意匠新着審決No.1(全体意匠編)【3条1項3号系】【判定系】

 今日は木曜日、意匠の新着審決をご紹介する日でございます。このブログのつれない字数制限により今回も2パートに分けさせていただきました。
 No.1は全体意匠編だ、張り切っていってみよー!

■■■意匠新着審決【3条1項3号系】【判定系】

●不服2009-23193
意匠に係る物品「椅子用座」

本願意匠(意願2008- 26747)と引用意匠(意匠登録第1382223号)は非類似と判断されました。
*判断主体: 言及なし
*公知意匠の参酌: 共通点につき『この意匠の属する分野においては,普通にみられる形態であって,これらの点が一致することのみを以て,全体観察をした場合に,両意匠が類似すると判断できるほど格別な特徴となってはいない。』

本願意匠

引用意匠

 『相違点については,とりわけ,背もたれ部と座面部を一体的に形成している点,座面部及び手すり部下部における枠部の有無の点は,引用意匠とは異なる本願意匠の独特な特徴をよく表しているものであることから,僅かな相違とはいえないものであり,これらが類否判断に及ぼす影響は大きいということができる。

●無効2009-880013 
意匠に係る物品「プーリー」

本件意匠(登録第1292128号)と引用意匠(公知の図面)は類似と判断されました。
*判断主体: 看者
*公知意匠の参酌: 差異点につき『本件登録意匠と同様のものが、本件登録意匠の出願前より見受けられ(例えば、意匠登録第1195324号の意匠、意匠登録第833618号の意匠、等)、格別新規な態様ともいえず、その差異が両意匠の類否判断に与える影響は微弱である。』『かしめ部や溝部のない本件登録意匠のような態様のものは従来より普通に認められ、いずれも両意匠の類否判断に影響を及ぼすものではない。

本願意匠

引用意匠

 『共通点(ア)及び(イ)は、両意匠の形態全体の骨格を成すものであり、また、共通点(ウ)及び(エ)のとおり、両意匠は、プーリーの耳部や繋ぎ部の具体的態様が共通し、これらの共通点に係る態様が相乗して生じる視覚的な効果は、看者の注意を強く惹くものであるから、看者に共通の美感を起こさせるので、両意匠の類否を左右するものというべきである。
 なお、共通点はこちら。
 『(ア)略短円筒形状の本体部の外周に7条のV形溝を形成し、これと相似形の6つのV形山部を設け、本体部の前後の開口端部に山部より高さのある鋭角的で肉薄の耳部を形成し、正面側において、耳部の内周と本体部正面中央に形成されたベアリング部の凹みの側縁部を繋げた点、(イ)繋ぎ部分は、耳部の内周を軸方向に延ばし、ベアリング部の凹側縁部に繋がる面を大きな凸曲面に形成している点、(ウ)耳部と繋ぎ部分は鈍角に繋がれている点、(エ)耳部の裏側に山部と同じ高さの小さい段部を形成している点、(オ)ベアリング部の凹側縁部は、三重の円環状をなしている点
 『これに対し、差異は微弱であって、両意匠の共通する美感を変更するまでのものではない。
 すなわち、(あ)繋ぎ部分について、本件登録意匠の膨出の態様はごくわずかなもので目立たず、耳部の高さより低い位置に留まっているので、引用意匠とさしたる違いはなく、しかも耳部の内周端部から僅かに外側に膨出して軸方向に延びている本件登録意匠と同様のものが、本件登録意匠の出願前より見受けられ…、格別新規な態様ともいえず、その差異が両意匠の類否判断に与える影響は微弱である。次に、(い)耳部内周の輪郭線の有無について、本件登録意匠に係る「A-A線断面図」を照らし合わせれば、その差異は図面作成上の微差といった程度のもので、両意匠の類否判断に影響を及ぼすほどのものとはいえない。また、(う)かしめ部の有無及び溝部について、いずれもさほど目立たないうえに、かしめ部や溝部のない本件登録意匠のような態様のものは従来より普通に認められ、いずれも両意匠の類否判断に影響を及ぼすものではない。

●判定2010-600038  
意匠に係る物品「靴収納具」

イ号意匠は本件意匠(意匠登録第1201243号)及びこれに類似する意匠の範囲に属すると判断されました。
*判断主体: 看者
*公知意匠の参酌: 共通点につき『(A)ないし(C)のうち、…点は、本件登録意匠の出願前において…に認められる。』『上段パネル部、及び下段パネル部の縦横比率を略5対2程度とし、その後端を半円状とした点についても、上段パネル部、下段パネル部に該当する部分(靴載置部分)が板材ではなく線材で構成されたものであるとしても、同種の物品において、ほぼ同様の縦横比率とし、後端の態様としたものが、…認められるところである。』、差異点につき『すべり止めを形成する突部の態様として、平面視を円形状とするものも、長円形状とするものも、共に広く、普通にみられる態様である

本願意匠

引用意匠

 『共通点(A)ないし(D)は、上段パネル部、下段パネル部、及び前端連接部からなる全体の基本的な構成態様と、これを構成する各部の具体的な態様とを端的に表すもので、一体となって、靴収納具、又はシューズスタンドとしての全体の形態的まとまりを形成し、両意匠に極めて強い共通感をもたらしている。また同時に、本件登録意匠の形態上の特徴を最もよく表すところを形成している。従って、両意匠の共通点は、両意匠の類否判断に極めて大きな影響を及ぼすものである。
 『共通点(A)ないし(C)のうちの上記の構成態様については、この種の物品の新規な特徴として、ことさら重要視することはできない。しかしながら、これらは、両意匠において、全体の骨格的なところを構成し、その余の共通点も加わり、組み合わさり一体となって、全体形態の共通性を看者に強く印象付け、両意匠に強い共通感をもたらすところとなっている。従って、共通点(A)ないし(C)は、両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすものである。』『共通点(D)は、前端連接部の具体的な態様に係るもので、全体を鉛直面からなる凸形状とし、前端面を緩やかな凸湾曲面とし、その両端を凸円弧面として両側面に連続する態様とし、両側面の後端から凹円弧面を介して段部に連続し、段部の両側から後方に上段下段のパネル部に沿って繋ぎ部を形成した態様は、その各面各部の寸法比率の共通性と一体化して、両意匠に極めて強い共通感をもたらすところとなっている。しかもこの態様は、少なくとも当審において、本件登録意匠の出願前に認めることができず、本件登録意匠の特徴を強く表出するところを形成している。そしてこの共通点(D)は、更に共通点(A)ないし(C)と一体化して、意匠全体の形態的まとまりを、極めて独自性の強いものとしている。
 続くNo.2は部分意匠編です、見ていただけるのならぷちっと押してくださいね…
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※左上の画像データは名古屋市さんのご好意により提供していただきました。
この記事を読んでひろた興味を持たれた方は…

【執筆記事】
  
「知財管理」誌 VOL.60  NO.6
  (並行輸入と商標権侵害 -並行輸入の抗弁における「同一人性の要件」及び「品質管理性の要件」-)

  「知財産管理」誌 VOL.58 NO.5
  (「腸能力」審決取消請求事件(平成19年(行ケ)第10042号 審決取消請求事件)
     内容は
こちらからどうぞ

【関係事件】
 代理人になった事件です。負けたのでご紹介するのをためらっておりましたが、思い切って…。
 
平成18年(行ケ)第10367号審決取消請求事件
 なお、牛木理一先生のHPで紹介いただいているので(「特許ニュース」2007年6月29日号の記事です)、そちらも併せてご覧ください~(こちらのB-27の項です)。

【ZIP FM Z-TIME BIZ】
 ここのフォトギャラリーになぜかわたくしが。
  見付からないよ~?→2008/07/23のところ…

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