<平成22年(行ケ)第10101号審決取消請求事件(商標)>(判決文はこちら)
まずはお知らせです。
先週金曜日の「だが屋」は21名の方が参加されて、ビールを堪能してきました。皆様、ありがとうございました。
自分のテーブルには大阪からのゲスト先生もいらっしゃって、著作権のハナシやら企業さんの外国出願数のハナシ等などとても濃い内容のハナシで盛り上がっておりました。
(ちなみに若い女子も数名参加されておりましたが、どのような状況だったのか、私のテーブルからはわかりませんでした。)
次回は11月あたりに開催すると思いますので、まだご参加されたことのない方も是非いらしてください。
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ここから本日の本題です。
本日は判例紹介しようと思うんですが、裁判所さんよぉ、お盆明けだと思って張り切って一気に判例アップしたんっすね、しかもこちらがビール飲んでぇへらーと油断してるスキに。うーむ、なかなかやるな、侮れん…。
で、本日ピックアップするのは、思いっきり季節外れなサクラの商標の判例です。
春の風を感じておくれ。むぁー熱風が吹いてきたー。
○概要
下記本件商標の登録に対し無効審判が請求されましたが、請求棄却されたので、審判請求人さんが原告となって提起したのがこの事件。
無効理由は、下記本件商標は下記引用商標と類似し4条1項11号に該当する、というものでした。
本件商標(登録第5049553号)
指定商品:第30類「菓子及びパン」等
引用商標(第2497944号)
第30類「菓子,パン」
○原告(無効審判請求人)さんの主張(ポイントのみかなり簡潔に)
原告さんは、本件商標中の「サクラサク」部分は、合格通知電報の定型文で、特に受験シーズンにおいて合格を意味する縁起のよい(験担ぎ)語として使用されているので、独立して識別力を有すると主張しています(判決文4~6頁)。
また、本件商標を「キットカット商品」に使用していた訴外N社の使用態様からしても、本件商標の要部は「サクラサク」の部分だと主張しています(判決文9~11頁)。
○被告(商標権者)さんの主張(ポイントのみかなり簡潔に)
本件商標の全体としての一体性に主眼を置いた称呼・外観・観念を主張しています。
なお、下記の商標が、引用商標との関係で非類似と判断されていることにも触れています(判決文11~15頁)。
・商願2007-36122号
・商願2007-36123号
・商願2007-36124号
・商願2007-36125号
・登録第5049552号
「きっとサクラさくよ。」
・登録第2391042号
・登録第1335994号
また、原告さんは、訴外N社の実際の使用態様にも触れ(判決文15~18頁)、その中で、
『「きっとサクラサクよ」を表示したキットカット商品は,「きっとサクラサラクよ」の「きっと」が,キットカットの「キット」にかけて「必ず」を連想し,「サクラサクよ」が,キット『カット』の『勝つ』と共に合格電文の「サクラサク=合格」を想起するので,縁起の良い合格祈念製品として,周知のように多くの受験生に受験必携品として支持されている。このようなことは,受験シーズンになるとテレビ等の情報番組で紹介される周知事項である。』
と主張しています。
○裁判所の判断
裁判所は、
・商標の類否判断について氷山事件での判断(最高裁昭和43年2月27日判決・民集22巻2号399頁同旨)を引用し、
・結合商標の類否判断についてリラ宝塚事件での判断(最高裁昭和38年12月5日判決・民集17巻12号1621頁)と、つつみのおひなっこや事件での判断(最高裁平成20年9月8日判決・判例時報2021号92頁,判例タイムズ1280号114頁参照)を引用しています(判決文19~20頁)。
本件商標については以下のように認定しました(判決文20~21頁)。
『…本件商標からは,全体として「きっと桜の花が咲くよ。」とか「きっと試験に合格するよ。」といった意味が生じるものといえる。
そして,本件商標からは,少なくとも「キットサクラサクヨ」との称呼が生じるものと解される。』
『確かに,「サクラサク」という語が,合格電報の定型文であることからすれば,本件商標から「サクラサク」という称呼が生じ得る可能性は否定できないが,「キットサクラサクヨ」は,「サクラサク」に比べると長いものの,決して冗長というほどではなく,短い一文として十分称呼可能な長さであり,本件商標から「サクラサク」という称呼のみが生じるとまではいえない。』
『本件商標において,特に「サクラサク」部分のが文字のサイズが大きかったり,色が違うというような事情は存在せず,「サクラサク」部分だけが目立つものではなく,以上からすれば,「サクラサク」部分のみが本件商標の要部であるとはいえない。』
そして、上記本件商標の認定に基づき、本件商標と引用商標の対比においては、構成上、称呼・外観・観念とも異なるとしました(判決文22頁)。
また、取引の実情に関して以下のように述べています(判決文22~23頁)。
『本件商標は,受験シーズンに専らキットカット商品に用いられ,このことはよく知られており,本件商標の付されたキットカット商品はかなりの売上げを示しており,他方で,引用商標は,受験シーズンに関係なく,袋菓子や焼菓子などに用いられていることが認められる。
このように,本件商標が用いられたキットカット商品が,受験生応援製品として持つ意味合いは大きいものと認められ,このような本件商標の用いられたキットカット商品と,そのような意味合いの薄い引用商標が用いられた袋菓子等との間で誤認混同が生じるおそれは非常に低いものと認められる。』
以上より、最終的には以下のように判断しています(判決文23頁)。
『以上を前提とした場合,確かに,本件商標及び引用商標から生じる称呼はかなり類似しており,観念においても,一定程度類似することは否定し得ないが,他方で,もともと「サクラサク」は1つのまとまった表現として常用されており造語性が低く識別力が限られている上,両商標の外観は大きく異なり,取引の実態をも考慮すると,両商標につき混同のおそれはないといえる。
以上のように,本件での諸事情を総合的に考慮した結果,本件商標と引用商標とは,類似しないというべきである。』
本日の判例紹介は以上です!
どうですか、さはやかな春の風を感じていただけましたか?
むぁー名古屋のハンパない熱風がぁ~(←くどい)
次回も見ていただける方、ぷちっと押していただけると嬉しいです。
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