ミックのファンですが、何か?

<平成21年(行ケ)第10274号商標登録取消決定取消請求事件>(判決文はこちら

 本日ご紹介する事件については、まず引用商標を見ていただきたいです。
 これを見てピンと来ない人はいないくらいに著名なマークの商標です!

ア.登録第1411158号

イ.登録第2574649号 

ウ.登録第2520526号

 大学生のとき、当時の彼と大阪までミックのコンサートを見に行ったのに、当日ミックは熱が出たとか言ってステージでと一言「I’m sorry.」と発言して去って行ったのでありました…。
 
 …あ、いや、つい遠い目になってしまいました。
 
 そう、言うまでもなくローリングストーンズのマークでございます。

 これらストーンズの商標は、被告が使用していた商標と似たものでした(使用商標は赤や橙に着色したものでしたので、同じように着色して判断しています)(←ここの記載少し換えました2009.1.16)
 下記本件商標は、異議申立てにより、4条1項15号を理由に、一部の商品・役務に係る登録が取消
されたのでありました。

本件商標(登録第5116209号)

 さて…これは何の商標かというと…
 「Janne Da Arc(ジャンヌダルク)」なるビジュアル系ロックバンドのボーカルyasuという方のプロジェクト「Acid Black Cherry(アシッドブラックチェリー)」が使用するもの…らしいです(アシッドブラックチェリーのオフィシャルサイトはこちら)。

 それで、本件商標の商標権者が原告となって、登録を取消した異議決定の取消しを求めたのが、この裁判です。
 
 主要な争点は、日本のビジュアル系ロックバンドのボーカルの商標と、世界的に著名なロックバンドの商標とが、混同を生ずるおそれがあるが否か、でございます。
 
 私のような大雑把過ぎる人間は、ぺろりんちょの舌の図柄はみんな「ストーンズぽい」と思ってしまいますが、それはアバウトすぎますね…

 もう少し細かく見ると、原告アシッドさん(商標権者)の取消理由は、
 ・本件商標と比較する対象商標の認定の誤り、
 ・引用商標の商品・役務との混同を生ずるおそれがないとした判断の誤り、
 ・指定商品・指定役務の一部について取消すべきとした判断の誤り、
 でございました。 
 
 長くなるので全てには触れませんが、2番目の「引用商標の商品・役務との混同を生ずるおそれがないとした判断の誤り」の理由として、原告アシッドさんは、次の項目を挙げていました。
 (1)音楽の需要者の相違、
 (2)商品の販売に係る事情、
 (3)役務の提供に係る事情、
 (4)本件商標の周知性、
 (5)引用商標に係る出所表示機能、
 (6)本件商標と引用商標が類似しないこと。

 それで、「(1)音楽の需要者の相違」においては、ちょっと気になることを言ってますので、敢えて引用いたします(判決文5~6頁)。
 『イ 日本のポピュラー音楽は,欧米の流行に影響されながらも,欧米とは異なる独自の発展を遂げてきた。アシッドは,日本で独自に発展したジャンルであるいわゆるビジュアル系として分類される音楽家であり,ロック調の音楽を演奏することが多いが,それに限定されず,幅広いジャンルの演奏をし,音楽的には明確なジャンル分けをすることが難しく,その意味で,J-POPの範疇に属しており,その中の1ジャンルとしてビジュアル系と説明され,ローリングストーンズなどの海外
のロックバンドとは一線を画する。
 ウ ローリングストーンズは,1960年代に全盛期を迎え,当時の若者に指示された英国のロックバンドであり,ファン層の中心は50歳代,60歳代であって,需要者もその年代に集中するのに対し,アシッドのファンは主として10歳代から30歳代までであって,両者のファンの年齢層が明らかに異なる。
 殊に,アシッドの演奏を見たいとして公演に来場し,又はDVDを購入する者は,音楽に詳しい者やアシッドのファンであるのが通常であるから,需要者はアシッドのファンを想定するべきである。
』(下線は特に意味はなく、単に私が引っ掛かった部分です…)

  …私は50歳代でも60歳代でもないですけど、何か?
 と言いかけたら、被告が反論として『ローリングストーンズのファン層は50歳代,60歳代に限らず,10歳代から30歳代までのファンもいる。』と言ってました(判決文11頁)。
 
 あ、どうでもいいことに拘りすぎました…

 その他の原告アシッドさんの主張を一部ピックアップすると、
 (2)商品の販売に係る事情については、例えば邦楽と洋楽では店舗やインターネットサイトで売り場が区別されてること等を挙げ、
 (5)については本件商標の出願時・査定時において、すでに日本では人気が廃れていたこと等を挙げ、
 (6)については構成の違い(おもしろいのは、本件商標の右上のほくろを重要視していること)を挙げたりしていました。
 
 さて、裁判所はどう判断したのでしょうか。
 
 …については、次回。
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