意匠新着審決【3条1項3号系】【判定】【3条2項系】

 あっという間に木曜日。光陰矢のごとし。恐ろしいことでございます。
 で、意匠の新着審決をご紹介する日ですので、張り切っていってみよー!

■■■意匠新着審決【3条1項3号系】【判定】

●不服2010-2837
意匠に係る物品「配線用遮断器」

本願意匠(意願2009-7379)と引用意匠(意匠登録第1136223号)は非類似と判断されました。
*判断主体: 言及なし
*公知意匠の参酌: なし

本願意匠

引用意匠

 『本体の正面視における縦横の比率について,本願意匠が約2.8:1であるのに対して,引用意匠は約2:1となっている点,本体の,横幅に対する奥行き長さの比率について,本願意匠が約1:1.9であるのに対して,引用意匠は約1:1.2となっている点,端子部付近のえぐり形状について,本願意匠は,段差の部分まで達していないのに対して,引用意匠は,段差が生じている部分までえぐり形状が見受けられる点,で大きな差異が見られ,類否判断に与える影響は大きいと考えられる。

●不服2009-22126
意匠に係る物品「医療用処置具」

本願意匠(意願2008-32896)と引用意匠(特開2007-202773号の第1図及び第2図,第3図に表された「内視鏡用処置具」の意匠)は非類似と判断されました。
*判断主体: 言及なし
*公知意匠の参酌: 『意匠の前記共通点に係る構成態様は,意匠全体の骨格を成すものではあるが,その共通するとした構成態様は本願出願前のこの種医療用内視鏡用処置具の分野の意匠に照らすところ,両意匠のみの特徴を形成するほどのものとはいえないのでので,これが類否判断に及ぼす影響を大きいということはできない。

本願意匠

引用意匠

 『前記各相違点については,(A)の態様の相違は,具体的態様として,本願意匠の全体を略羽根状とするものと,引用意匠の略円環状外周左側面側に突起を設けたものとでは,全体形状が全く異なるものであって,同部位の態様は,人が指を掛けて操作するという本願意匠に係る物品の特性から,よく目に付き,さらに本願意匠の同部位の略凹円弧状切り欠き部の態様は,従前のこの種物品分野の意匠に見られないものであるので,この相違点が類否判断に及ぼす影響は大きいというべきものである。』
 『(B)の態様の相違は,第2指掛かり部と同様に,人が指を掛けて操作して,よく目につくところで,平面視,直線状部分の有無の差は十分感得できるものであり,さらに本願意匠の側面視,横方向中央で最も細幅とし,左右端部に向けて漸次太幅となるようにした本願意匠の態様は,従前のこの種物品分野の意匠に見られないものであり,同部位における独自の印象を形成するものであるので,この相違点が類否判断に及ぼす影響は大きいというべきものである。』
 ちなみに相違点(A)(B)はこちら。
 『(A)第2指掛かり部を,本願意匠は,親指用指掛かり部側(右側面側)に傾斜させたうえで,それぞれ正面視上下端部に指掛かり用の略凹円弧状の切り欠きを形成し,全体を略羽根状としているのに対して,引用意匠は,親指用指掛かり部側に傾斜しておらず,略凹円弧状の切り欠きもなく,さらに略円環状外周上下左側面側に指掛かり用の突起を設けている点
 『(B)親指用指掛かり部を,本願意匠は,平面視,僅かに楕円気味の円環状とし,側面視,その幅を横方向中央で最も細幅とし,左右端部に向けて漸次太幅となるようにしたのに対して,引用意匠は,平面視,円環状の本体軸側の反対の突端部を直線状とし,側面視,等幅とした点。

●判定2010-600002
意匠に係る物品「資料撮像装置」

イ号意匠は本件意匠(登録第1277223号)及びこれに類似する意匠の範囲に属しないと判断されました。
*判断主体: 言及なし
*公知意匠の参酌: 『…,本件登録意匠の属する分野においては,資料を撮像する機材の各部の形状は既に公知になっていることを踏まえると,一致するとした(ア)~(ウ)の点は,格別顕著な特徴ということはできないものであって,この点が一致することを以て両意匠が直ちに類似するということはできない。

本件意匠

イ号意匠

 『相違点のうち(エ)~(キ)の点は,いずれも基台部に関するものであるが,基台部は上方の機材を支える部分であるから,機材の安定性等を確認するために,最も注目されやすい部分の一つであって,この部分の相違は類否判断に大きな影響を与えるものであるということができる。
 『相違点(コ)および(サ)のカメラハウジング部とレンズ鏡筒における相違点は,本件登録意匠やイ号意匠の使用時には,被写体を最も良い状態で撮影しようとして微調整しながら手で触る部分であるから,最も注目される部分であって,機能や操作性について詳細に観察するものであり,この部分の相違は類否判断を大きく左右するというべきである。

■■■意匠新着審決【3条2項系】

●不服2009-22595
意匠に係る物品「コンセント」

本願意匠(意願2007-28350)は意匠1(特許庁意匠課公知資料番号第HH11044244号)、意匠2(特許庁意匠課公知資料番号第HH19006173号)及び意匠3(意匠登録第1193874号)に基づき容易に創作できた意匠とはいえないと判断されました。
*公知意匠の参酌: 『フラッシプレート部について、(a)全体を横長長方形状とし、左右に浅溝を介して縦框部を設け、左右を3つに分割し、中央部を横長長方形状のコンセント部とし、その上下に横框部を設けたコンセントは、【意匠2】に見られるように、本願出願前に既に公然知られた態様である。』『(b)コンセント部の形状について、…、略二の字状の平行な孔部を有するプラグ差込口を二連連接した態様は、コンセントの分野においてありふれた態様といえるものである。』『(c)コンセント部の縦横比についても、…この種のコンセントの分野において、本願意匠のコンセント部の縦横比程度のものは普通に見られるありふれた態様であるといえる。』『コンセント部の周囲に框部を有するフラッシプレート部の態様は、本願出願前の公知意匠にも見受けられる

本願意匠

意匠1

意匠2

意匠3

 『フラッシプレート部について、…その形状について、【意匠2】は、長手方向に弧状となり、左右縦框部の側縁部に縦方向に装飾部が設けられているので、本願意匠とは異なるものである。また、【意匠1】は、短手方向を緩やかな弧面状としたものであり、長手方向に框部を設けているが、短手方向には框部を設けておらず、框部と見える部分は、中央部をコンセント部用に浅くくぼませた残りの部分であるから、本願意匠のフラッシプレート部とは構成が異なり、【意匠3】も長手方向の框部で短手方向の框部を挟む構成であるから、本願意匠の構成とは相違し、【意匠1】と【意匠2】及び【意匠3】を組み合わせても、本願意匠のようなフラッシプレート部の形状とはならない。よって、本願意匠のフラッシプレート部は、【意匠1】と【意匠2】及び【意匠3】に基づいて、容易に想到できたものとはいえない。
 『コンセント部の周囲に框部を有するフラッシプレート部の態様は、本願出願前の公知意匠にも見受けられるが、本願意匠のフラッシプレート部の縦框部と横框部による具体的な態様は、本願の出願前に知られていたものではないから、新規な態様といえ、コンセント部の態様は従来から知られていたものであったとしても、フラッシプレート部において本願意匠の主要な創作があったものと認めることができる。

 
 本日は以上です!

さて。
明日(15日(金))から来週20日(水)までマッコリの国へ出張に行きますので、このブログはしばらくお休みいたします~

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この記事を読んでひろた興味を持たれた方は…

【執筆記事】
  
「知財管理」誌 VOL.60  NO.6
  (並行輸入と商標権侵害 -並行輸入の抗弁における「同一人性の要件」及び「品質管理性の要件」-)

  「知財産管理」誌 VOL.58 NO.5
  (「腸能力」審決取消請求事件(平成19年(行ケ)第10042号 審決取消請求事件)
     内容は
こちらからどうぞ

【関係事件】
 代理人になった事件です。負けたのでご紹介するのをためらっておりましたが、思い切って…。
 
平成18年(行ケ)第10367号審決取消請求事件
 なお、牛木理一先生のHPで紹介いただいているので(「特許ニュース」2007年6月29日号の記事です)、そちらも併せてご覧ください~(こちらのB-27の項です)。

【ZIP FM Z-TIME BIZ】
 ここのフォトギャラリーになぜかわたくしが。
  見付からないよ~?→2008/07/23のところ…

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