ひっくら返された

 「ラブVS.ラブコスメ」の高裁判決にようやくたどり着きました。

  地裁の判決をさらっとおさらいすると、
 ・原告のラブ系登録商標1~4(指定商品:歯みがき,化粧品,香料類)と、被告のラブコスメ系使用標章1~9(使用商品:化粧品)は、それぞれ類似する。
 ・ちなみに、被告のラブコスメ系登録商標2(指定商品:化粧品)は、原告のラブ系登録商標2等と類似する(だから無効理由を有する)。
 というものでありました。

 そんな登録商標や使用標章はこちら。
 
 原告の登録商標1~4(指定商品:歯みがき,化粧品,香料類)            
   

 
 被告の使用標章1~9
  

 被告の登録商標2(指定商品:化粧品)
  「ラブコスメ」

 そして、本日はいよいよ高裁判決について、です。
 
 原告のラブ系登録商標1~4と被告のラブコスメ系使用標章1~9の類否について、結論からいうと、
 『被告のラブコスメ系使用標章1~9はそれぞれ、原告のラブ系登録商標1~4とは類似しない』
 とされたのでありました。
 つまり、地裁の判断がひっくら返されたわけです。

 理由をざっくり言うとこんな感じです。
 『被告の使用標章1~9は、全体が英語表記か片仮名表記で統一されていて、「ラブコスメティック」でも「ラブコスメ」でも称呼としては長くなく、需要者は一体として認識し、「愛の化粧品」「愛のための化粧品」を観念すると解される。

 そして「ラブ(Love)」に関しては、こう述べました。
 『「Love」は,我が国においても極めて周知度の高い英語であり,「愛」「恋愛」という観念から,肯定的に受容され,普遍的に好感を持たれる語ということができ,化粧品に限っても,「Love」「ラブ」の語を含む登録商標は多数に上ることが認められ(乙32,弁論の全趣旨),化粧品以外の商品・役務においても,これらの語を含む商品名やブランド名等が多数存在することは公知である。そして,それゆえに,これらの語は商品等の標章に用いるものとしてはやや陳腐であって,少なくとも「Love」「ラブ」単独では,化粧品に限らず,商品識別・出所表示の機能は弱く,他の語と連結されることによりそれと一体のものとして商品識別機能を果たす場合も多いものと考えられる。
 確かに、周知度の高い英語を使った登録商標にありがちな現象でしょうか。

 一方、「コスメティック(cosmetic)」に関しては、こう述べています。
 『「cosmetic」は,「化粧品」を意味する英語で,比較的周知度が高いとはいえ,日本人にとって必ずしも易しい単語とはいえないから,通常の需要者が,控訴人標章中「cosmetic」の部分を,「化粧品」と同等に,控訴人商品が化粧品であると意味するにすぎないと直ちに理解するとまではいえず,この語に自他商品識別能力がまったくないとはいえない(この点は,「Love cosmetic」ないし「ラブコスメティック」と,これらと観念上はほぼ同一といえる「ラブ化粧品」という表記とを対比すれば明らかである。)。
 “「cosmetic」が日本人にとって必ずしも易しくない…”のくだりが、やや?ではありますが…

 ということで、
 『「ラブ(Love)」と「コスメティック(cosmetic)」又は「コスメ」をくっつけると、一体として認識されるのだ』
 という判断になったのでした。

 ところで、高裁の判決では、取引実情も考慮されています。ざっくりいうと、こんな感じ。
 『被告の商品はすべて通信販売されていて、商品選択・特定は被告HPかパンフレットでなされていると解される。また、被告HPやパンフレットを見れば、通常の化粧品と違うことが容易に理解できるので、需要者は被告の商品の特性を当然に認識していると認められる。
 加えて、原告の登録商標の使用実績が微々たるものにとどまることも併せて考えると、被告商品の需要者が、被告商品を原告商品と誤認混同し、又は出所を誤認混同するとはいえない。

 被告商品がちょっと特殊なだけに…納得です。  

 以上より、被告の使用標章は原告の商標権を侵害しない、という結論となりました。

 被告としては、一審で、自分が持っている登録商標2が無効だとさえ言われていたので、やれやれだったかも…。
 
 でも、原告が侵害訴訟を提起したり無効審判を請求した本当の理由は…?
 被告商品の性質を考えると、推測できそうな気がしないでもない?

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