名刺や封筒に登録商標を付けてみました

<平成20年(行ケ)第10224号 審決取消請求事件>(判決文はこちら

 こんな場面によく出くわしませんか?
 
 新しく立ち上げた会社の名前「X」が商標登録を受けて喜んでいた社長さん。しばらくして事務所にお見えになりました。
 そこで渡された名刺を見ると、おお、社名「X」に早速Rマークを付けています。そして社長さん、「まだ名刺に「X」を使っているだけなんですけどね。」なんて満面の笑み。
 …って、確か、指定商品は「被服」だったはず。この名刺、フツーにカッコいいけど、どこにも「被服」的記載がないんですけど…

 名刺なんかでも、指定商品・役務との関係が具体的にわかるような感じで商標が使用されてないと「商標の使用」とは認められん、というのが一般的な理解ですよね。
 社長さん、早めに「商標の使用」してね。

 …という前置きをして、今回は、登録商標を名刺と封筒に載せてた事件です。
 
 問題となったのは「NEXTEX」という登録商標です。
 指定役務はこちら。
 ・第35類「法人の経営の診断及び指導,法人の設立又は廃止及び法人の提携・合併又は買収に関する助言・仲介・斡旋又は契約の代理・媒介,法人の経営管理又は事業運営の代理又は代行,事業・市場又は世論の調査およびその評価・分析,商品の販売に関する情報の提供,広告および広告の代理に関する助言」
 ・第42類「地域開発・産業振興・科学技術又は社会科学に関する調査・研究又はコンサルティング,工業所有権又はその他の知的財産権の利用又は売買の仲介・斡旋・コンサルティング又は契約の代理・媒介,知的財産権に関する情報の調査・解析および提供」
 
 ちなみに、商標権者は「ネクステック・コンサルティング株式会社」です。
 この会社の社長さんの名刺には、「nextex」の文字と登録商標記号(○にR記号)及び「consulting co.,ltd」の文字が二段に横書きにして表示されているところ、「nextex」の文字部分は、「consulting co.,ltd」の文字より大きく表されていたのでありました。
 また、封筒にも、同じような記載がなされていたのでありました。

 それで、「nextex」が表示された名刺と封筒をもってして、「商標の使用」がなされていたといえるか?が争点となったわけです。(ちなみに、とりあえず、「NEXTEX」「nextex」との同一性の問題はおいとくことにします。)
  
 商標権者が行っていた業務は、こんなものです。
 ・「顧問契約書」を締結した顧客又はその関連会社に対し,その事業,あるいは計画策定の円滑,かつ,戦略的な推進のため,あるいは上記顧客の指定した該顧客の役員,株主,従業員に係る事案処理の相談,監修,交渉代理,専門家(法律,財務会計,知的財産権,その他)の手配その他の支援業務。
 ・中国在の法人の依頼により,該中国在の法人の生産する商品について,日本企業又は日系企業に対する告知活動,販売促進活動,販売代理活動。
 ・「委託契約書」を締結した顧客に対し,ある会社の100%子会社化に関する交渉戦略の検討及び報告。

 で、名刺はどんな使われ方をしていたのかというと、『契約締結前の交渉,契約の締結,契約締結後の顧客との打合せ等の際に,商標権の代表者又は従業員が顧客に名刺を交付した』ようであります。
 また、封筒は、『契約の締結前の交渉,契約の締結,契約締結後の顧客との打合せ等の際に,商標権者側から顧客に対し,封筒を使用して,契約書のドラフト,契約書,顧客に対する報告書及び意見書等を郵送した』ようであります。

 それでは、まず、この事件の前提となった取消審判の審決での判断を。
 審決での判断をごくごく簡単にいうと、
 『上記商標権者が行っていた業務は、指定役務中の「法人の設立又は廃止及び法人の提携・合併又は買収に関する助言・仲介・斡旋又は契約の代理・媒介,法人の経営管理又は事業運営の代理又は代行,商品の販売に関する情報の提供」に属するもので、その指定役務について「商標の使用」がなされていたので取消すべきでない。
 というものでした。
 商標法2条3項のどの「使用」に当たるかは…ちょっと記載が見当たらないようです(多分?)。

 さて、そんな審決に対し、審判の請求人が提訴したのが、この審決取消訴訟。
 訴訟での結論はいかに?
 …については、また次回。

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コメント

  1. はじめまして
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  2. Unknown
    はじめまして。東海経営研究所さんのブログを拝見させていただきました。
    誠実さがよくわかる内容で好感が持てました!こちらこそ、また立ち寄らせていただきます。

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