<平成25年(行ケ)第10336号 審決取消請求事件>(判決文はこちら)
台風一過の金曜日、みなさまのお住まいの地域は大丈夫だったでしょうか。名古屋は思ったほど風雨がありませんでした。
さて、今日はめずらしく昨日に続いての連チャン投稿です(台風が来たので調子が狂ったようです)。
商標関係の拒絶査定不服審決取消訴訟の判決のご紹介です。
この事案は、下記の本願商標が4-1-10に該当するとして拒絶審決がなされたので、出願人さんが原告となって提訴した審決取消訴訟です。争点は、本願商標が4-1-10に該当するか否か(他人の周知商標と同一/類似であるか否か)でした。
本件は拒絶審決に対する取消訴訟なので被告はJPO長官ですが、引用商標を使用している会社が「被告補助参加人」として訴訟に参加しています。
■本願商標と引用商標
○本願商標
「三代目月見軒」(標準文字)
指定役務:第35類「飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」、第43類「ラーメン,餃子,チャーハンを主とする飲食物の提供」
○引用商標
被告補助参加人による引用商標の使用:被告補助参加人は、引用商標を「ラーメンの提供」の役務について使用している。
■本事案の経緯など
以下では、ざっくりと本事案の経緯などをご紹介いたします。
この事案は、親族の間で経営譲渡等を行ってきたラーメン店の屋号「三代目月見軒」にかかわるものです。
被告補助参加人TF社さんは、H15よりラーメン店「三代目月見軒」の営業譲渡を受け、その後の種々の営業努力されてきました。それで、後述する審判の中でも、本願商標「三代目月見軒」は被告補助参加人さんの屋号として周知となっていると認められています。
一方、原告さんら(A社さん・TG社さん)のうちA社さんは、被告補助参加人さんから承諾を得て開業・経営してこられたようです。
そして、原告A社さんがH23.8.30に本願商標を出願し、同年9.7に被告補助参加人さんが「三代目月見軒」を出願したところ、被告補助参加人さんの出願は、原告A社さんの本願商標によって4-1-11の拒絶理由が通知されました。
そして、その後、原告A社さんの本願に対して4-1-10該当を理由とする拒絶理由通知が出されました。拒絶理由通知に対しては意見書が提出されたものの、拒絶査定がなされています。
なお、本願の出願経緯を見てみると、情報提供がなされた上で拒絶理由通知が出されており、また、鬼のように包袋閲覧がなされています。(あくまで推測ですが)おそらく情報提供があったので4-1-10が適用されたのではないかな。
その後、原告さんら(A社さん・TG社さん)は本願に対する拒絶査定を不服として審判請求しましたが、拒絶査定は妥当であると判断されて拒絶審決がなされました。そこで、原告さんらがその審決を取り消すべく提起したのが、今回の審決取消訴訟でした。
■裁判所の判断
裁判所は、「三代目月見軒」が補助参加人さんの商標として周知となっていると認めたうえで、
『本願商標について商標法4条1項10号が適用されるのは明らかといえ,本件審決の結論に誤りはない。』
としました(判決文23頁)。
判断の理由の詳細については、判決文12-23頁をご参照ください(←無責任)。
※2015.3追記
(財)経済産業調査会発行「特許ニュース」H27.3.18号より
4(1)10の適用要件として、周知商標の使用者が、その使用につき善意であった(使用開始時において、他者の商標又は類似商標を使用していることにつき善意であった)ことが必要であるか否かが問題となっています。本事案は、この問題について、昭和初期の大審院判決以来、知財高裁として初めて判断を下した点で注目される事案だそうです(お恥ずかしながら知りませんでした…。勉強になりました)。
知財高裁は、このような判断を示しています。
『商標法4条1項10号の適用の可否については,①商標法32条が先使用による商標の使用権を認めるに当たり「不正競争の目的でなく」当該商標又はこれに類似する商標を使用することを要件としていること,②周知商標の使用者において,他の者が当該周知商標又はこれに類似する商標を使用していることを知りながらあえて当該周知商標の使用を開始し,商標の出所混同の事態が生ずるおそれを招いた場合にまで,上記他の者による商標登録出願を排除するのは相当とはいえないことに鑑み,商標法4条1項10号の適用には,周知商標の使用者が使用開始時において他の者が当該商標又はこれに類似する商標を使用していることにつき,特段の事情のない限り,善意であることを要すると解すべきである(大審院昭和2年9月28日判決・審決公報号外第4号大審院判決商標第1巻⑵107頁参照)。』(判決文22頁)
■引用商標の所有者のJPO長官側への補助参加
今回は、引用商標(未登録周知商標)の使用者さんがJPO長官側に補助参加しとるところに注目してみたいと思います。
『審決取消訴訟の実務』(by 村林隆一先生、発行:(財)経済産業調査会)によると、
『民事訴訟において訴訟の結果につき利害関係を有する第三者は訴訟の係属中当事者の一方を補助する為訴訟に参加することができる(同法42条)。行政事件訴訟であっても、裁判所は訴訟の結果により権利を害される第三者があるときは当事者若しくは第三者の申立てにより又は職権をもってその第三者を訴訟に参加させることができる(同法第22条1項)。特許訴訟も行政訴訟の一として、当事者の申立て又は職権による補助参加を認められるべきである。』
とのことです(p.28)。
では、引用商標(未登録周知商標)の使用者さんは「訴訟の結果につき利害関係を有する」とか「訴訟の結果により権利を害される」とか言えるのかな。
先の村林先生の本によると、拒絶査定不服審判取消訴訟の場合の補助参加のうち、被告(JPO長官)側の参加として考えられる例として『侵害訴訟を起こされる蓋然性のある者、自己の特許が実施不能となる者、自己の特許が後願として無効にされる者』が挙げられています(p.28)。
もし本願が登録された場合、侵害訴訟を起こされる蓋然性があるし、自己の商標が使用不能になるかもしれないし、自己の商標が後願として拒絶理由を受けた事実があることを考えると、今回の被告補助参加人もこれらの例に該当するように思えますので、補助参加が許されたのでしょうか。
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