看板の請負製作(「シャトー勝沼」知財高裁判決より)

<平成25年(ネ)第10066号 不正競争防止法,著作権侵害・損害賠償請求控訴事件>(判決文はこちら

今朝はある企業さんを訪ねましたところ、
「これから先は変化のスピードが加速して、10年後に今ある業種の多くが無くなるかもしれないので、自ら仕事を創造していくことが大切。」
とのお話を聞きまして、大いに刺激を受けたひろたです、皆さまいかがお過ごしでしょうか。

出願数の減少がよく話題にのぼる知財業界だって例外ではないと思います。出願業務以外に業種拡大しようとしても、他人と同じ方向を向いていては上手くいかないであろうと容易に想像できるので、まさに「自ら創造」が大事だよな、と腹に落ちた次第です。

さて、そんな中(どんな中?)、少し気になる判決がアップされとりましたので、今日はそれに触れたいと思います。
「シャトー勝沼」看板の不正競争防止法、著作権侵害・損賠請求の控訴事件でございます。

ごくごく大雑把に事実の概要を言いますと、
一審原告さん(広告業がメイン)が、一審被告さん(ワイナリー)から製作を請け負って広告看板を道路脇等に設置したのですが、
一審被告さんは、一審原告さん以外の業者さんに依頼して、似た図柄の広告看板を製作させて屋外に設置したため、
一審原告さんが一審被告さんを相手取って訴訟を提起したところ敗訴しまして、その控訴審が本件です。

一審原告さんの図柄・看板と、一審被告さんの看板はこちらでご覧ください。

ちなみに、原審の東京地方裁判所平成24年(ワ)第9449号については、駒沢公園行政書士事務所の大塚大先生が紹介されておられますので、そちらのブログをご覧ください(他人任せ(汗)大塚先生のブログがわかり易いもんで…)。
なお、かの牛木先生も原審を紹介されておられますが、原告さんにとってなかなか手厳しい分析をされておられます。

それで、本日触れます控訴審たる知財高裁判決内容についての詳しいご紹介も、再び大塚先生に期待させていただくとして(笑)、
いきなり結論を述べますと、
原審判決も今回の知財高裁判決も、
・一審原告さんの図柄と看板につき著作物性がないと判断し、
・一審被告さんの行為につき不競法2条1項1号の周知表示混同惹起行為該当性も認めませんでした。

では、このブログでは、何すんの?

“広告看板の図柄につき、何らかの手段で一審原告さんを救済できたか?”を考察してみたいと思います。

弊所でもデザイナーさんからこういった事案に似たご相談を受けたことがありましたので、このようなケースは意外に多いのではないかと思いました。

なお、考察に際しては、あいぎ法律事務所の弁護士とあーだこーだ言いながら考察してみましたー。


●やはり契約がキモ

今回の事案のように、広告看板となると純粋美術と認められることは稀だと思われるので、やはり著作権で勝負することは難しいのでしょう。

となると、契約で、「他の業者に図柄を使用させないこと」等の条項を盛り込むことが王道だと思います。

請負制作となると立場が弱いこともあってなかなか言いだせないことが多いと思いますが、このように訴訟を提起する事態になるかもしれないことを考えると、まずは契約できちんと盛り込んでおくことが大事だと思います。

●商標権はどや?

広告看板ですから、商標権があれば主張できたのかな?

と思いきや、一審原告さんの代表者さんは、どうやら商標権を取得されている様子です(登録第5550222号、登録第5550223号)。
登録日は平成25年1月18日ですので、控訴審で主張できたかもですが、商標権侵害は主張されてません。
上記牛木先生の手厳しいコメントに表れている事象が理由でしょうか。それとも、“ワイナリー工場見学”用看板は権利範囲でないとの判断でしょうか。

ただ、一審原告さんは広告業が本業のようですし、この使い方ですとひょっとしたら不使用な商標なのかもしれません。3年経過する前に権利主張しとかないと…(未確認で言っているので、使用されていたら失礼ご容赦ください)。

●意匠権は?

商標権よりも一審原告さんの本業に沿うように思われるのが、意匠権です。物品を「看板」、ワイングラスの形状を部分でクレーム、色んな位置替え関連意匠で登録するとか(こういう想像をするのが大好きなひろたです)。

と思いきや、一審被告さんの代表者さんは、秘密意匠を2件持っている…(登録第1435946号、登録第1435947号)。ひょっとして爆弾かも…?(追記:出願日からしてそうではない可能性が高と思われます。すみません)
と思いきや、平成25年2月17日に権利抹消されている…  
ま、まさかの年金納付忘れ…?(ご自分で登録され、年金納付忘れで苦い経験をされたお客さまを何人か存じ上げていますが、そのようなことを避けるためには特許事務所にご依頼されるのが安心かと…)

こうして見ると、一番お金がかからずに手っ取り早いのは、やはり契約できちんと条項を盛り込んでおくことだと思います。
もし余力があれば、世に出す前に、意匠などの出願を…
→いずれも、「あいぎ法律事務所」が併設されているAIGIグループへご相談くださいー (とさり気に宣伝)。


今日はこれでおしまい!

後日追記:
この件に関連する別の判例が出ました(平成24(ワ)94
50

次回も見ていただけるならぽちっと押してくださいな(。-_-。)/
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