<平成19年(行ケ)第10205号 商標登録取消決定取消し請求事件>(判決文はこちら)
一旦登録された商標が、後から『実は他の登録商標と類似していた』と認められると、登録異議申立ての取消し対象になって登録が取消され得ます。
今回の事件で取消し対象となった登録商標Aは次のもの。
★商標:大阪プチバナナ、指定商品:菓子及びパン
類似しているとして引用された他の登録商標Bは次のもの。
★商標:大阪ばな奈、指定商品:菓子及びパン」
「東京ばな奈」ではありません。念のため。
この訴訟の前に、特許庁の決定では、『登録商標A「大阪プチバナナ」は登録商標B「大阪ばな奈」と類似するので、登録商標Aの登録を取消す』とされていました。
この決定を不服として登録商標Aの商標権者が訴訟を提起したのがこの事件です。
ところで、登録商標Aの商標権者は、対抗手段として、登録商標Bに対する不使用取消審判を請求していました。3年以上継続して使用していないと取消し対象となるので。
「大阪ばな奈」…。「東京ばな奈」の会社が権利者なんですが、どうやら「大阪」の方は使用していなかったようで、審判では答弁しませんでした。それで、この取消審判では、引用登録商標Bの登録を取消す旨の審決が出ました。
この審決が確定すると、引用商標Bは審判の予告登録日に消滅したものとみなされます。実はこの予告登録日、上記の登録商標Aの登録を取消す決定日よりも前なのです。
ということは、登録商標Aの登録取消決定日よりも前に引用登録商標Bが消滅したとみなされるので、登録商標Aは維持されるべき…?ということにはなりません。
裁判所は、この点について、
『商標登録が法4条1項11号に違反するかどうかの判断の基準時は登録査定時であると解されるところ、登録商標Aの登録査定日には、引用商標商標登録Bが、いまだ消滅していないことは明らかである。
原告は、登録商標Aの登録取消決定日には引用登録商標Bの登録は消滅していたから同決定は違法であるとか、登録異議申立ては遡及的に申立ての利益がないことになるとか主張するが、登録商標Aの登録が法4条1項11号に違反するかどうかの判断基準時は、登録査定時であると解されるから、原告の上記主張は採用することができない。』
と判示しました。
類否判断の基準時は登録査定時。わかり易い判断です。
あとは、登録商標Aが登録商標Bに類似すると判断されれば、登録商標Aの登録は取消されるべき、という結論になるはずです。
これについて裁判所は、『これらの事情は、商標の類否判断における取引の実情として斟酌されるべきものである。』とし、結論的には『登録商標Aの登録は維持されるべきだ』としました。
どういうことなんでしょう…?の解説は、また明日。
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