<平成21年(行ケ)第10404号商標登録取消決定取消請求事件>(判決文はこちら)
以前から「パロディ商標の問題」で議論を呼んでいたSHI-SA vs. PUMAの事件、改めて知財高裁の判断が出ました(関連するエントリはこちら)。
SHI-SA商標
(登録第5040036号、指定商品第25類「Tシャツ,帽子」)。
PUMA商標
(登録第3324304号、指定商品第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」)
■この事件はこんな経緯をたどっておりました。
(1)拒絶査定不服審判の審決(2006-16943)において、SHI-SA商標は、下記2つの商標と非類似とされて登録。
引用商標A:登録第711054号(第25類「下着,寝巻き類,その他の被服(運動用特殊衣服を除く)」
引用商標B:登録第723431号(第25類「第25類「下着,寝巻き類,その他の被服(運動用特殊衣服を除く)」
(2)SHI-SA商標は、PUMA商標と類似する(4条1項11号該当)とする異議決定(2007-900349)
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(3)商標権者が決定取消請求を求めて提訴。知財高裁は「非類似」の判断で異議決定取消し(平成20年(行ケ)第10311号)
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(4)JPOで再度審理。SHI-SA商標は4条1項11号、15号、19号に該当するとする異議決定。
引用商標は、上記引用商標Aと、PUMA商標です。
なお、この異議決定は、プーマ社さんの代理人の小谷先生(あの小谷先生です!)の事務所のHPで取り上げられていますので、ご覧ください(こちら)。
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(5)そして、今回の異議決定取消請求事件に至りました。
■さて、上記(4)の異議決定で、どんな判断がなされていたか。簡単にご紹介します。
(1)4条1項11号について
本件SHI-SA商標は、引用商標Aと、外観において相違するとしても、観念及び称呼を共通にする全体として類似の商標だとして、4条1項11号該当性を認めました(PUMA商標については言及なし)。
(2)4条1項15号について
“広義の混同”の観点から、
プーマ社さんが提出した証拠で「サイズ&カラー豊富なPUMA?いえ、シーサーのパロディチビTです。(甲第35号証)」、「まずは『SHISA』。こちらは沖縄のシーザーをPUMA風味に仕立てたものです。(甲第36号証)」、「みなさん このジャンピングシーサーって単なるプーマのパクリ。またはプーマーのパロディーバージョンだと思っていませんか????(甲第38号証)」と記載されていたので、
『広義の混同があるものと解される』
とし、4条1項15号該当性を認めました。
なお、
『第15号に該当する商標か否かの判断については、登録商標(本件商標)自体からするのではなくて、登録商標と他人の使用する商標等との関係において、具体的な取引の実情を取り込んで判断したものである。』
と述べています。
(3)4条1項19号について
“仮にSHI-SA商標が4条1項15号に該当しないとして”の判断となります。
○まず、19号の「類似」概念は4条1項11号の「類似」概念と異なることを述べ、
『同項第19号の趣旨にかんがみ、同項第11号においては、混同が発生するか否かが重視されるべきであるのに対し、同項第19号にあっては、他人の業務に係る商品等を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標とそれを有する著名な事業主との一対一の対応関係を崩し、希釈化を引き起こすような程度に類似しているか否か、すなわち、容易に他人の業務に係る商品等を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標を連想(想起)させるほど類似しているか否かを検討すべきものと解するのが相当である。』
としています。
こ、このフレーズは…
どっかで似たようなのを見たと思ったら黒烏龍茶事件(平成19年(ワ)第11899号不正競争行為差止等請求事件)で2条1項2号における類似性について述べている箇所でした(その他にありましたっけ?)。
で、SHI-SA商標は、容易に他人の業務に係る商品等を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されているPUMA商標を連想(想起)させるほど類似しているということができる、とされました。
ちなみに…
「注釈商標法[新版]449頁 小野昌延編」では、19号の「類似」概念について、
『日本国内の周知・著名商標と同一のみならず類似の商標まで保護するのは、不正目的をもった無断登録出願者を利することにならないようにしたものと解され、類似範囲を狭く、同一に近いものに限定すべきであるとされる』
と述べられています。
○「不正目的」については、商標権者さん自身が述べいた言葉を示す証拠(4条1項15号のところで挙げた証拠)からPUMA商標
の『著名性を不当に利用していると考えられる』等とし、「不正目的」を認めました。
■以上の(4)異議決定が出たのに対し、(5)商標権者さんが再び取消訴訟を提起したのが、今回の事件なわけですが…
今回の事件における裁判所の判断については、次回にて。
次回も見ていただける方、ぷちっと押していただけると嬉しいです。
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