<平成19年(ネ)第10001号 商号使用禁止等請求控訴事件>(判決文はこちら)
商標事件ではありませんが、商号は商標と関係が強いので、触れてみたいと思います。
こんな登記がありました。
(原審の)原告の商号は「スポーツ・マーケティング・ジャパン株式会社」、
(原審の)被告の商号は「ジャパン・スポーツマーケティング株式会社」
「ジャパン」の位置が違うけど似てますね…。しかも、両者とも東京都渋谷区に本店を置いています(直線距離で約1.5キロ)。
さて、会社法にはこんな規定があります。
『第八条 何人も、不正の目的をもって、他の会社であると誤認されるおそれのある名称又は商号を使用してはならない。
原告は、被告の商号がこの会社法第8条に違反するとして、訴えを起こしました。
原審(東京地裁)では、被告に「不正の目的」がないとして、原告の訴えは認められませんでした。
(原審の判決文は
これに対して原告側が控訴したのが本件です。
(本件では原告が「控訴人」となり、被告が「被控訴人」となるのですが、紛らわしいので「原告」「被告」で表記します。)
本件でも、知財高裁は、被告に「不正の目的」がないとして、原告の訴えを認めませんでした。
その理由をかいつまんで紹介すると、以下のようになります。
『
同条は、不正競争防止法2条1項1号※のように他人の名称又は商号が「周知」であることを要件とせずに、営業上の損害を受けるおそれのある者に差止請求権を付与していること、
後に名称又は商号の使用を行った者が、その名称又は商号の使用を禁止される不利益も少なくない等の事情に照らすならば、
同条にいう「不正の目的」は、他の会社の営業と誤認させる目的、他の会社と不正に競争する目的、他の会社を害する目的など、特定の目的のみに限定されるものではないが、不正な活動を行う積極的な意思を有することを要するものと解するものが相当である。』
本件でも『原告は国内外のスポーツマーケティング業界で結構知名度が高い』という原審の判断が引きつられましたが、『被告は原告を上回るほどの活動歴・信用・知名度を有している』と認定されました。
そして、その他の事情等も考慮して、上記でいうような「不正の目的」は認められない、とされました。
原告は、
「被告は原告の商号の存在を認識し、競業関係にあることも認識していたから、被告の今の商号を使用すると、スポーツ・マーケティング界で原告の商号と混乱を生じる当然に認識していたに違いない。それにもかかわらず、前の商号から今の商号に変更したんだから、誤認混同させようとする意思があったと推認できる!
と主張していましたが、結果として主張が認められなかったことになります。
…日本の「スポーツ・マーケティング」業界で「スポーツ・マーケティング・ジャパン株式会社」…。
採用しがちなネーミングといえば、そうかもしれません(原審ではそんなような認定がされていました)。
もっと造語っぽくてインパクトの強いネーミングだったら、ひょっとして、裁判所の判断も違ったかも…?
本日はこの辺で。
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※商号が周知・著名になっている場合は、不正競争防止法に頼ることもできます。ただし、周知性・著名性の立証は結構大変です。
ちなみに、会社名も商標登録できます。というか、商標登録した方が有利なことが多いです。
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