<平成24年(行ケ)第10441号 審決取消請求事件>(勝手に第一事件、判決文はこちら)
<平成24年(行ケ)第10442号 審決取消請求事件>(勝手に第二事件、判決文はこちら)
あいぎの所長がなにやら岐阜支店がどーのこーのと悩んでおりますが(お悩みの詳細はこちら)、その問題に絡むのかどうか、商標実務の勉強をもっとしなかんなぁと言っております。
頑張れ。
じゃなくて、そんな所長のためにも、このブログ更新頻度をもっとあげねば(汗
そんなわけで、今日は、登録商標と使用商標の同一性に関する判例をご紹介いたします。同じ権利者さんの2つの登録商標と使用商標との同一性が争われました。
■本件商標(登録商標)たち
まず第一事件の本件商標はこちら。指定商品は第25類「被服(「和服」を除く。)」等です。
第二事件の本件商標はこちら。指定商品は「洋服」等です。
■使用商標
使用商標は主としてデニムズボンに使用されていたようですが、下記のように色々な種類があったようです。
・デニムズボンのフラッシャー等に、「SAMURAI」「Samurai」「サムライ」の文字を種々の態様で使用
・フラッシャーは,様々なデザインの絵柄や「侍」「刃」「零」「極」などの文字とともに、その上部ないし中央部に、「SAMURAI」「Samurai」の文字が表記されている。「SAMURAI」「Samurai」の文字は、全ての使用商標において同一の書体で表記されているわけではないが,いずれも概ね標準の活字体又は筆記体で表記されている。「SAMURAI」「Samurai」の文字の下に「GENUINE JEANS(Genuine Jeans)」の文字が表記されているものも少なくない。
・革パッチ、ビスネーム、タグなどに「SAMURAI」「Samurai」の文字が表記された商標や、ズボンの臀部に「SAMURAI」「Samurai」の文字がプリントされた商標も付されている。
ちなみに、一例はこんな感じでした。
さて、ここで出題。
第一事件の本件商標と使用商標との同一性、及び、第二事件の本件商標と使用商標との同一性が認められたか否か。
はい、被りましょう!
(○/×帽子だね、とすぐにわかった方は、かなり古い…)
■裁判所の判断
博士のお答え
「答えはっ
YE~S!!」
そうです、第一事件の本件商標と使用商標との同一性も、第二事件の本件商標と使用商標との同一性も、ともに認められました。
まずは第一事件における裁判所の判断から見てみましょう。
『(1) 商標法50条1項は,「登録商標(書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標,平仮名,片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであつて同一の称呼及び観念を生ずる商標,外観において同視される図形からなる商標その他の当該登録商標と社会通念上同一と認められる商標を含む。以下この条において同じ。)」と規定しており,使用の対象となる商標は,登録商標と社会通念上同一と認められる商標も含むとされている。同規定は,通常の取引社会においては,常に登録商標と同一のものを使用するのではなく,当該商標を付する商品・役務の性質等に応じて,これに適宜変更を加えて使用するのが一般的であるという,実務上の要請に即したものである。
本件について,同条1項の上記趣旨に照らして判断すると,前記のとおり,本件商標は,「SAMURAI」との欧文字を毛筆風の書体で表記した商標であるのに対して,使用商標はいずれも「SAMURAI」「Samurai」との欧文字を概ね標準の書体で表記した商標である。両者は,大文字か小文字かの相違やデザイン上の相違はあるものの,その構成する文字において共通することから,使用商標は,本件商標と社会通念上同一と認められる商標に該当するというべきである。
(2) これに対し,原告は,使用商標はいずれも,相当にデザイン化された書体に変更されており,使用商標に加えられた書体の変更は,社会通念上同一といえる範囲を超えていると主張する。しかし,使用商標は,様々な絵柄や「侍」「刃」「零」「極」などの文字とともに表記されているが,いずれも「SAMURAI」「Samurai」との欧文字が,概ね標準の書体により,明瞭に表示されており,社会通念上同一といえる範囲に含まれるものというべきであり,この点の原告の主張は採用の限りでない。
また,原告は,使用商標は,「SAMURAI」ないし「サムライ」という社名と同一の文字をデザイン化した,多数の異なる標章が用いられており,被告商品の出所を示すものと認識されない態様で用いられていると主張する。しかし,使用商標は,工夫が施された図柄とともに使用されているが,前記のとおり,フラッシャーに「SAMURAI」「Samurai」との欧文字が,概ね標準の書体で表示されている使用状況に照らすならば,取引者,需要者は,商品の出所を示すための表示と認識することは明らかである。
さらに,原告は,登録商標に大幅な変更を加えた標章の使用を当該登録商標の使用として認めることは,商標権者に不当に広い権利を与えることとなるとともに,国民一般の利益を不当に侵害するなどと主張する。しかし,前記のとおり,使用商標は登録商標に大幅な変更を加えたものであるとはいえず,原告の主張はその前提において失当である。』(判決文6-7頁、下線は私が付しました)
次に第二事件における裁判所の判断です。
『…本件について,同条1項の上記趣旨に照らして判断すると,本件商標は,「SAMURAI」と「サムライ」の文字を上下2段に表記したものであるのに対し,使用商標はいずれも,「SAMURAI」又は「Samurai」の文字を単独で表記したものである。また,本件商標は標準の活字体が使用され,使用商標は概ね標準の活字体又は筆記体が使用されていること等に照らすならば,使用商標は,本件商標と社会通念上同一と認められる商標に該当するというべきである。
(2) これに対し,原告は,使用商標はいずれも,「SAMURAI」又は「サムライ」の文字を2段併記ではなく1段に表記され,相当にデザイン化された書体に変更され,また,「GENUINE JEANS」の文字が併記されており,本件商標と社会通念上同一とはいえないと主張する。しかし,使用商標は,様々な絵柄や「侍」「刃」「零」「極」などの文字や「GENUINE JEANS」の文字と併記されている例があるが,いずれも「SAMURAI」「Samurai」との欧文字が,概ね標準の書体により,明瞭に表示されており,社会通念上同一といえる範囲に含まれるものというべきであり,この点の原告の主張は採用の限りでない。…』(判決文6-7頁、下線は私が付しました)
(第一事件と同様の判断箇所は割愛しました。)
ちなみに、こんなこと言ったら怒られそうですが、一般的に、裁判ステージまでいくと、同一性がゆるふわに判断される傾向があるような…
あ!誰ですか、後ろから羽交い絞めに… ぎゃー…
箝口令が敷かれましたので、本日はこれでお終いです…
次回はもっと真面目に話を展開する予定です(汗) 次回も見ていただけるならぽちっと押してくださいな(。-_-。)/
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