ヌーブラの

<平成15年(ワ)第13847号 不正競争行為 差止等請求事件>

 自前で間に合う人は需要者層とならない(かもしれない)「ヌーブラ」に関する事件の続きです。

 この事件における不正競争防止法2条1項3号に関する争点のうち、いくつかピックアップして紹介致します。

 1.原告商品の形態は、同種の商品が通常有する形態か
 
 
ヌーブラのこの形は、ブラジャーとして通常の形態なのでしょうか?
 被告は、公開実用新案公報や公開特許公報を引き合いに出して「原告商品の形態を具備したブラジャーが開示されている」と主張しました。
 しかし、これらはフロントホックがあったり、布製だったりして、原告商品の形態を具備しないと判断されました。
 その他にも、原告商品が「同種の商品が通常有する形態」であることを認めるに足りる証拠はないとされ、この争点については、原告に有利な結論が示されました。

 2.被告商品の形態は原告商品の形態を模倣したものか。
 
 昨日紹介した2条5項では『他人の商品の形態に依拠して、これと実質的に同一の形態の商品を作り出すこと
』が「模倣」とされていました。

 まず実質的同一性について。被告商品の写真がないのでわかりませんが、裁判所は『同一といえるほど酷似していると認められる』と判断しています。

 次に依拠性について。裁判所は『このような両者の同一性に加え、原告商品が米国及び台湾で販売された後に日本で販売され、さらに日本で販売されてから数ヵ月後に被告商品が輸入・販売されたこと、それら以前に被告商品が販売されたことを窺わせる称呼が何らないことを併せ考えると、被告商品の形態は、原告商品の形態に依拠して作られたものと推認するのが相当である。』と判示しました。
 
 よって、この争点については、原告に有利な結論が示されました。

 3.原告商品は、最初に販売した日から3年を経過したものか。
 
 昨日紹介した19条1項5号の適用除外となるか否かに関する争点です。販売開始から3年以上経ってしまうと、模倣品を抑えられなくなるんですね…。

 原告はH15~H16頃に日本で「ヌーブラ」の輸入販売を開始しました。被告は、原告の元会社(米国企業)がH11年(又はH12年)に米国で「NuBra」を販売開始していたと反論しましたが、裁判所は「NuBra」の形態とこの事件で問題となっている「ヌーブラ」の形態とが実質的に同一とはいえないとして、被告の主張を認めませんでした。

 よって、この争点についても、原告に有利な結論が示されました。

 4.被告は、被告商品を輸入する時に、被告商品の形態が原告商品の形態を模倣したものであることを知らず、かつ、知らないことにつき重大な過失がなかったか。
 
 これも19条1項5号の適用除外に関する争点です。

 被告商品の販売開始時点で既に「ヌーブラ」が結構話題になっていたため、『被告商品の形態が原告商品の形態を模倣したものではないかとの疑問を当然抱くべきであり、また、その疑問を払拭するに足りる調査を行ってしかるべきである』とされ、『原告商品の形態を模倣したものであることを知らなかったことについて重大な過失がないとはいえない』と判断されました。
 
 よって、この争点につても、原告に有利な結論が示されました。

 その他の争点についても原告に有利な結論が示された上、被告商品の販売行為は、原告に対する関係で、不競法2条1項3号の不正競争を構成する、と判断されました。

 …ちなみに、この事件でも2条1項1号(周知商品表示性)や2号(著名商品表示性)の適用可否が判断されました。
 しかしながら、類似品や並行輸入品の売上げ量が、原告商品の売上げ量を上回る事態となったことから、『原告商品の形態は、原告の出所を示す商品表示としての周知性を獲得したと認められない』として、1号の周知商品表示性を否定し、当然2号の著名商品表示性も否定しました。
 一世を風靡した「ヌーブラ」であっても“周知商品表示性”が認められないとは…。1号や2号の適用は、かなりハードルが高いようです。

ちなみに昨日も言いましたが、ヌーブラ関係の訴訟は他にもあって異なる判断が出たりしていますので、ご興味があればそちらも参照して下さい。
 
 本日はこの辺で。
 次回も見ていただける方、ぷちっと押していただけると嬉しいです。
 ↓↓↓
 

***************************
この記事をご覧になって、商標などに興味を持たれた方は…

■他のメニューもご賞味ください。
<商標亭お し な が き >
   
 
商標の間
   
本日の前菜(商標仕立て
    商標に関するちょとした話題をご提供。知っていても得にはならないけど損もない!?
  
気まぐれ商標判例一口膳
          独断でおもしろそうと思った判例を気まぐれにご紹介しています。
 
 
意匠・不競法の間
   
気まぐれ意匠判例一口膳
   気まぐれ不競法判例一口膳
    これまた気まぐれな感じです。

※注意!弁理士さんや知財部門のご担当など、クロートの方へ!
  わかりやすくするために、正確でない表現を使ったり、はしょったり、大雑把にしてたり、…等々してますが、目くじら立てずに見逃して下さい<(   )>
  また、判例は、“ホットなうちに”スピード重視でご紹介しておりますので、読み間違い・勘間違い・理解間違いがあるかもしれません。疑問を感じられたらご一報いただけるとありがたく存じます<(   )>

■本店商標登録出願サイトにも是非お立ち寄り下さい。

コメント

タイトルとURLをコピーしました