<平成21年(ワ)第123号損害賠償請求事件>(判決文はこちら)
先週の金曜日に開催された中央知的財産研究所の公開フォーラムは、濃ゆ~い内容でとてもおもしろかったです。
商標についていえば、D先生がびみょーにI判事の判決をコピペと(…自粛で中略…)がおもろかった。
また、特許のパネルディスカッションでは、M弁護士がはじけまくって盛り上がっとりました!
今回は名古屋飛ばししなくてありがと!また来てくださいYO!
===========================
さて、今日取り上げる判例は、商標商品の並行輸入?の事件。
原告さんは、かのカルティエです。
うう、そんな高級な商品、持ったことない…
はっ(゜○゜)!
いや、そんなことはどうでもよくて、、、
被告さんは、カルティエ商標が付されたキーホルダーを業者に販売しておりました。
被告さんが販売していたキーホルダーは原告さんの商標権の範囲に属するものだ、とあっさり判断されたので、
“並行輸入の抗弁が成立するか否か”
がメイン争点となった事案です。
さてさて、並行輸入の抗弁が成立するためには、3つの要件、すなわち、
「輸入商品の真正商品性の要件」,「同一人性の要件」,「品質の実質的同一性の要件」
を満たすことが必要でございました。
結論から言えば、今回の事件では、いきなり一番目の「輸入商品の真正商品性の要件」を満たさないと判断されて、抗弁が認められませんでした…。
その判断のまとめの部分を抜き出します(判決文26頁)。
『本件各キーホルダーは,原告の直営店等で販売されたダブルCキーリングの真正商品であると認めることはできず,かえって,原告以外の者が原告の許諾に基づかずに製造した偽造品か,又は,原告が製造した商品のうち,原告の品質管理基準を満たさないために当初から流通に置くことなく廃棄等の処分をされる予定であった二級品が何らかの経過によって流出したものであることが認められるのであり,いずれにしても,原告の意思に基づいて流通に置かれた真正商品といえないことは明らかである。
したがって,ET社における本件各キーホルダーの販売が並行輸入された真正商品の販売として本件各商標権侵害としての実質的違法性を欠くとの被告の主張は,理由がない。』(ET社っつのは被告さんです)
うう、このように、並行輸入の抗弁が認められないと、被告さんが次によく主張するのが、
「だって、知らんかったもーん」
ということ。
つまり、故意又は過失が無かったんです、という主張です。
そうは言っても、この主張が認められることはなかなかございません。
うーむ、確かに、被告さんは故意ではなかったようでございます(判決文28~29頁、34~36頁)。
しかし、過失については、裁判所はキビシメ風に言っとります(判決文29~30頁)。
『被告は,ブランド品等のいわゆる並行輸入品の販売等を業とするET社の代表者たる地位にあった者であり,ハンナへの本件各キーホルダーの販売においても,原告の正規の販売ルート以外の業者から購入した商品をハンナに販売したのであるから,その販売に当たっては,原告の本件各商標権を侵害することのないよう,当該商品がダブルCキーリングの偽造品や二級品ではなく,真正商品であることを十分に確認すべき注意義務があり,具体的には,当該商品自体について真正商品であることの十分な検査を行うとともに,当該商品が真正商品であることを示す原告発行のインボイス等の関係書類の存在やその内容の正確性等を確認すべき注意義務があったものというべきである。
しかも,…,被告が本件各キーホルダーを仕入れた相手方は,日本国内に事業所を有さない香港の業者であり,それまでに被告との間で2,3回程度の取引しか行っていない者なのであるから,上記のような商品及び関係書類の確認は,特に厳重に行われる必要があったものといえる。』
で、諸々の供述によると、結局、被告さんの行為は過失が認められる、と判断されたのでした(30~34頁)。
というわけで、被告さんのキーホルダー販売行為は商標権侵害とされたのでした…。
===========================
ところで。
並行輸入の抗弁はなかなか認められにくいですね的なことを、以前にも述べたことがありました。
以前のエントリはこちら
今回はいきなり第一の「輸入商品の真正商品性の要件」満たさずでNGだったわけですが、この要件をクリアしたとしても、他の2要件を全て満たすことは、結構ハードル高いです。
なので、特に中小の輸入業者さんは気をつけてください…
なお、コンバース並行輸入事件について書いた論文があるので、宜しければ見てください~(下にあります↓)
いつも通りすがっていくだけのつれないアナタ!たまにはぷちっと押してね…じゃないと、もう私書けない…
↓↓↓
**************************
名古屋開府400年祭開催中!→公式サイトはこちら
名古屋のゆるキャラをよろしくね!
はち丸くん&かなえっち だなも エビザベス
※名古屋市さんのご好意により画像データを提供していただきました。
**********************************
この記事を読んでひろた興味を持たれた方は…
【執筆記事】
「知財管理」誌 VOL.60 NO.6
(並行輸入と商標権侵害 -並行輸入の抗弁における「同一人性の要件」及び「品質管理性の要件」-)
「知財産管理」誌 VOL.58 NO.5
(「腸能力」審決取消請求事件(平成19年(行ケ)第10042号 審決取消請求事件)
内容はこちらからどうぞ
【関係事件】
代理人になった事件です。負けたのでご紹介するのをためらっておりましたが、思い切って…。
平成18年(行ケ)第10367号審決取消請求事件
なお、牛木理一先生のHPで紹介いただいているので(「特許ニュース」2007年6月29日号の記事です)、そちらも併せてご覧ください~(こちらのB-27の項です)。
【ZIP FM Z-TIME BIZ】
ここのフォトギャラリーになぜかわたくしが。
見付からないよ~?→ここです
※注意!弁理士さんや知財部門のご担当など、クロートの方へ!
このブログでは、わかりやすくするために、正確でない表現を使ったり、はしょったり、大雑把にしてたり、…等々してますが、目くじら立てずに見逃して下さい<( )>
また、判例・新着審決・最近の話題は、“ホットなうちに”スピード重視でご紹介しておりますので、読み間違い・勘間違い・理解間違いがあるかもしれません。疑問を感じられたらご一報いただけるとありがたく存じます<( )>
コメント
Chinese Lawyer
Mrs hirota,
Thank you very much for your continuous diligence as to this blog. I, lawyer of China, have learned a lot in connection with the Japnese IP law. I am look forward for seeing more splendid articles written by you and you colleagues.
Mizurju
Unknown
Mrs hirota,
Thank you very much for your continuous diligence as to this blog. I, lawyer of China, have learned a lot in connection with the Japnese IP law. I am look forward for seeing more splendid articles written by you and you colleagues.
Mizurju
chinese Lawyer
Mrs hirota,
Thank you very much for your continuous diligence as to this blog. I, lawyer of China, have learned a lot in connection with the Japnese IP law. I am look forward for seeing more splendid articles written by you and you colleagues.
Mizurju
chinese Lawyer
Mrs hirota,
Thank you very much for your continuous diligence as to this blog. I, lawyer of China, have learned a lot in connection with the Japnese IP law. I am look forward for seeing more splendid articles written by you and you colleagues.
Mizurju
Unknown
I really appreciate your comment! It is a great pleasure to have feedbacks from the readers. Hope you’ll continue your suport to this blog 🙂