登録されることもあり得たのです。

ちょいまてー
類似群コードの付け替えでこのような問題が生じ得るなんて、想定外だわ!

では、この問題に対応するには?

自社の事業と少しでも関連ありそうな商品・役務をできるだけ広くカバーしておく

くらいでしょうか。

そんな自衛策くらいしか考え突きません… しょぼくてすみません。

 

 

 

以上、商標の世界の「商品・役務」の あれや これや でした!