<平成26年(行ケ)第10266号 商標登録取消審決取消請求事件>(勝手に「第一事件」、判決文はこちら)
<平成26年(行ケ)第10267号 商標登録取消審決取消請求事件>(勝手に「第二事件」、判決文はこちら)
こんばんは。
先日、Yosemite の El Capitan で 初めて 垂直方向の Google street view の撮影に成功したとのニュースがありましたね。クライマー界騒然です。
しかも、登ったのは、Lynn Hill 姐さん! (を含むパーティ。他の二人も有名クライマー。)
姐さん、自分がクライミング始めた頃からの憧れの存在です。
彼女の全盛期には、前人未到のルートを登ったことでも有名です(El Capitan The Noseのフリー化)。
まさに、世界の男性トップクライマーをも凌ぐ実力でした。
それを象徴する彼女のセリフ。
「坊やたち、ついてらっしゃい!」
くー
ちょー かっこいー。
しびれます…
さて。
そこで皆さん、「こんぴらさん」という文字から、どんな事柄を思い浮かべますか?
自分は「金毘羅山」を思い浮かべます。
あ、Yosemite と「山」つながり(のつもり)です。
「金毘羅山」には今まで三回行ったことがあります。
一回目は学生のときの修学旅行、
二回目は若かりし頃バイク乗りだったとき一人きりのツーリングで(雨の日も雪の日もアホみたいに250ccのバイクに乗ってました)、
三回目はダンナと山の友達(高松市在住)と三人で石鎚山に沢登に行って帰りに寄ったとき(沢の中で、ぬるぬるの岩場を確保支点なしで登ったのは、かなり しびれたよ…)。
そんな「こんぴらさん」ですが、なんと、INTELと関係があるみたいです。
今度は何つながりでしょ?
っていうような判決を、今日はご紹介いたします(前置きが長すぎ)。
拒絶審決に対する審決取消訴訟となっとります。
■本願商標
まずは本願商標をご紹介いたします。
第一事件の本願商標
第二事件の本願商標
いずれも指定商品・役務は第29類「カレーうどんのもと」等、第30類「うどんのめん」等、第43類「飲食物の提供」となっております。
以下では、第一事件(ひらがな商標の方)だけご紹介いたします。
■経緯
JPOで拒絶審決されたのは“本願商標は4(1)8に該当する”という理由でした。
ごく簡単に言えば、
『本願商標は、他人の名称(宗教法人金刀比羅宮)の著名な略称(こんぴら)を含む商標であって、かつ、当該他人の承諾を得ているものとは認められないものである』
というものです。
出願人さんは、その審決を不服として、取消訴訟を提起したわけです。
■裁判所の判断
4(1)8については、古くから、出所混同防止説と人格権保護説があったところ、最高裁判決(「オプト事件」平成20(行ケ)10309、「国際自由学園事件」(平成16(行ヒ)343))では、“人格的利益を保護する規定だ”と認められておりました。本件でも、その判断基準がまず示されとります(判決文8頁)。
そして、本件で特徴的なのは、本願商標に含まれる「こんぴら」が、「宗教法人金比羅宮」の形式的?な略称(つまり「宗教法人」を除いた「金比羅宮」)とは、ドンピシャじゃないところ。
先に示した「国際自由学園事件」の最高裁判決では、「著名な略称」について、
『人の名称等の略称が同号にいう「著名な略称」に該当するか否かを判断するについても,その略称が本人を指し示すものとして一般に受け入れられているか否かを基準として判断されるべき』
とされておりました。
本件でも、本願商標の「こんぴら」の部分が、「本人を指し示すものとして一般に受け入れられているか否か」が問題となったのです。
では、裁判所はどう判断したかというと。
うん、審決の判断をほぼサポートしたようです。
『…「こんぴら」が「宗教法人金刀比羅宮」の「著名な略称」に当たるか否かについて見るに,「こんぴら【金毘羅,金比羅】」の見出しの下に,広辞苑第6版には,「香川県の金刀比羅宮ことひらぐうのこと。」(乙2),大辞林(増補・新装版)には,「金刀比羅宮ことひらぐうの異称。こんぴらさま。」(乙4),国語大辞典(新装版)には,「四国,讃岐(香川県)の金刀比羅宮の俗称。」(乙5),精選版日本国語大辞典第1巻には,「四国,讃岐(香川県)の金刀比羅宮の俗称」(甲245),新世紀ビジュアル大辞典及び日本語大辞典には,それぞれ「金刀比羅宮ことひらぐうの俗称」(甲246,247)と記載されている。一方,「ことひらぐう【金刀比羅宮】」の見出しの下に,大辞泉(増補・新装版)には,「香川県仲多度郡琴平町にある神社。・・・。琴平神社。こんぴらさん。」(乙7),大辞林第3版には「香川県琴平町の琴平山にある神社。・・・。金毘羅こんぴら様。金毘羅宮。旧称,金比羅大権現」(乙9),新世紀ビジュアル大辞典には,「香川県仲多度郡琴平町にある,大物主神・崇徳天皇をまつる神社・・・。こんぴら。」(甲246),日本語大辞典には,「香川県琴平町にある旧国弊中社。・・・。こんぴらさん。」(甲247)との記載がある。また,精選版日本国語大辞典第1巻には,「こんぴらさま【金毘羅様】(さまは接尾語)」として,「金毘羅を敬っていう語。こんぴらさん」(甲245)と記載されている。そして,原告は,「こんぴらさん」が「金刀比羅宮」の「著名な略称」に該当することについては認めている。
以上の事実に加え,敬意や親愛の気持ちを示すために,名称や略称等に「さん」,「様(さま)」などの接尾語を付する場合があり,これにより当該名称等との同一性が失われるものではないことは明らかであるから,接尾語である「さん」を付
した「こんぴらさん」とともに,「こんぴら」の語は,「金比羅宮」,「金刀比羅宮」を意味すると認められ,これを法人格の主体として称するときには,「宗教法人金刀比羅宮」を指し示すものとして,一般に受け入れられていると認められる。』(判決文8-9頁)
こういった理由などで、JPOの拒絶審決の判断には誤りなしとして、原告さん(出願人さん)の請求は棄却されました。
■コメント
(1)神社仏閣
本件の「こんぴらさん」みたいに、地元で愛されとるような、神社仏閣の いわばパブリック的に思える名称も、実は法人主体が後ろに控えているときは、その略称とみなされることがり、それを一部に含むだけでも商標登録はできないんだ、ということを示したような判決でした。
ところが…。
Plat-Patで調べてみると、意外に、「こんぴら」を含む商標が、第三者に登録されとったりするのです。
うーん。本件は、運が悪…(以下省略
(2)金毘羅山と INTEL とのつながり
本件のように、はっきり「こんぴら」って識別できるようなかたちで著名な略称が含まれとる件ならまだしも、そうでない場合も、思わぬ(?)ところから物言いが入ったりするのが、4条1項8号の落とし穴ですね。
それが、一連のINTEL事件だったような…。
参考記事: 今度は「インテル」入っとったの?
特に海外の著名企業さんですと、トップブランドに関して異議申立等を躊躇なくすることが多いってことは、ご存知の方も多いと思います。
それを考えると、4(1)11ではセーフでも、見ようによっては4(1)8に該当するといえないこともない?という商標の場合、心の準備をしといた方がいいかもしれませんね。 全くその気はないとしても…。
そんなわけで、金比羅山とINTELもつながったね! 4(1)8 つながり。
しかも、INTELの本社はサンフランシスコの近く。
そしてサンフランシスコといえば、Yosemite の前衛基地。
おお、 INTEL と Yosemite もつながった。一周したよ!
(3)最後に、琴平 よもやま話を。
ダンナの弟のお嫁さん(義妹)が、これまた高松市出身でして、何かと「うどん」をいただくのです。
でも、みそ県民としては、そんなに「うどん」ばっかしもらっても食べ切れないしね。うどん県のヒトみたいに おやつにまで「うどん」食うわけじゃないし。
それはいいとして、金比羅さんまで「高松琴平鉄道」(通称:ことでん)というローカル線が走っているらしく、「ことちゃん」「ことみちゃん」という、イルカ(?)のキャラクターがいます。
「ことちゃん」のほうは、ご当地キャラでも上位入賞するくらいにかわいいんですが( @irucakoto )、なんと 、 「ことちゃん」「ことみちゃん」は、電車に ふつーに 乗ってたりするらしいです。
(こんな感じhttps://www.swarmapp.com/c/6NeICbZP8jC )
地元の方はもう慣れきって、「ああ、ことちゃん と ことみちゃんね」くらいな感じらしいですが、初めて遭遇すると、かなり驚くこと間違いなし。金毘羅さんに行くときは、是非、「高松琴平鉄道」に乗って、二匹に遭遇してみてください。
今日は「名古屋の商標亭」ぽく、肝心の判決ご紹介よりも、(どーでもいい)前置きと(どーでもいい)コメントの方が長かったですね!
今日はこれでおしまい!
次回も見ていただけるならぽちっと押してくださいな(。-_-。)/
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