ここで少しおさらいを。
実は、原告は「Budweiser」だけでなく、「BUD」という登録商標でも争っていました。
一方、被告はこれらの商標を使用していました。
が、裁判所は、被告商標5(被控訴人標章目録5の商標)以外の被告商標1~4、6~8は商標権侵害とならない、と判断したのでありました。
さて、その理由です。
被告商標1~4、6~8は、全て原告登録商標と非類似と判断されました。
裁判所は原告登録商標「Budweiser」から生じる観念について以下のように述べています。
『原告登録商標「Budweiser」の著名性を考慮すると、この商標からは「バドワイザーという名称の米国製のビール」という観念が生じる。』
一方、被告商標1~4、6~8からは特定の観念が生じないから、原告登録商標と相紛れることはない、としてます(なお、外観・称呼もそれぞれ非類似と判断しています)。
ところで、この裁判は、だいたい原審の判断を引き継いでいるのですが、原審では被告商標4について、さらに次の判断をしています。
上記“非類似”の判断だけで被告の行為は権利侵害でないと言えるのですが、実はこの裁判は、次の判断がなされたので注目を浴びました。
1.被告商標4の使用は「自己の名称を普通に用いられる方法で表示したもの」に該当するので、商標権効力が及ばない。
被告商標4の「BUDWEISER BUDVAR, NATIONAL CORPORATION」は被告のチェコ語の正式名称である「Budejovicky Budvar, Narodni Podnik」を英語表記したものであり、使用態様も瓶の下部に小さく記載されているので、自己の名称を普通に用いられる方法で表示したものである。
2.原告の権利行使は権利濫用である。
「Budweiser」はそもそも「チェスケ・ブジェヨビチェ(ドイツ語名称Buweis)」で醸造されるビールを意味する名称として使用され、そのことはヨーロッパで広く知られていたし、被告は「Budweiser」の名称に関する一切の権利を承継している。また、被告商標4の使用態様は、被告の正式名称の英語表記であり、下段の「CHESKE BUDEJOVICE (BUDWEIS) CZECH REPUBLIC」 と併せて見ればチェコ企業ということが明白で、アメリカ企業ということが明白な原告と混同するおそれはない。だから、原告の請求は権利濫用。
最近は特許権等でも「権利濫用」が言われやすくなりましたが、商標権については、商標権に無効理由が存在する場合だけでなく、色んな理由で「権利濫用」と言われるようです。
…ちなみに、この原告と被告は、昔からおんなじようなことで、世界中で争っているようです。
本日はこの辺で。
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コメント
Unknown
ひろたさん。
こんにちわ。
ひろたさんのブログ拝見していると
商標っておもしろいですね。
受験生の僕としては、色々勉強になるなと毎回
感謝しています。
特に3条と4条は、重要なので、審査基準等で
勉強していますが、奥が深いなと感じています。
これからもお仕事大変だと思いますが
ブログ更新期待しています。
Unknown
受験勉強はつまんない(?)ですが、実際の仕事はおもしろいです。でも、どんなことでも基礎を固めることは重要だと思うので、受験勉強も必要だと思います。頑張って下さい。